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マグカンさんの作品:【第六十四回】さかなのおにいさん 川田一輝さん

関西にいる「シュッとした」人たちから「シュッとした」お話を聞きたくて始めた、MAGKANインタビューコーナー!

第六十四回は、

ラジオDJや「さかなのおにいさん かわちゃん」として幅広く活躍する川田一輝さん にお話をうかがいました! 関西のオススメ水族館や、子ども向け番組の楽曲制作秘話について語っていただいたインタビューです。

 

「自分は自分らしくいたほうが周りを幸せにできる」と思えたから、今こういう仕事に就いている

──イベントでさかなや海の大切さを伝える「さかなのおにいさん かわちゃん」をはじめ、弊社でもコミカライズしたアプリゲーム『Obey Me!』のソロモンの声優や、Kiss FM KOBEのラジオDJ、絵本作家に作詞作曲・うたも手掛けていらっしゃいますよね。本当に幅広く活躍されていますが、はじめから順風満帆だったんでしょうか?

川田(以下、K): いえ、そんなことはなかったです。実は、大学生の時に音楽の道を一度目指して、そのあとはアナウンサーを目指して局アナの就職試験を受けたものの、五局も最終面接まで進んだのに全部落ちたんです。

──最終面接で全部落ちる…!

K: 就職試験の最後の五人まで残って、「ここで落ちても適正はあるからね」とどの局でも言われたんですよ。全部落ちたあと、「どこか採ってくれよ!」って思いましたね(笑) それでアナウンサーを諦めて、普通の就職をすることにしたんですけど、入社前に老後の夢を叶えようと思って。魚を釣って一日過ごす生活が夢だったので、そのために広島へアルバイトに行ったんです。そこで「やっぱり喋る仕事をやりたい」と思えたことが大きかったですね。そのあと事務所に所属して、フリーアナウンサーをやって、Kiss FM KOBEのDJオーディションを受けたらグランプリを頂いて、「さかなのおにいさん かわちゃん」、声優、と仕事が広がっていきました。

──就活で挫折したあと、魚を釣りに広島へ!? 思い切った選択ですね。

K: それはね、人生をちょっと諦めたからなんですよ。

──なるほど…?

K: 全部挫折して何もうまくいかなくて、「やりたいことをやる人生はやめて、ここからは普通にみんなと一緒に働こう」と思ったんです。老後の夢はぼんやりあったので「これが人生最後だから好きなことやーろうっ」って。あの時、広島で「自分は自分らしくいたほうが周りを幸せにできる」と思えたから、今こういう仕事に就いているんですよね。

──広島での時間がかなり濃厚だったんですね。

K: そうですね。半年でいろんなことがありました。寮で寝泊まりしていたんですけど、目の前が海で。1投1杯、イカが釣れるんですよ(笑) 神戸のあたりでやると一日かけて2杯くらいしか釣れないのに、その島では誰も釣りをしていないから、イカがルアーのことを「餌や餌や!」と思っていっぱい釣れるんです。だから海のことを「冷蔵庫」って呼んでました(笑)

──なんて広大な冷蔵庫(笑)

K: あんまり釣れるので、島のばあちゃんやじいちゃんにも、そのイカの干物をプレゼントしたりしてたんです。そんな中で、島の人たちにすごい愛をもらったんですよね。

──愛、ですか。

K: 「かわちゃんはアナウンサーになりたいらしい」ってばあちゃんたちが聞きつけてから、朝になると新聞とか、島のミカンとかを袋に入れてドアノブにかけてくれるようになったり。島を最後に出る時も、ばあちゃんたちが腰を90度に曲げながら手を振って、「かわちゃーん」「かわちゃんテレビで観んの待ってるからね~」って。フェリーに乗ってたんですけど、すごい夕日が綺麗だったんです。オレンジに染まる瀬戸内海を見ながら、「人生でこんなに人に応援してもらったことってないな」「これで帰って夢を諦めたら絶対後悔するな」って思って。だから、ばあちゃんたちが元気なうちにテレビに出て、ばあちゃんたちに喜んでもらいたいなって思ったので、帰ってからフリーのアナウンサーになったんです。

──それは心に刻まれる景色ですね…。

K: あの島の人たちに僕は今も支えられているし、自分が自分らしい姿を見せることが一番喜んでもらえると思えたのもあって、その後の人生が大きく変わりました。

──島の皆さんには「テレビ出たよ」って伝えられましたか?

K: 今、広島ホームテレビっていう放送局の番組『地球派宣言』で海のコーナーをやってるんで、それを観たみんなから「良かったね」ってメールがきました。心配してくれてたみたいで、喜んでもらえました!

 

関西の人に特に行ってほしいなと思うのは鳥羽水族館

──「さかなのおにいさん」というのはご自身で生み出されたキャラクターだとうかがいましたが、どういった経緯だったんでしょうか。

K: 中学生の時に熱帯魚を家で飼って繁殖させるくらいにはさかなが好きだったんですけど、Kiss FM KOBEの番組『いきものレッスンれでぃお』を担当する時に「川田一輝じゃなくて、何かキャラクターがいいよね」ってなって。学生時代は「うたのおにいさんになりたい」と思っていたので、それなら「ここでさかなのおにいさんを名乗ったら、シレッとうたのおにいさん、たいそうのおにいさんの横にいられるんちゃうかなー」という、軽いノリで名乗り始めたのがきっかけです。

──今やしっかりご自身の肩書になっていますね!

K: でもよく「さかなクンと何が違うの」って言われるんです。

──そんなことも言われるんですね。

K: やっぱり言われますね。僕も大好きで尊敬している方なのですが、一番違うのは関西人なところかもしれません。さかなのことをおもろく伝える、っていうのはさかな好き×関西人だからこそできることだと思っています。うちは「その話長いけどオチはあるんやろな」って言われるような家庭だったので(笑) 土曜日は吉本新喜劇を観ていましたし。だから、さかなの生態にもオチをつけて話すことで、子どもにも大人にもさかなに興味を持ってもらえるという自信はあります。

──根っからの関西人なんですね。「関西で必ず行っとけ!」みたいな水族館はありますか?

K: あー! 全部って言いたいですけどね! どこがお好きですか?

──今は閉園していますけど、神戸の須磨海浜水族園、好きでした。

K: スマスイ(須磨海浜水族園)良かったですよね。スマスイは民営化してリニューアルするんですが、運営会社が千葉県の鴨川シーワールドのグランビスタさんになるんですよ。だから、シャチがやってきます。しかも、関西では今までの水族館とイメージが変わるくらい、建物のつくりが違います。本館とは別にイルカプールがあるんですけど、ショーのプールがふたつできます。その片方にシャチ、もう片方にイルカが来るんです。

──シャチ!

K: あとは今ならニフレルがベビーラッシュでアツいですね。ミニカバっていう世界三大珍獣の赤ちゃんが生まれたんですよ! パンダ、オカピ、ミニカバは三大珍獣と呼ばれていて、ミニカバは原始的なカバだそうです。その赤ちゃんがね、すごく眠たそうなんですよ。それで名前が「ネムネム」っていうんです。

──ネーミングがかわいいですね。

K: あとはパルマワラビーっていう、世界で一番小さいカンガルーの赤ちゃんもいるし、テッポウウオの日本初繁殖もニフレルです。ほかに関西でいうなら、2024年は海遊館がおもしろくなりそうだなと思いますね。海遊館は僕と同い年の1990年生まれで、2023年に初めて水槽の大型改修をしているんですよ。グレートバリアリーフの水槽をガラッと変えるので、生まれ変わった水槽になると思います。それと、関西の人に特に行ってほしいなと思うのは鳥羽水族館です。

──あっ、ラッコですか?

K: そうです。今 会わないともう二度と直接会えなくなる生き物がたくさんいるんです。ひとつはラッコ。一時期日本には120頭以上いたんですけど、もう3頭だけで。2頭一緒に見られるのは鳥羽だけです。もうひとつはジュゴン。世界で5頭しか展示されていないんですけど、そのうちの1頭が鳥羽にいます。あとは、パンダイルカと呼ばれるイロワケイルカ。あの子も日本で7頭くらいしかいないんです。

──鳥羽水族館に行った時、当たり前のように見ていました。世界規模でも珍しい子がいたりするんですね。

K: 実は当たり前じゃないんですよね。絶滅しそうな生き物とか、会えなくなる生き物を守っていくにはすごい努力が必要で。鳥羽は特に生き物の展示数も多いですし、これからも継続して会うためにはどうしたらいいのかなとか、この子たちの仲間はどんなところに住んでるのかなって想像力が広がる場所だと思うので、ぜひ行ってほしいなと思います。ジュゴンのあの子がいなくなったら、「ジュゴンとマナティって何が違うの?」というよく聞かれる質問も出なくなってしまいますし、「ラッコって石を打ち付けて貝を割ってるんじゃなくて、お腹に置いた石に貝を打ち付けて割ってるんだよ」っていうことも知らずに過ごしてしまうかもしれません。

──水族館って自然や生き物の大切さを身近に感じる機会ですもんね。

K: あっでも、水族館にいるとラッコは石よりも硬いもので餌を割ろうとするらしく、水槽でばんばん割ろうするから、鳥羽水族館では餌に硬いものを与えないそうです(笑)

 

感想の8割が子育てしている方たちからの「助かってます」

──絵本や楽曲も制作されていますが、イラストを描くようになったのは5年ほど前からと聞いて本当に驚きました。さかなのデフォルメってかなり難しいですよね?

K: 最初はやっぱりめっちゃ下手でした。何個かポイントがあるんですけど、ひとつは毎日毎日4コマ漫画を描いていたことです。人は続ければ上手くなるので。もうひとつは、SNSでの反応がすごく楽しくて。下手でも発信することが大事だなと思いました。あとは、さかなへの熱量です。さかなが大好きなので、「このさかなのここが可愛い」っていうのがあるんですよ。例えば、タチウオなら牙がすごく鋭くて、顎がしゃくれていて、メタリックなところがカッコいいと思っていますし、マグロだったら、背中が真っ黒だから漁師さんが「おっ真っ黒」と思ったところからマグロになった、とか、そういうエピソードも含めて「この子の可愛いところってどこやろ」と考えながら描いていて。それが自動的にデフォルメに繋がっているんだと思います。人間はごまかしごまかし描いてるんですけど(笑)

──えっ、でも野球をしている人とか、可愛らしく描いていらっしゃいましたよね。

K: いろんなものを見ながら何とか…。「人ってそういう風に足曲がるんや!」とか思いながら。魚は全部さばいているので関節とかわかるんですよ。「ぱしゃんって飛んだ時にこう曲がる」っていう骨の作りを知っているのでわかるんですけど、人間はさばいたことがないので(笑) 毎回「めんどくさいな…」「人間っていっぱい動くな…」って思いながら描いていますね。

──乳幼児向けの子ども番組『シナぷしゅ』(テレビ東京)で作られた楽曲では、絵に加えて歌詞や音楽、うたも手掛けられていますよね。

K: 中学、高校、大学が関西学院で、そこのグリークラブっていう合唱部にいたんです。けっこうスポ根なところだったんですけど。10時間立って歌わされたり、謎のうさぎ跳びをさせられたり。それで20歳の時に『ハモネプ』(フジテレビ・アカペラの甲子園と呼ばれるテレビ番組)に出たのをきっかけに音楽をやりたい気持ちが強まって。それからは軽音サークルに入り、大阪大学のアカペラサークルにも入り…。その流れでピアノのコード弾きを覚えたり、ウクレレを弾けるようになったりして、曲を作ることを覚えました。『シナぷしゅ』では、シンプルなリズムとコード進行で音楽が進む中で、パワーワードになるようなさかなの豆知識があるっていうのを理想にして曲を作りましたね。

──私が1歳児の親なんですが、親子ともどもお世話になっていて、全然耳から離れなくなっています…。

K: 「緩やかな洗脳」っていうテーマで作っています(笑) 最初に作った『おさかなしりとりずかん』は、僕がポケモン世代なので『ポケモン言えるかな?』の曲のように魚を覚えられたらいいなと思って作りました。だから子どもを振り切るぐらいの速さでラップをしていきつつ、でも子どもって何となく覚えてくれるからそれを狙って。二曲目の『たってすわって たちうおバンザイ』は魚の豆知識や生態も気づいたら覚えられるようにしようと思って、歌詞に豆知識を入れています。大きくなった時に「それあれでしょ、立って泳ぐからタチウオっていうんでしょ」みたいな。

──既に洗脳されています(笑)

K: ありがとうございます(笑) 普通、音楽って「あの曲いいですよね」「泣きました」っていう感想がくると思うんですけど、8割が子育てしている方たちからの「助かってます」なんですよ(笑) あとの2割はクレームで、「『おさかなしりとりずかん』の「きんきんきらきら キンメダイ」っていう歌詞のせいで、うちの子が魚屋さんでキンメダイを食べたいと聞かなくてエンゲル係数が上がりました」っていう(笑) 「あんた、まだわからへんやろ!」みたいな。

──キンメダイの良さをね(笑)

K: それ以外のクレームで一番多いのは、「『おさかなしりとりずかん』でしりとりしてないやん」ですね(笑)

──聴いたことのない方はぜひ聴いてみていただきたいのですが、本当にしりとりになっていませんよね(笑)

K: いやあれね、ちゃんと意味があるんですよ。今まで言う機会がなかったから言ってないだけで。何かひとつのことに夢中になって、その勢いで脱線しちゃっても、周りのことが見えなくなるくらい突っ走っても、これからの時代はそれが一番カッコいいし、応援してるよっていうメッセージを勝手に込めたんです。さかなが好きでさかなのしりとりを始めたとしても、さかなが好きすぎるあまりに、しりとりから脱線したさかなの話をしちゃっても間違いじゃないんだよって。

──「好きなことを貫いていいんだよ」という子どもたちへの想いがあったんですね。

 

「自分の子どもに興味がない可能性があるな」ってちょっと不安だった

──2023年の終わりごろには初めての子育てスタートされましたが、お仕事との両立はいかがですか?

K: 今まさに子育てって大変だなと思っています! 3時間おきくらいにミルクを飲ませているんですけど、朝4時半にミルクをあげて、おむつを替えて、「よし、これで寝てくれるかな」と思ったら子どもも僕もおしっこでびしゃびしゃになってて…。おしっこ漏れを防ぐおむつのギャザーを僕が立て忘れてたみたいで、「あー、終ーわった」みたいな。これあるあるなんですか?

──あるあるですね…。

K: 時間が無限に溶けていきますよね。妻がメインでやってくれてるんですけど、僕も子育ては楽しいし、やりたくて。でも、子育ては大人が3人いないと無理なんだと昔からの仕組みを感じました。

──育児で一番楽しいことは何ですか?

K: ダントツでお風呂ですね。うちの子のことを「小魚くん」って呼んでるんですけど、水属性だから、お風呂大好きなんですよ。どれだけ泣いてても、お湯をかけた瞬間に「ふぁ~」ってなるんです。「今日は何かいいことあった? トトはね~」って話しかけながらお風呂に入れてて。あ、自分のことを「お父さん」じゃなくて魚の「トト」って呼んでほしいから「トト」って言ってるんですけど(笑)

──親子ともに水属性ですね(笑)

K: あと、この一週間でどれだけ爆泣きしても絶対泣き止ませる方法を編み出したんですよ! 音楽の授業で習ってずっと練習してた、モンゴルの「ホーミー」っていう歌唱法があって。低い声を出しながらそれより高い音を口先で作ってビーッて鳴らす。その真似事をやったら絶対泣き止むんです。

──すごいですね!

K: ただ、白目を向くんで。妻から「やめてくれ」って言われています(笑)

──(笑)

K: 子どもが生まれるまで、実は「自分の子どもに興味がなかったらどうしよう」ってちょっと不安だったんですよ。子どもと遊ぶのは好きなんですけど、コミュニケーションのとれない赤ちゃんは少し苦手で。抱っこもちょっと怖いくらい。でも、生まれてみたらどんな時も可愛くて。赤ちゃんって、言葉が出せなくてもちゃんとコミュニケーションがとれるんですね。それはすごく気付きでした。

 

世界で一番海を愛する子どもたちが西宮にいるっていうのをできたらいいな

──これから挑戦したいことはありますか?

K: やりたいことのひとつとして、兵庫県の西宮で魚群探知機を世界で初めて作ったFURUNO(古野電気)っていう会社があるんですけど、そのFURUNOさんと一緒に、世界で一番海を愛する子どもたちが西宮にいるっていうのをできたらいいなって思っています。3年後、5年後に、西宮の子どもたちがみんな海が好きで、さかなにも詳しくて、ヨットにも乗れてって。だから今、FURUNOさんの公式アンバサダーになって西宮の学校や阪急西宮ガーデンズでイベントをして、さかなや海の話をして回っているんですよ。

──西宮で!

K: 西宮にある学校に10年間通っていたので、青春の詰まった街なんです。西宮って海が近いんですよね。山もありますし。なのにみんな意外と知らなくて。この間、沖縄の那覇よりさらに西にある久米島に行った時も、島の漁師さんたちが「子どもたちに魚を好きになってほしいから」って、伝手を探して僕を呼んでくれたんです。久米島の海はマグロ漁が盛んで、他にもいろんな魚が獲れて本当に豊かなのに、当たり前にあるから子どもたちは興味がなくて。マグロ以外の魚を食べないし、知らないっていう状態で。

──興味の対象になっていなかったんですね。

K: 大阪に住んでても、日本で一番おいしいイワシが大阪で獲れるって知らないじゃないですか。

──そうなんですか?

K: そうなんですよ。岸和田のほうで「金太郎いわし」っていうマイワシが獲れて。脂がのって本当に金色になるんですよ。めちゃくちゃおいしくて。でも、おいしいから一番いいのは豊洲に行くんです。でも、大阪にいてそれを知っていれば絶対食べられるんで。知らないだけなんですよね、地元の魅力って。そういうのを伝えていきたいです。

──関西への愛を感じます。

K: ふふふ(笑) あとはオンラインで繋がるおさかな部みたいなものを作りたいなと思っています。各地のイベントで「うちの子は学校だと手もあげられないのに、かわちゃんのクイズやお話の時はイキイキしていました」と言われたりするんです。そんな子たちが自己表現する中で「こういう自分っていいな」と思える、サードコミュニティのようなものを作りたい。

──誰しも、学校では出せない自分がありますもんね。

K: あとは…「さかなのおにいさん」が概念になったらいいなと思ってるんです。

──概念…?

K: 「あしながおじさん」みたいにしたくて。「さかなのおにいさん」である僕はいつか死ぬので、死んだあとも、「さかなのおにいさん」は残って、海や子どもたちの未来を豊かにするものにしたいなって。僕の父親は高校2年生の時に交通事故で急に亡くなったんですよ。僕に自然のことをたくさん教えてくれた人で。だから、自分の人生の中で人はいつ死ぬかわからないっていう気持ちと、父親が僕に言ってくれたり体験させてくれたりしたことをバトンのように受け取った気がしていて、それを子どもたちに伝えていきたくて。

──バトンとしての「さかなのおにいさん」ですね。

K: 将来、「関西の海ってゴミが落ちてないので有名やんなー」「ゴミ拾いの人がいるもんねー」って話が出てきて、その人たちは「さかなのおにいさん基金」でゴミを拾っている、みたいな。子どもたちが大人になってスーパーでタチウオを見た時に、「ちっちゃい時によく聞いてたタチウオや、食べてみよう」って買っていくとか。そのためには仲間が必要だと思っているので、さかなや海のことを広く伝えていくために今はその仲間探しをしている感じです。

 

Q.「シュッとしてるもの」って何だと思いますか?
K: シュッとしてるって、もっと近づきたいものだと思います。自分もそうなれたらいいなって憧れがあるもの。僕の知り合いで一番シュッとしているのは、『ミヤネ屋』(読売テレビ)のお天気キャスターをしている蓬莱大介さんです。蓬莱さんは絵本を新しく出されたんですけど、ある時「かわちゃん、iPadで絵を描く方法教えて」って言われて。僕も蓬莱さんがスケッチブックで天気予報をされているのが好きだったので、「スケッチ教えてください」ってお願いして、京橋のスタバで閉店まで教えていただきました。蓬莱さんは実際にお会いすると顔も小さくて本当にシュッとされていて憧れです。
Q.自分の名前で缶詰を出すとしたら、中に何を詰めますか?
K: サバ缶にします。好きなので。
──サバ缶!
K: サバって、「サバの生き腐れ」って言葉があるくらい、消化酵素が強いのですぐに腐っちゃうんですよ。あんまりすぐに腐るから、冷蔵技術のない時代、早く処理していくために適当に数を数えて「はい! 大体100匹です!」って言っていたら実は90匹で…みたいなところから「サバを読む」が生まれたんですよね。
──そうなんですね。
K: でも、サバ缶ってめっちゃもつんですよ。3年間とか。何でもつかと言ったら、完全に菌をなくした状態で缶のまま調理しているからなんです。だからサバの栄養素が一切逃げてないんですよね。だから、しばらく置いておいたほうが水と脂が混ざっていい感じにおいしくなるんですよ。そういう意味では、僕が作るものも長く続いて、味がこなれていくのも楽しめるようになってほしいから、サバ缶がいいなと思います。
──そんな意味合いも込めていたんですね。
K: あとサバはオシャレですしね。背中にナミナミ模様があってオシャレなんです。あれ、鳥が上から見ても波に擬態してわからなくなるようになっていて。お腹側は白いんですけど、それは太陽の光に擬態してるんですよ。
──へえ~!
K: だからね、シュッとしてるデザインのものも作りたいんですけど、それにはちゃんと理由があるっていうものも作っていきたいので、そういう意味でもサバ缶です。

 

イベント告知

「海遊館 さかなのおにいさん かわちゃんトークショー」

日時:2024年3月20日(春分の日)
場所:海遊館・天保山マーケットプレース
詳しくはHPで公開されます。しばらくお待ちください

HP: https://sakana-bro.com

川田一輝


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1990年大阪生まれ。さかなの生態や海の大切さを”オモロく”伝えることで、子どもの「やさしい想像力」を育てる活動をしている。情報番組の出演をはじめ、テレビ東京「シナぷしゅ」にてアニメーション・作詞曲・歌を担当。著書に「おさかなさがしえずかん」「ツッコミたくなるおさかな図鑑」など多数。2023年からFURUNO公式アンバサダーに就任、ラジオDJや神戸動植物環境専門学校 特別講師も務める。好きな漫画は『スキップとローファー』『子供はわかってあげない』『外天楼』(すべて集英社刊)

撮影:青谷建

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