

関西にいる「シュッとした」人たちから「シュッとした」お話を聞きたくて始めた、MAGKANインタビューコーナー!
第七十八回は、
ミステリーアドベンチャーゲーム『都市伝説解体センター』を開発したインディーゲーム開発チーム「墓場文庫」のメンバーであり、 グラフィッカー/デザイナーのハフハフ・おでーん さんにお話をうかがいました。『都市伝説解体センター』のことからメンバー同士のやりとりのことまで、幅広く語っていただいたインタビューです。
『都市伝説解体センター』って? ▶ HP
墓場文庫と集英社ゲームズがタッグを組んで開発したアドベンチャーゲーム。プレイヤーは大学生の調査員 福来 あざみを操作し、都市伝説解体センターのセンター長の廻屋 渉と、同じく調査員のジャスミンからのアドバイスを受け、都市伝説をきっかけに起きたと思われる事件を調査し、解決に導いていく。

漫画なら一話目にあたるところが開発途中の『都市伝説解体センター』には足りなかった
──2025年2月13日に発売されてから、既に大反響ですね! 他のインタビューでは、開発にあたって少年漫画で学んだことも多かったとおっしゃっていましたが、どういったところを参考にされたんでしょうか?
ハフハフ・おでーん(以下、H): 開発にあたって集英社ゲームズさんとはずっと意見を交わしていて、その際に元漫画編集者で集英社ゲームズの社員の方からストーリー添削を受けたんです。
──集英社ゲームズの社員の中に、元漫画編集者の方がいたんですね。
H: そこで、漫画なら一話目にあたるところが開発途中の『都市伝説解体センター』には足りないと言われて。キャラクターの関係性や性格、バックボーンとか…「それをゲームに落とし込んだらこうだよね」というお話をいただいたんです。開発は中盤を越えて後半に差し掛かった頃だったんですけど(笑)
──なかなかのタイミングに(笑)
H: 確かに勉強になるところが多いなと思って、ゲームのチュートリアルにあたる「呪いの椅子」のエピソードを追加しました。
──すごく「漫画的」な導入だと感じました。
H: とはいえゲームなので、ゲームの楽しさは残しながら伝える、ということの苦労はありましたね。やっぱり、自分でなかなか操作できないゲームって嫌じゃないですか。だからとにかく短くしたくて。でも見せないといけないことが多いし。
──プレイする部分を早めに持って来たい、というのはゲームならではですね。「墓場文庫」は4人のチームだと思うんですが、その見せるべきキャラクターをどのようにして作り込まれたんですか?
H: キャラクターデザインを担当しているイラストレーターの「きっきゃわー」がキャラクターの肉付けをしてくれました。ミステリーの部分はエンジニアの「MOCHIKIN」、ストーリーの骨組みは僕が考えたんですが、特徴的な登場人物にしていくためのビジュアル、セリフ回しを決めるは彼女の役割だったんです。漫画やアニメ文脈に詳しいし、女性受けするようなキャラクターの作り方もわかってくれているので、お任せしていました。

ジャスミンとあざみは最初から仲が良い予定だった
──チームの中では調査員のジャスミンさんが人気だそうですが、それはどうしてですか?
H: 彼女はもう一人の主人公のような立ち位置だと思いますし、一番フラットに見られるキャラクターだから、かもしれません。物語を考えるとそこまで複雑なキャラクターではないので、感情移入しやすいというか。まあ、あざみっていうプレイアブルキャラクターも感情移入しやすいように作ってはいるんですけど(笑)
──そうですよね…(笑) ジャスミンさんのチーム内人気は最初から高かったんでしょうか?
H: 作りながらだったんじゃないかと記憶しています。
──開発途中からだんだん、なんですね。
H: 集英社ゲームズさんからのシナリオ添削の中で、「キャラの関係性が変化していくほうがいいよね」というのがありまして。実は、ジャスミンとあざみは最初から仲が良い予定だったんです。後半までずっと仲良し、みたいな平べったいストーリーラインで。
──ええっ!
H: 僕らはなるべくコンパクトにストーリーを進めたくてそう考えていたんですけど、「そうじゃなくて、最初はダルくて積極的じゃない先輩だったのに、いろんなことを乗り越えながらちょっとずつ仲良くなるほうがいいよね」ということになって。それでジャスミンというキャラクターを作り上げていったので、余計に感情移入しているのかもしれません。ただただ普通のサポートキャラだったらそこまででもなかったのかも。
──ユーザー目線では発売前からセンター長の廻屋さんのキャラクター人気が強く、反響も大きかったと思うのですが、開発側の手ごたえはどのあたりで感じていましたか?
H: たぶん、リリースするまで手ごたえはなかったです。
──そうなんですね。
H: 特にリリースまでの半年間は「これが面白いかどうかわからない…」とずっと不安になりながら作っていました。反響を見ていると、ある程度期待されていると感じてはいたんですけど、逆に「大きく滑るんじゃないか」って怖くて。僕ら4人だけなら「別に売れても売れなくてもいいわ」って思えるんですけど。
──いろんなプロモーションがありましたもんね。
H: 取り上げてもらえば取り上げてもらうほど、僕らは「怖いよね」「売れへんかったらどうする?」って、売れなかったら申し訳ない気持ちが膨らんでいました(笑) 最終的には、もう自分たちとしては集英社ゲームズさんとのすり合わせで「これで良い」と思うものを作ったから、売れなかったらしょうがないって話をしていたんですけどね。発売して、ユーザーさんの反応が見られるようになってようやく、手ごたえを感じられたと思います。

『都市伝説解体センター』はうちのチームだけで言うと、みんな100%やりきった作品だと思っていない
H: だから、墓場文庫として最適なゲームができたとは思っています。でも、『都市伝説解体センター』はうちのチームだけで言うと、みんな100%やりきった作品だと思っていないと思うんですよね。
──そうなんですか?
H: 何らかの妥協というか、「自分の好みと違うけどしょうがないよね」ってちょっとずつ思いながら、それぞれやっていたんじゃないでしょうか。自分の好みが世間に合っているのかどうか、ユーザーさんが喜ぶかどうかはわかりませんし。
──割り切った上で、リリースできるように作って来られたんですね。
H: そうですね。墓場文庫の1作目のアドベンチャーゲーム『和階堂真の事件簿』を作り始めた時は、僕とMOCHIKINさんの二人だけで、とにかくゲームをリリースすることを目的にしていたんです。ストーリーとかグラフィックとかは二の次にして。それでも最初の1ヶ月はにっちもさっちも行かなかったんですけど、今の墓場文庫のメンバーが入ってくれたあと、3ヶ月でリリースできました。
──それはかなり短い開発期間ですよね?
H: はい。そのあとも、「じゃあ2本目、3本目も3ヶ月でリリースできるよね」って進めていたら、大体そのペースでリリースできて。1ヶ月目で企画、2ヶ月目で開発、3ヶ月目でテストっていう考え方でやっていたので、「作り込み切れなかったとしても、割り切って進める」というスタイルが全員身についていると思います。納得いかなかったとしても、とにかく作り切っちゃうっていう。
──その姿勢も大事なことかもしれませんね。
H: そうなんですよね。こだわりをぎゅっと詰めようとすると、それで止まっちゃうことも多いと思うので。あと、自分たちの作っているものを自分たちでは客観的に見られないのも、理由のひとつなんです。面白くないと思っているものでも、ユーザーさんは面白いと思ってくれたり、その逆もあったりするので、とにかく出して、客観的に見てくれる人に見てもらいたくて。
──ハフハフ・おでーんさんの心残りだった部分はどこなんでしょうか?
H: グラフィック全般ですかね。やり直したいところのほうが多いんですよね。本当はもっと時間が欲しかったんです。僕一人では手が回ってないこともたくさんあって。
──そんな風に思えないクオリティでした!
H: ありがとうございます。うまく騙せたなと思います(笑)

昼間はぐったりしているけど、夜は元気になって集まってくるから、「墓みたいな場所だよね」って
──インディーゲームを作り始めたきっかけは何だったんでしょうか?
H: いつかゲームを作りたいなと思いながらWebデザインの仕事をしていた2016年に、MOCHIKINさんに誘われて、京都でやっているインディーゲームのイベント「BitSummit」に行ったのがきっかけです。僕らの頃はゲームって専門的に学んだ人しか作れない時代だったんですけど、2016年頃からはツールも発達して、市場も変わって、個人でゲームを作れる時代になってきていたと思うんですよ。だから、そのイベントで一人でゲームを作っている人を見て、すごく勇気をもらえたというか、カッコよく見えたというか。
──背中を押されたんですね。
H: そのイベント帰りに、MOCHIKINさんから「来年、自分たちでも出たいよね」って言われて。それに「出たい、出たい」って答えて。それで実際に翌年から出させてもらいました。きっきゃわーとかBGM担当の「あだP」と知り合って、交流が始まったのもその時です。
──そこでの出会いだったんですね。
H: はい。ただ、はじめは僕とMOCHIKINさんの二人でゲーム開発を進めていたんですよ。でも、彼とは20年以上の付き合いだからか、なかなか上手くいかずにダラダラしちゃって。それをBitSummitで知り合った方々や、お付き合いのあるクリエイターさんで集まっていたチャットの中で話したら、「手伝うよ」って人が出てきてくれたんですよね。『和階堂真の事件簿』をリリースするきっかけにも、墓場文庫を作るきっかけにもなりました。
──墓場文庫というチーム名の由来はあるんでしょうか?
H: そのチャットが「墓場」っていう名前だったんです。昼間はぐったりしているけど、夜は元気になって集まってくるから、「墓みたいな場所だよね」って(笑) それに加えて、「自分たちが作っているのってゲームというより本に近いよね」という話もあって、僕が勝手に「墓場文庫」とつけました。ロゴみたいなものも作って、本当に勝手に(笑) 『和階堂真の事件簿』の時は、1時間で終わるゲーム、短編推理小説のようなものをいっぱい出せればいいなって言っていたんですよ。
──今はあだPさん以外、兵庫県にいらっしゃるんですよね。
H: そうですね。僕とMOCHIKINさんは兵庫県出身で、二人で神戸に事務所を借りています。きっきゃわーとあだPは関東に住んでいたんですけど、コロナ禍の頃にきっきゃわーが関西へ引っ越してきて。基本は通話ですけど、時々集まっています。あだPは『都市伝説解体センター』の開発中に神戸で何泊かしてくれて、一緒に作業することもありました。あと、たまに合宿もするんですよ。
──合宿ですか! それはどういうきっかけでですか?
H: ただ単に、楽しいので(笑) 他のゲームの開発チームも呼んで、自分たちは作業せずに全員キッチンに立って何か作っている合宿もありました(笑) あと『都市伝説解体センター』の時は冬場は昼間にみんなでよくお鍋をしていましたね。炊事担当は基本的に僕とMOCHIKINさんかなぁ。
──すごく和気あいあいとされていますね。
H: しょっちゅう雑談をしています。開発の話をしていても、脱線して最近観たドラマや映画の話になるんですよ。一人一人好みが微妙に違うので、全員で一斉に「これおもしろい!」とはなりにくいんですけど、それぞれの良かったものをよく紹介し合っています。唯一みんなでハマったのは六甲道のカレー屋さんかもしれません(笑)

SNS調査のところのアカウント名は変な名前をたくさん作った
──ハフハフ・おでーんさんはインタビュー等によく出ておられるかと思うんですが、チームの中ではまとめ役のような立ち位置なんでしょうか?
H: いえ、僕はプロモ担当って言われています。対外的な窓口の部分ですね。MOCHIKINさんがチーム内での精神的支柱みたいな、リーダーという存在だと思います。僕は彼を天才だと思っているんですけど。
──それはどういうところからですか?
H: 何だかんだ、プログラムが一番しんどいんですよ。デバッグも含めて。それを丸っと面倒を見てもらっているので。
──愚痴も聞いてくれたり?
H: 愚痴はまあ…聞いてくれる時もありますけど、 本人が言っていることのほうが多いかもしれません(笑)
──(笑) 他の方々はどうでしょう。
H: あだPは一番背が高くて、癒しキャラなところがあると思います。きっきゃわーは紅一点なんですけど、関東の人間なのに関西ノリについてきてくれる人で。なので、いつもうるさい墓場文庫チームの中で一番割りを食っているのは、あだPかもしれません。かわいそうだなあと思っています(笑)
──そう思うと、ゲーム内であざみちゃんがノリツッコミをしてくれたりするので、そのあたりは少し関西らしいかもしれませんね。
H: あれ、開発中はもっとひどかったんです。僕がシナリオの骨組みを作って、きっきゃわーがキャラクターのセリフを調整するとお話ししましたが、「どうせきっきゃわーがあとでちゃんと書いてくれるし」と思って、僕は適当なことを書いていたんです(笑) 大体はきっきゃわーがもっと面白くしてくれたり、かわいくしてくれたりして、適当なものは減っているんですけど、廻屋の褒め方が最終的に「Fabulous!」になるのはその名残です(笑) 間違った選択肢を選んだ時のあざみちゃんのセリフも、適当に書いたのがそのまま残ってたりします。
──きっきゃわーさんに残してもらえて嬉しかった箇所はありますか?
H: SNS調査のところのアカウント名ですね。あれ、変なアカウント名をたくさん作ったんですけど、あそこを拾ってもらえているのは嬉しいです。都市伝説っぽい名前にしたりしましたし。
──あのあたりも、きっきゃわーさんの取捨選択の手腕によるものだったんですね(笑)

──皆さんの出会いは京都でのイベントとのことでしたが、任天堂の本社があるからか、ゲーム開発者を育てる土壌があるように感じています。実際、関西だからこそゲームを開発する人が集まっている人が多い印象でしょうか?
H: そうですね。関西は「room6」さんっていう、インディーゲームレーベル「ヨカゼ」を運営している会社があって。僕らも相当お世話になっているんですが、関西のインディーゲーム開発者のハブになっている印象なんですけど、それもあって関西は横のつながりがけっこうあると思います。
──やっぱり、インディーゲームを作るのは面白いですか?
H: 面白いです! 他の大手さんが作ったゲームと一緒に棚に並んで、それを遊んでもらえるっていうのは相当面白いんじゃないかって思ってます。大手さんでも開発スタイルによるかもしれませんが、自分の手で作ったゲームを遊んでもらえるっていう経験もインディーゲームならではだと思いますし。
──今後、ハフハフ・おでーんさんとして、墓場文庫として、それぞれ挑戦したいことはありますか?
H: 墓場文庫としては、ミステリーアドベンチャーをもっとやっていくべきなのかな、もっとやりたいなと思っています。何となく、墓場文庫としてのブランドみたいなものが少しずつできあがってきているように感じているからなんですけど。あと僕個人としても、墓場文庫としてもにはなるんですけど、ゲームからうっすら離脱していた人たちも遊んでもらえるような、間口を広げるみたいなことをやりたいです。
──それはどうしてですか?
H: TikTokを見ているほうが楽しくて、コントローラーを握る気合はない、みたいな人がけっこういるなって、リリースしてから感じたんです。そんな人たちにもっと遊んでもらえるように、ゲーム業界自体が賑やかになってほしくて。アドベンチャーゲームって、僕らでも参入できるようなジャンルなので、漫画とか音楽、映像の人たちも入ってこれると思うんですよ。だから、ゲームと何かの間みたいな、カジュアルにストーリーもゲーム楽しめる、多種多様なコンテンツがいっぱい作られるようになったらいいなって思っています。

Q.「シュッとしてるもの」って何だと思いますか?
H: 「シュッとしてる」って「スマート」っていう言葉だと思っていて。見た目が細いみたいな意味もあれば、賢い、最適化されている、みたいな。そう考えた時に僕は最近の若い子はシュッとしてるなって感じています。あんまり見栄も張らずに、賢くて、性格も良くて、見た目もカッコいい。そんな人たちを「シュッとしてるなー!」って(笑)
──ゲーム開発で繋がる若い方々を見て感じているんでしょうか?
H: そうですね。今の若い開発者はもう全員。僕らみたいなオッサンは全然シュッとしてないんで。プライドだけでかくて、性格も悪くて、作るもんも古くて(笑) もう本当に! 日々、若い子を見習わないといけないなって思っています。
Q.自分の名前で缶詰を出すとしたら、中に何を詰めますか?
H: これ、大喜利ですか?(笑)
──に、近いですね(笑)
H: 難しいなあ。ツナじゃないですかね、逆に?(笑) 墓場文庫って書いてあるのに、開けたらツナ。
──理由をすごく考察したくなりそうです(笑)
ハフハフ・おでーん

【 X 】
兵庫県出身。インディーゲーム開発チーム「墓場文庫」のメンバー。Webデザイナーの仕事をしながらゲームの開発を始める。「Indie Games Festibal 2021」で『和階堂真の事件簿』が受賞したことをきっかけに、今回集英社ゲームズとタッグを組んだ。好きな漫画は『ヘルボーイ』(小学館集英社プロダクション刊)。

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