

BROTHERS
日高チトセ
あらすじ人間に乗り移った天使が、殺人を犯す現場に遭遇した兄弟・イアンとルーカス。弟のルーカスの命を守るために兄のイアンがとった選択は、悪魔に身体を貸し、天使討伐の役目を負うことだった…。
作品講評安定した画面作りと丁寧なペンが好印象。洋画のような雰囲気のストーリーと画風が良く合っていた。ただ、場面転換が急で話の前後の繋がりが分かりづらいところが多かった点が課題。場面の繋がりを意識して、読者が世界観を理解しやすいよう、演出面を強化していってほしい。

あの子が笑ってくれますように
之原 侑
あらすじ工学系の研究者として、将来を嘱望されるネット。彼は次の学会で発表するべく、極めて人間に近い人型ロボットのロアと共に生活をしていたのだが…。
作品講評キャラクターの表情、コマの見せ方にセンスが光る。それぞれの人物が持つ感情を、カメラの位置、アングル、表情といった出来る技法すべてを駆使して読者に伝えようとする熱量を感じる作品。ただ、線が硬く、絵が単調になりがちなところがもったいない。背景の描き込みも含めて、さらなる画力向上に努めてほしい。

花が散る頃
雨中人
あらすじ主人公まさとは高校生。通学の際にいつも通る公園で、一人の女性と出会う。彼女との交流の中で、二人は次第に打ち解け始め…。
作品講評台詞を一つ一つ丁寧に紡ごうとする姿勢に好感が持てる。展開のどんでん返しもあり今後の作品に期待大。繊細なタッチで丁寧に描こうとしているが、まだデッサンが不安定。ペン入れとデッサンに気を付けて次回作に臨んで欲しい。

吸血鬼ストリベリーちゃんの野望
シバヤマユウキ
ある日の寄り道
やさとひよこ

第8回 MAGKAN(マグカン)漫画賞。今回はノミネート3作品選出という結果になりました。新型コロナウィルスの情勢下にも関わらず、ご投稿くださいました皆様に心から感謝申し上げます。
『BROTHERS』は、丁寧に描かれ洋画を観ているような世界観に浸れる作品。
特筆すべき設定としては、兄・イアンが悪魔の器となりアザゼルの人格を宿すという点。ただ、悪魔化したキャラクターの行動やビジュアルは、読み手の想像を超えずに大人しく収まってしまった印象。悪魔たらしめる部分での振り幅、人間離れした趣向や仕草など、常識を逸脱したようなケレン味が加わればエンタメとしてより読者を魅了できるように思う。
『あの子が笑ってくれますように』は丁寧に紡がれた作品という印象。
キャラやその表情にも好感が持てる。構成としてはシリアスベースに、時折微笑ましいキャラクター同士の掛け合いや、クライマックス手前に用意されたサスペンス的なシーンを投入させるなど、読み手を飽きさせない工夫を感じられる。しかしながら作画は少し淡白な印象。質感など表現の幅を広げてみてほしい。
『花が散る頃』は、繊細な雰囲気に包まれた作品。
「主人公がこの世のものではない」という設定は、クライマックスに用いることもできるが、今作に関しては導入後の早い段階で読み手に提示しているので、良い意味で顛末が予想しづらく楽しめた。物語を小さくまとめず、最後まで飽きずに読み進めさせる工夫を感じられる。ただ、作画面では拙い部分が見受けられるので、基礎力向上には今後も注力してほしい。
次回は2020年・秋(締切:11/30当日消印有効)。
優秀な作品は即掲載、関西の編集者が担当に付き、ともに連載獲得を目指すことができます。また受賞に至らずとも可能性を感じる才能の原石には編集部から担当希望のご連絡を差し上げることも。ここから将来、日本を代表する作家さんが誕生することを心から願って――皆様のご応募、心よりお待ちしております。