
漫画『妖怪めし』と連動して、妖怪文化研究家 木下昌美さんの妖怪コラムをお届けします。
第七回は、「天狗」。
さて、一体どんな妖怪なのか…?

天狗というものを、はじめて認識したのはいつのことだったか。しばらく頑張って記憶を辿ってみましたが、どうにも思い出せません。自分の人生にいつの間にかすっと入り込んで馴染んでいたんだなあと思い、なんだか可笑しくなりました。
さて。そんな天狗の日本における初出は『日本書紀』舒明9年(637)(※1)に見える「非流星是天狗也」という記述です。唐に留学していた僧旻が、雷のような音とともに流れてきた大星について、天狗ですよと意見しています。
流星のようなものを天狗であるとするのは、中国の天文学に基づいていることが『史記』「天官書」(※2)などから知ることが出来ます。しかしこの流星と天狗との関係は日本国内で定着しなかったのか、国内の天狗像は次第に変化します。
例えば中世にかけては、仏教が隆盛したことから仏教者に相対するものとして取り上げられるなどしましたが、とにもかくにもその歴史や変遷は複雑で簡単には説明できない多様な側面を持つものなのです。

『妖怪めし』に登場する天狗たちのキーワードはというと、神隠し、また異界に棲んでいるという点でしょうか。これらのことから、なんとはなしに『仙境異聞』が想起されます。『仙境異聞』は数年前にSNSで拡散され注目を浴びたことをきっかけに各方面で話題となりましたので、御存知の方も多いでしょう。
こちらは国学者・平田篤胤による神道書で、天狗や山人が棲むという仙境へと連れ去られ暮らしていたという少年・寅吉と面談し、記録したものです。寅吉が師匠や兄弟子らと共に修行に励んださまや、彼らの食事、不思議な体験やそこにいるバケモノたちについてなど、仙境内の様子を窺い知ることができる内容となっています。
神隠し、という言葉が天狗の代名詞のようなものであることは広く知られる通りで『日本国語大辞典』(※3)をひいても「子どもなどが急にゆくえ知れずになってしまうことを、神や天狗のしわざとしていう語」と出て来ます。
この神隠しイコール天狗という図式は近世あたりから度たび見られるようになり、『仙境異聞』もきっかけのひとつであったに違いありません。
そのほか同書には現代の天狗像にも通ずる特徴が散りばめられていますので、興味がある方は手に取ってみて下さい。
以上とりとめもない内容となりましたが、それくらい天狗を語ることは骨が折れるのだということは伝わったのではないかと思います。一筋縄ではいかない天狗が『妖怪めし』ではどのように描かれているか、その目でご確認ください!
【注】
※1 『新編日本古典文学全44 日本書紀③』1998/小学館
※2 吉田賢抗『新釈漢文大系41史記』1995/明治書院
※3 『日本国語大辞典3』2001/小学館
【参考文献】
・平田篤胤、校注・子安宣邦『仙境異聞』2000/岩波書店
・知切光歳『天狗の研究』2004/原書房
文:木下昌美

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