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マグカンさんの作品:【第十八回】イラストレーター 中村佑介さん 後編

関西にいる「シュッとした」人たちから「シュッとした」お話を聞きたくて始めた、MAGKANインタビューコーナー!

第十八回は、

「ASIAN KUNG-FU GENERATION」のCDジャケットや阪急電鉄のラッピング電車など、幅広い分野で活躍する イラストレーター 中村佑介さん にお話をうかがいました!なぜ関西で活動を続けているのか、なぜイラストレーターという仕事をメジャーにさせることに意欲的なのか、その理由を語っていただいた、令和初の新春特別企画・ロングインタビューの後編です。

≫ インタビュー前編はこちら

 

『高校生の音楽1』(教育芸術社刊) ©Yusuke Nakamura

 

教室で絵を描いている子たちが端っこに行かずにすむのに

──イラストを学びたい人のために教室やSNSで教えていらっしゃって、イラストレーターという仕事をメジャーにしたいという考えをお持ちだそうですが、そこにはどういう思いがあるのでしょうか?

N: イラストには漫画にもアニメにもできない表現がある、と誇りのようなものを持っているんですよね。持たないとやっていけないというか。だから、雑誌の『イラストレーション』(玄光社刊)や『イラストノート』(誠文堂新光社行)、『季刊エス』(復刊ドットコム刊)とか、少し前なら『MdN』(エムディエヌコーポレーション刊 2019年4月号より休刊)のような、イラストの世界を身近に感じてもらうことを目指しているはずの雑誌が、コンビニに置かれていない、大きい本屋に行かないと手に入らないのって、自分としてはカッコ悪いな、と。どんどん廃刊していますしね。イラストってすごく広告的な世界のものなのに。エンタメではないけれど、ゲームやアニメのようなサブカルチャーに足を突っ込んだ広告なのに。そういうのを目の当たりにして、責任を感じるというか。自分が関わっている文化なだけに、「俺たちって売れないよね(笑)」みたいな自虐はもう、いい、というか。少しでもこの文化を盛り上げるために何をしたらいいのか、僕の好きな、たくさんのイラストレーターの大先輩の方々がいらっしゃいますけど、その方たちが何をしてこなかったのか、というところに目を向けたくて。

──だから、「メジャーにしたい」?

N: 幼稚園や小学校ではみんな描いていたし、中二くらいまではクラスで絵が上手いと褒められていたはずでも、その後、絵を描くことってだんだんマイノリティになっていっちゃいますよね。「絵が上手いから何なの?」って、気づけばスクールカースト最底辺みたいなことになる。いま大人の頭で考えると、そりゃあ、子供から見たらいい年して絵を描いて幼稚だなって思うよな、とは思うんですけど、でも、何で幼稚って思われなきゃいけないんだろうとも思うんですよ。

──一定の年齢になると、急に掌を返されますよね。

N: それはイラストレーターという仕事がメジャーではないから。甲子園に行けるわけもないのに、運動場で素振りをしている子を見て幼稚だとは思わないじゃないですか。頑張ってるな、とは思っても。それって、プロ野球選手という仕事はメジャーでカッコいい、という洗脳を受けているからなんですよね。周りの大人が中継を観てあーだこーだ言っている。子供はやっぱり、大人が「いい」って言っているものに弱いので。

──イラストレーターの仕事がもっとメジャーであれば、絵を描く子がマイノリティにはならないはずだ、と。

N: 僕が売れるとかじゃなくて、商業のイラストレーション、何かのパッケージとか、そういった純粋な挿絵としてのイラストレーションと言えばいいんですかね、それがもっと成熟すれば、教室で絵を描いている子たちが端っこに行かずにすむのになぁ、みたいなことは思いますね。だから、自分の時を思うと、恨みが消えない部分があって。周りの子たちにではなくて、イラストレーターの世界を作ってきた先人たちに。「カッコ悪い仕事だと思われたせいで、僕らがいじめられないといけなかっただろ!」みたいな、八つ当たりみたいな幼い考えですが(笑) まぁまぁ、それを言っていても仕方がないので、何かできないかなと思ってやっているんですよね。イラストを描くのに役立ててもらえるような『中村佑介 みんなのイラスト教室』(飛鳥新社刊)っていう教科書を、印税を削って低価格で出したりとか、なるべくグッズは使いやすい機能とデザインにしたり、講演会やSNSでイラストについて話したりとか。僕の場合はね。

中村佑介作品集「NOW」(飛鳥新社刊) ©Yusuke Nakamura

 

ピクサーに行きたいと言う海外の学生と、日本の学生の技術力はそんなに変わらない

──どうしてイラストを教えることにも携わっているんでしょうか?

N: イラストレーターの仕事に就くことに、現実感を持たせたいんです。僕は親がデザイナーと建築家だったので、イラストレーターになることは夢のまた夢のような世界ではなくて。昔から、デザインは魔法を使っているわけではなくて、こういう風に作られているんだよ、というところをずっと見てきたんですよ。こうやってイメージを変換したり誘導したりすれば社会の中に上手く入り込めて、上手く仕事にできる、生活費を稼げるんだ、と。子供としてはそんな現実的な部分をあんまり見たくなかった面もありますけど(笑) そうすると、イラストレーターになるのは、夢じゃなくて目標になって。目標になって初めて、ようやく目指せるものがあると思うんです。ノートの落書きだったものにペン入れしてちゃんと色を付けるようになる。自己評価が高くなるというか。

──夢と目標では、向き合う姿勢が変わりますね。

N: サンフランシスコに行った時に、ピクサー(ピクサー・アニメーション・スタジオ)に連れて行ってもらったんですよ。外から見ただけなんですけど、大学みたいな敷地面積のアニメスタジオなんですよね。スタジオジブリでも、作品の知名度からの想像よりは大きくないじゃないですか。ピクサーは本当にスタジオで、近大(近畿大学)とか、北海道大学とかみたいな感じですよ。「これ町やん」みたいな。車じゃないと端から端まで行けないような、そんな敷地面積のスタジオってすごいなと思って。でも、日本でアニメーションを学んでいる子たちに講演会とかで将来の夢を聞くと、ピクサーはほぼ入ってこないんですよね。皆ピクサー大好きなはずなのに。もともと無理でしょ、って諦めているんです。そこに何があるのかなと思っていたんですけど、やっぱりこれだなと思ったことがあって。

――諦めてしまう要因があったんでしょうか。

N: サンフランシスコの講演会で学生に将来どこに就職するのか聞いたら、ピクサーに行きたい、Appleに行きたいって子がバンバンいたんですよ。でも、その子たちが上手いか下手かっていうと、確かに上手だけど、技術力は日本の学生とそんなに変わらない。そこにあるのは、現実感や自信を持てるかどうかで。外部的な要因はけっこう大きいんだな、と思ったんです。SNSで僕が発信するとか、インタビューを受けるとか、何でもそうなんですけど、現実感を持たせるためにできることをしたいんですよね。「本人を見て絵のイメージが壊れた」って意見よりもそれは重要で。ちゃんと現実的に考えたら仕事になるんだよ、ってことを教えるためには、言葉じゃなくて、どれだけメディアに露出しているかとか、どれだけこの人が稼いでいるかとか、そういうところが必要だと思うので。

「無料のティッシュに負けるなんてありえないじゃん」

――本業をしながらだと、大変なことも多いと思います。何がそこまで、中村さんを突き動かしているんでしょうか?

N: 「メジャーにしたい」っていうのと同じで、僕一人ではできないんですよ。もっともっとプロになる人を増やしていくというか。そういう軍団や部族じゃないんですけど、イラストレーターは夢の仕事だ、というところから脱却させたいというか。別にイラストの仕事がないわけないじゃないですか。皆イラストを使いたいから、そこかしこで無料の同じイラストを見るわけで。イラストは使いたけどお金を払いたくない人がいるってことなんですよね、あれって。ということは、そこに付け入る隙があるんですよ。なのに、仕事を取られたんですよね。無料というやつに。だから、SNSで無料のイラストが価格破壊を起こしているって批判的になっている人を見て、「違うんだけどな」と思って。無料のものなんかに負ける自分が悪いというか、「無料のティッシュに負けるなんてありえないじゃん」と思うんです。デートの時に、はい、って言われて出てきたのがテレクラのティッシュだったら嫌でしょ!?(笑) それに仕事を奪われたってことは、そこに足りてない何かがあるんですよね。

――イラストの仕事が欲しいけど、手に入れられずにいる人に足りない何かが。

N: それは、絵の上手さじゃなくて、社会性だと思います。さっき話した、キャラクター性の強い、性を強調した絵みたいなもので。例えば、幼稚園のバザーがあることを告知するチラシに、胸の谷間が出ている保母さんの絵なんて親は見たくないし、園長も見せたくない。でも、そういう性を強調した絵を描いている、アマチュアのイラストレーターを志望しているような人たちも、別にエロい絵を描きたいわけではなくて、気づいていないだけなんですよね。色が単純についていないとか、商業的に使いやすいルックになっていないとか、本当にそういうつまらないところなんです。お葬式にパーカーで行ったけどスーツじゃないとダメだと知って、「この国には自由がないのか!」って怒っているのと同じ。いや、そういうことじゃないんだよ、っていうことに気づけばいいんですけど、そこに気づくための知識が、日本では義務教育の美術においてはされていないと思うんですよ。音楽もたぶんそうだと思うんですけど。商業と美術が結ばれている点みたいなものが、最終的に切れちゃっていて。

 

子供の自分が体育座りしていて「お前それでいいのか」って脅してくるんですよね(笑)

──仕事としての美術が見えてこない。

N: 義務教育の美術の教科書って、ピカソやゴッホ、行ってもウォーホルで終わってしまいますよね。でも、子供たちの夢を目標に変えたいんだったら、彼らのあとに漫画やアニメという文化が出てきて、挿絵が出てきてイラストが出てきて、ゲームもラノベもパッケージも広告も含めて今はこういう仕事があって、っていうところまで本当はやらないといけない。あとは、色のことや、基礎的なデッサンのこと、そういったことが義務教育では教えられていないんです。時間的に仕方がないのかもしれないですけど、僕から見たら、本気でプロを目指したい子たちにとっては高校までオママゴトのような授業をずっと受けさせられていると感じるんです。僕は中学、高校の美術の授業がそんなに好きじゃなかったから。だからこそ、美大や専門学校の手前にあるような、美術の学校というのが欲しい。でも、ないんですよ。お絵描き教室しかないんです。「美大の予備校って何で行かなきゃいけないの?」ってことを知るための場所がない。

──それで、教室を開いたり、SNSで教えていらっしゃったりしているんですね。

N: 自分が気づいたんだったら、時間があるときにやってあげるのも、自分のためになるなと思って。イラストレーターという職業の底上げになるから。だから、ボランティアでもあり、自分のことを考えているところもあり。二つの理由でやっていますね。

──それでも、そこまで力を入れていらっしゃるのはすごいことだなと思っています。

N: あれでしょうね、単純に言うと、当時の自分がもしその立場だったら何が欲しかったかって考えると、やっぱりしないといけないなという思いが強くて。常に、小学校、中学校の頃の自分が、自分の中に生きているんですよ。頭の中にこびりついているんです。あの時の感覚に一瞬で帰れますよ。価値観や、嫌だったこととかも、忘れられなくて。ずっと、頭の中で子供の自分が体育座りしていて「お前それでいいのか」って脅してくるんですよね(笑) だから、SNSをやっていて、誰ともやりとりをせずに、絵もアップせずに拗ねている子だっていっぱいいるだろうなと思うんです。もし僕だったらそうしていたと思うから。当時はインターネットがなかったから、僕は井の中の蛙でいれたものの、もしスマホを与えられていたら超拗ねますよ。ゾッとします。自己顕示欲がすごく強いのに、全然注目されないから。絶対、やっちゃいけないことをしてでも、社会に注目されたくなるだろうな、って。子供が他者に注目されることほど満たされることなんてないですから。親じゃなくて他者に。だって全然褒められないですもん。子供が褒められるところって、かわいいくらいしか言われないじゃないですか。でもそれって下に見た表現で。やっぱり「すごいね」って皆言われたいはずなんですよね。

 

「漫画、つまんないでしょ?まだセリフついてるのを読んでるの?」みたいなところまで行きたい

──これからやりたいことは何ですか?

N: 漫画が売れなくなるくらい、イラストの画集を売りたいですね。「漫画、つまんないでしょ?まだセリフついてるのを読んでるの?」みたいなところまで行きたい。東京五輪の公式ポスターに起用された方の中に、漫画家さんもいらっしゃいましたよね。それはもう、自分が「ダッサいな!」と思って。「仕事取られてるじゃん!」って。いつも漫画ですよ。そういうところがダサいっていうか、できてないっていうか。

──弊社としては複雑な気持ちになるお話ですね…。

N: でも、圧倒的に人数が足りないんですよ。イラストが、ゲームにもアニメにも頼らず、パッケージとしてエンタメの需要を生むところまで行くには。かつてそれができていたのが、ビックリマンシール(ロッテのチョコレート菓子のおまけ)とサンリオだと思っています。でもこの二つは二頭身のかわいいキャラクターなので、僕の絵でそこへ行くためにはどうすればいいのか、と日々研究しています。

──漫画自体はお好きですよね?

N: 大好きです!今日も持ってきたんですけど…。


N:
どれもおもしろいですよね。『Dr.STONE』(集英社刊)なんて本当に発明みたいな漫画ですよ。2019年のすごい漫画を決めるならダントツ一位だと思っています。でも、好きなのに漫画を読む時間がなくて。暇なことがすごく嫌いで、ボーッとできないので、仕事を終えて寝るまでの間はゲームをしていて、眠たくなったら映画を観て寝ているんですよ。だからお風呂に入る時に読んでいます。

──他にも、やりたいことはありますか?

N: 海外って実は、イラストの仕事にとって未開の地なんですよね。アメリカでもヨーロッパでもアジアでも、コンビニでパッケージにイラストが入ったものをほとんど見なくて。書籍の表紙もそうで、イラストっぽくても図形のような抽象的なもので、僕のような具象画の商業イラストがパッケージに使われるってことはなかなかない。漫画文化の強い日本と違って、イラストがあると子供っぽいと捉えられやすくて。そういうのを変えてみたいですよね。その地が中国でもアメリカでもいいんですけど。コンビニに僕のイラストの入ったパッケージが並んでるような、それくらい認知させるところまでいってみたい。その中だと、最近、小説『夜は短し歩けよ乙女』(KADOKAWA刊)の英語翻訳版を、僕の描いた日本の表紙でそのまま出してくれたんですよ。今まで、僕が関わらせていただいた小説は、海外版になるとことごとく表紙が変わっていたんですよね。イラストが漫画っぽすぎて「これはコミックなの?」となってしまうので難しくて。なので、ひとつクリアできたのかな、と。だんだんそういうことができるようになったのかな、と思いますし、あとは、日本の中でももっと広い層が見てくれるところに絵を提供できるようになりたいです。ちょうどやっているのが、来年のとある市の住民パンフレットなんですけど。公共のものと言ったらいんですかね。それをもっと、次は大阪府とか、ゆくゆくは日本とか、それぐらいまでいきたいですよね。

 

Q.「シュッとしてる」ものって何だと思いますか?
N: 『トランスフォーマー』のおもちゃ(変形玩具)ですかねぇ。作っている人の頭の良さがシュッとしすぎていますね。天才、じゃないですかね。このおもちゃを作っているタカラトミーのスタッフの方々は。「何で電池を使っていないのにこんなに楽しいんだろう?」って思います。映画を観るにしても、ゲームをやるにしても、電池が要るじゃないですか。これは電池が入ってないんですよね。ただのプラスチックの組み合わせですよ。触るたびに唸りますね。どれだけスマートなモノの考え方をしているんだって思いますね。ぜひ、触ってみてください。
Q.自分の名前で缶詰を出すとしたら、中に何を詰めますか?
N: 何を入れるかな…何でしょうね。うーん、やっぱり、自分の絵が描いてあるグッズをたくさん入れたものが出たらいいですね。
――いいですね、おもちゃのカンヅメみたいで。
N: そんな自分の缶詰ができたらいいけど、でも、まだ力不足ですね。だって缶詰は子供のものだから。子供に向けてあんまり描けていないので、僕の缶詰が出ても嬉しくないだろうな。大人は嬉しいかもだけど。
――子供向けの缶詰になると難しいですか。
N: 力不足ですね。まだ何も入れられない!(笑)
――ええ!?(笑)
N: 何も入ってない。空っぽです(笑) 僕の缶詰は空っぽ! むなしい(笑)
――そ、そんな…!
N: いやでも、それが夢ですよ。子供向けの絵をいっぱい描いて入れてあげたいですけどね、将来的には。50歳とか60歳にならないとそれは無理ですね。そこまで成熟できないです。

 

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撮影:青谷建

中村佑介


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兵庫県宝塚市出身。バンド「ASIAN KUNG-FU GENERATION」をはじめとするCDジャケットや、小説『謎解きはディナーのあとで』、音楽の教科書の書籍カバーなどを手掛けるイラストレーター。ほかにも、バンド活動、テレビやラジオ出演、エッセイ執筆など表現は多岐にわたる。初作品集『Blue』(飛鳥新社刊)は、画集では異例の9.5万部を記録中。好きな漫画は唯一キャラクターのフィギュアを持っている『魔太郎がくる!!』(秋田書店刊)。

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2020/1/15