

ジャンヌ
ガブリエルしょう
あらすじ人の王と竜の王が覇権を争う国で、竜王の手で一人の少女から"人殺しの兵器"が生み出された。感情はすべて壊れているはずだった。「無能」と呼ばれる、人の王に出会うまでは…。
作品講評作り込まれた画面、演出にセンスを感じられ、これからさらに伸びそうな可能性を見込んでの受賞となった。ネームの瑞々しさ、拙いながらも圧倒される物語の勢いが素晴らしい。説明の拙さによってお話の流れが時々止まってしまうことが課題。加えて、キャラの表情がもっと柔軟になれば、さらなる飛躍に繋がるだろう。


ぼくン家のうさぎ
ミライレナ
あらすじ電信柱の元に捨てられていたウサギと、つい拾ってしまった主人公との共同生活が始まりまして…。
作品講評フルカラーで丁寧に描きこまれた画面は非常に好印象。ネタ選びも、ユルすぎずキツすぎずの絶妙な塩梅。キャラクターデザイン面での課題は残るが、今後に大いに期待したい。

魔法使いの落書き帳
壱谷 セン
あらすじ絵の具で描いた絵が魔法になる世界で、インクによる魔法を研究しているリトリー。突然訪れてきた使い魔・シャトを追い返すべく、飼い主であり、失踪中の魔女を探そうとするが…?
作品講評作画・キャラデザが綺麗で非常に好印象。主人公と使い魔の掛け合いもかわいらしい。しかし、ファンタジー世界を描くのであれば、世界観をより魅力的にする背景にも力を入れてほしかった。会話劇になる傾向が強いので、説得力のある画面作りが重要になることを意識して次回作に臨んでもらいたい。

其の娘、最恐に憑き。
ちりぬるを
あらすじ引き寄せ体質の女子高校生・敦心(あつみ)。幼い頃から美人の守護霊・竜胆が護ってくれていたが、ある日、「必ずお前の守護霊になる」と吠える虎の霊がやってきて…!?
作品講評読者が楽しめるよう描くにはどうすればいいか、と工夫する努力を感じた。感情が高まった時のキャラの表情にも熱があって良い。ただ、話の先が読めてしまう演出・展開が残念。同じ展開でもネームの切り方ひとつで印象を大きく変えられるので、画力向上も含め、お話のラストまで引き込む力を養ってほしい。

ゴメド3
水井秀彰

第6回 MAGKAN(マグカン)漫画賞。今回の応募作は銅賞1作品、ノミネート3作品選出という結果に。ご投稿いただいた皆様に心から感謝申し上げます。 また銅賞受賞作品は、MAGKAN掲載が決定。是非あらたな才能の芽吹きにご刮目くださいませ。
『ジャンヌ』は銅賞受賞、MAGKAN掲載が決定。
人の国と、竜が治める隣国との争いの中で生み出された人殺しの兵器・ジャンヌ。感情が欠落している彼女と人の王の出逢いを描いたファンタジー作品。安定した作画と壮大な世界観で紡がれた内容に目を見張った。構成に関しても精査の努力が感じられる。一方、作画は注力されつつも、どこかあっさりとした画面となっており勿体ない印象。質感を追求してみると、舞台やキャラクターの説得力が増す作品に成るはず。とても伸び代を感じられる作家、伝わりやすさが加わった次回作に期待大。
『ぼくン家のうさぎ』は、ノミネートに選出。
雨の日に出会った捨てうさぎ。主人公はうさぎを家に連れ帰るのだが…。一人と一匹の生活をコミカルに描いた4コマをカラーで描いた作品。デフォルメされた愛らしいキャラクター、一癖あるうさぎとのちょっとした非日常は読んでいて心温まる。ストレスなく読み進められる反面、回を重ねるごとに既視感が膨らむ印象。何かしら一人と一匹の関係から発展させる為の問題など用意すると、読み手を惹き込む良いリズムが生まれるかと。
『魔法使いの落書き帳』は、ノミネートに選出。
絵の具で絵を描くことで魔法が使える世界。師匠である魔女から独立し、研究に勤しむリトリーのもとに訪れた使い魔・シャト。疎ましく思うシャトを魔女へ送り返そうとするが…といったファンタジー作品。一線一線に注力された作画で安心して読める。絵の具を用いたファンタジー題材の選定も面白みを感じる。ただ、丁寧なゆえ、無機質な画面になってもったいない。例えば冒頭で読者を掴むために、絵で照明を灯すシーンは壮大に描いて惹き込む工夫が必要。設定を生かすための演出が今後の課題。作品に取り組む真摯さが伝わるので、次は大胆になることに注力してみてほしい。きっと作品の魅力上がりや質も向上するはず。
『其の娘、最恐に憑き。』は、ノミネートに選出。
霊を引き寄せやすい女子高生・八蜘蛛敦心は昔から女守護霊である竜担に護られていた。そんなある日、敦心の前に潮虎塩十郎虎汐寅と名乗る霊が現れ、取り憑こうとする。抵抗する敦心だったが、己に降りかかる禍や霊障を招いていたのは竜担だと発覚し…といった内容。和風ローファンタジーを題材とした構成に注力された作品。特に敵と味方がひっくり返るような展開は、読み手の感情をいい意味で裏切る仕掛けが組み込まれている。ただ、演出やアクションシーンは小さくまとまった印象があるので、構成力がありつつも結果的に大人しい作品という印象に。この点は課題として次回作に取り組んでみてほしい。
次回は2020年・春(締切:5/31当日消印有効)。
優秀な作品は即掲載、関西の編集者が担当に付き、ともに連載を目指すことができます。また受賞に至らずとも可能性を感じる才能の原石には編集部から担当希望のご連絡を差し上げることも。ここから将来、マグカンを代表する作家さんが誕生することを心から願って――皆様のご応募、心よりお待ちしております。