

関西にいる「シュッとした」人たちから「シュッとした」お話を聞きたくて始めた、MAGKANインタビューコーナー!
第七十七回は、
小学5年生で全日本アマチュアスケートボード選手権で2位に入り、高校生になった今も活躍し続ける スケーターの上村葵 さんにお話をうかがいました。日常から練習の様子まで、幅広く語っていただいたインタビューです。
最初は友達と遊んでいるほうが楽しくて、1ヶ月に1回乗るか乗らないか、だったんです
──小学5年生にして全日本のアマチュアの大会で2位入賞、今も数々の大会で活躍されていますが、そもそもスケートボードを始めたきっかけは何ですか?
上村(以下、U): 前から家族でスノーボードはしていたんですが、私が小学3年生の時に、父が「スノーボードは冬しかできないから、スノーボードのオフトレとして横乗りで一年中できるスケートボードをやろう」って言いだして。
──それで、スノーボードだけでなくスケートボードも家族で始めたんですね。
U: はい。最初、弟が誕生日に自分専用のスケートボードを買ってもらっていて。それを見て私も欲しくなっちゃって、「3ヶ月早いけど誕生日プレゼントにスケボーちょうだい!」って頼んで買ってもらいました(笑) ただ、その時は友達と遊んでいるほうが楽しくて、1ヶ月に1回乗るか乗らないか、だったんですけど。
──そうだったんですね! ではなぜ真剣に乗り始めたんですか?
U: 父が家の庭に「ランプ」を作ってくれたんです。スノーボードのハーフパイプみたいな形で、スケートボードの技の練習ができる場所なんですけど。
──ええっすごいですね! なかなか立派なものでしたよね…。

Instagram より
U:すごく一生懸命作ってくれて。「わ、やらな!」と思ったんです。スケートパークまで行かなくていいから気軽にできるし。そのランプが道路に面しているので、今では通りすがったご近所の方からも「頑張って!」って声をかけていただいています。
──パリオリンピックの予選大会にも出場したり、世界大会にも出場したりしているので、周囲の方々もよくご存知なんですね。お父様は練習で関わることはあるんでしょうか?
U: 父がコーチ的な存在なんです。大会でやる技の構成とかもだいたい父と相談していて。

──そうなんですか! ではお父様もかなり勉強されているんですね。
U: 誰よりもスケートボードの勉強をしているんじゃないかなって思っています。ずっといろんな人の動画を観てるんですよ。それで私と見比べて、ダメなところや改善点を教えてくれて。父がスケートボードを乗れるかって言われたら、乗れるわけじゃないんですけど。
──心強いお父様であり、コーチなんですね。昔から仲が良かったんでしょうか?
U: 仲良しです(笑)
──ケンカすることはありませんか?
U: ケンカというか…たまに「この練習、嫌だな」ってサボっちゃう時があるんです。そんな時に怒ってくれるので、ケンカする、というよりも「怒ってくれている」って感じですね。
──そんな風に思えるなんて…。すごく良い関係なんですね。
U: あ、でも、心の中ではちょっと「むっ」ってなっています(笑)
──心の中に収めているんですね(笑)
U: 父の言っていることが正しいので、反論はできないですね。
──お父様から言われて印象に残っている言葉はありますか?
U: 「戦う相手はいつも自分やで」って言ってくれたのが心に残っています。もちろん、ライバルの子たちも戦う相手なのかもしれないんですけど、超えるべきものは自分の中にあるのかなって。やっぱりケガと隣合わせのスポーツなので、怖いんです。長くスケートボードを続けていても、青あざや傷が減らないんですよね。さらに上を目指すため、新しい技への挑戦を続けているので。でもそれで怖がってしまうとケガに繋がる。だから、やる時は思いっきり乗りに行くようにしています。
──やる時は思いっきり乗る、ですか。
U: 練習しすぎても逆に体を痛めちゃうので、できる限り負担が少ないように、最初から本気で技に入っていくんです。最近始めたことなんですけどね。以前からケガが増えてきていたし、新しい技を習得するのも時間がかかっていたので、最初から本気でやることが課題ではあったんです。ただ、それってすごく怖いことなので、なかなか実行できていなくて…。でもこれからは思いっきり乗ることを意識して、改善していけたらいいなと思っています。

一年前に左足首を剥離骨折してしまって、最近手術をしました
──どこにケガをすることが多いんでしょうか?
U: 足ですかね。こけるので上半身を打つ時もあるんですけど…。一年前に左足首を剥離骨折してしまって、最近手術をしました。
──え? 一年前にケガで…手術が最近? 昨年の夏、アメリカの「Rockstar Energy Open」という大会で優勝したり、11月には「SLS東京」にも出場したりしておられましたよね?
U: 後悔は無いですが、少し無理をしてしまった部分はありますね…。 ケガをしたのが2024年の2月頃なんですけど、レントゲンで骨が見えないくらい血が溜まっていて。その時はただの捻挫っていう診断だったんです。それで、その2週間後の3月にあったパリオリンピックの予選にもなる世界大会では結果が全然だめで。それから間をあけてもう一度病院に行ったら、剥離骨折をしていました。
──5月の「SLS APEX in ラスベガス」では2位でしたが…そんな状態だったんですね…。
U: 大会の予定がどんどん続いていたので、手術するタイミングが無くて。板を縦に回転させる技が一番痛かったので、それを避けてこの一年間過ごしてきました。ただ、もともと「ヒールフリップ」っていう、板を縦に回転させるのが得意技だったので、とても致命的でした。技数も減ったし、「ラン(45秒間、技を見せながらコースを滑って採点を受ける)」に入れる技も考えることが多くて…。でも、父と一緒に考えて、板を回さずにできる技を練習していたんです。「ベネットグラインドリバート」っていう、女子はまだ誰もやっていない技なんですけど。
──「ベネットグラインドリバート」?
U: ちょっと難しい名前ですよね(笑) 体を半回転させながら飛んで、体ももう半回転させながら下りるっていう技です。これなら一番痛い動作がないので、11月の「SLS東京」のランで入れて、一応メイクすることができました。ただその時は他の技を失敗しちゃったので点が出なくて…。悔しかったです。
──悔しい思いをされることの多い一年間だったんですね…。では、その術後の経過が良くなればいろいろ解禁ですか?
U: はい! 楽しみです!

直前に胸に手を当てて「私ならできる、私ならできる」ってずっと自分に言い聞かせています
──大阪出身で、ずっとご家族と過ごされていると思うんですが、スケートボードを競技として続けていくにあたって、大阪はどういう環境ですか?
U: スタートダッシュにはすごく良い環境だと思います。スケートパークも増えてきていますし。最近は東大阪にあるスケートパーク「HASCO」さんで滑らせてもらっていて、そこがホームみたいになっています。でも、大会を目指して練習する身としては、本格的な手すりとか…「セクション」っていうんですけど、大きいセクションのある上級者向けのコースが少ないなと感じています。大会によっていろんなコースがあるので、練習でもいろんな場所で臨機応変に滑れるように練習したいけど、気軽にはできなくて。関東は上級者向けのコースがすごく多いので、それが羨ましいです。
──大阪は初心者向けの環境なんですね。海外のスケートパークでは日本との違いを感じますか?
U: 海外の大会では上手いスケーターが集まる場所を使うので、すべてのセクションがかなり大きいです。基本、大会のために特設されたものだったりしますし。なので、海外へ行く時はテンションが上がるんですけど、セクションを見ると「はぁ…今からこのおっきいところ入るんや…」って力がちょっと入っちゃいますね。
──スケーターで憧れている方はいますか?
U: レティシア・ブフォーニ選手っていうブラジルの選手が憧れです。初めて見た時、ピンクの髪にヘアバンドをしているのが個性的ですごく可愛いなと思ったのがきっかけだったんですけど、滑り方もカッコよくて。とても綺麗なんです! ただ、私が国際大会に出られるようになったタイミングで、レティシア選手が海外の大会に出なくなっちゃって…。小さい頃からずっと憧れていて、すごく輝いて見えるんですよ。いつか会ってみたいです。モデルもされているので、両立できているのがすごいなって思います。
──両立、という意味なら上村さんもされていますよね。スケーターと、高校生を。
U: いえ、勉強の方は全然です!(笑) 頑張ります(笑)
──小学校の頃からの両立ですもんね。11歳の頃にはもう大会に出場されていますが、一番印象に残っている大会は何ですか?
U: 2023年の「UPRISING TOKYO」ですね。新設の国際大会だったんですけど、優勝してトロフィーをもらえたことがすごく印象に残っています。出場者もすごいスケーターばかりだったので、優勝できるとは正直思っていなくて。でも、「全力出して戦いに行こう!」っていう気持ちで行っていたので、とても嬉しかったです。
──大会前のルーティーンはあるんでしょうか?
U: 滑走の直前に胸に手を当てて「私ならできる、私ならできる」ってずっと自分に言い聞かせていますね。これをするのとしないのとで、安心感が違います。
──今後の目標は何ですか?
U: 4年後にロサンゼルスオリンピックがあるので、それに出て、優勝できるように今から準備していきたいです。あと、SLSでの優勝。…私の中ではSLSのほうがオリンピックより上かもしれません。
──11月に東京で行われたのもSLSでしたね。
U: 世界各地で開催される、スケートボードをしている人はみんな憧れる大会なんです。
──それまでにしっかり準備を、ですね。
U: あと、小さな夢は犬を飼うことです。一緒にお散歩したり、一緒に寝たり、日常を一緒に過ごしたいんです。
──大会での結果をもとに、犬を飼う交渉をお母様とされている、と過去のインタビューで拝見しましたが…。
U: それが、いつの間にか「元々犬はあかんやろ?」ってなってるんです(笑)
──あれ!?
U: まぁ、そもそも私がすごい押し付けていたんですよ。「この大会優勝したら、犬飼って!」って。でも母は「うん」とは言っていなくて。「飼ってな!」だけで大会に出ちゃったんで、「うん」って言わせればよかったです(笑) トイプードルも可愛いし、ゴールデンレトリバーもハスキーも可愛いし…。小さな夢のひとつですね。

Q.「シュッとしてるもの」って何だと思いますか?
U: スケートボード! スタイルいいんですよ(笑)
──ご自身の板のお気に入りの部分はどこですか?
U: もう相棒だなと思っているんですけど、この板と金属部分を繋げているネジがカラフルだと可愛いなと思っていて。今は金色にしています。「SOURCE BOLTS」さんにサポートしていただいているんですけど、いろんな色が売っているんです。あと、乗るところの色は絶対黒が良くて。カラフルだと、乗っている時に目に入ってチカチカしちゃうので。あとは裏面も色が好きです。色ばっかりですね(笑)

──練習用や大会用で分けて使うことはありますか?
U: ずっと一緒です。1ヶ月に1~2枚替えるんですけどね。
──もっと長持ちすると思っていました!
U: 私も最初は一度買ったらずっと使えると思っていました(笑) 今はまだこれもあんまり削れていないんですけど、この傷がすぐ全面に広がっていくんですよ。あ、でもネジはあまり痛むことがないので、できるだけ長く使っています!
Q.自分の名前で缶詰を出すとしたら、中に何を詰めますか?
U: いっぱいあるんですけど…まずは好きなお菓子を入れます。「たべっ子どうぶつ」が大好きで(笑) あと、カレーうどんも好きなので、それも(笑) あとはちゃんとした話にすると、皆が「こうなりたいな」とか、希望を持てるようなものを入れられたらと思います。
上村葵

【 Instagram 】
大阪府出身。2008年生まれ。小学3年生の頃にスケートボードを始め、小学5年生で全日本アマチュアスケートボード選手権で2位に。様々な国際大会にも出場するようになり、2024年にはアメリカで開催された「ROCKSTAR ENERGY OPEN」で優勝を飾った。

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