

白黒恋模様
ミライレナ
あらすじある日、浩蘭(はおらん)は目覚めるとパンダになっていた。こんな格好で学校へ行きたくないと戸惑う浩蘭だが、幼馴染の冥凛(めいりん)は休んでも仕方がないと彼を学校へ連れ出しー…。果たして浩蘭が突如パンダになってしまった理由とは⁉ 幼馴染と紡ぐ、キュートな恋模様!
作品講評安定感のある画力に加え、こだわりを感じる画面作りが光っていた本作。世界観に即したキャラクターデザインも可愛く、成長するにつれて変化していった幼馴染の関係性も丁寧に描かれていた。ただ、もう一つ突き抜けた展開や物語のメリハリがあれば、より読者を引き込むことができたと思う。次回作も期待。

保健室にて
相田眠
あらすじチャイムが鳴る昼下がり。そこは保健医の内永(うちなが)と生徒の実世(みよ)の、熱を帯びた二人だけの時間。淡く切ない空気が漂う、二人の関係はー…。
作品講評繊細な絵柄と作品の世界観が見事にマッチしており、心を掴むキャラクターの表情や演出が評価に繋がった。ただ、説明しすぎないエモーショナルな空気感を描くのが上手い一方、本作はストーリー性が弱く、キャラクターの奥行が見えにくい作品であったため、次回作では読者の心を揺さぶるドラマ性を意識した作品を期待している。


地球侵略えびフライちゃん
フリルザメ
あらすじ漫画家を目指す専門学生の元へやってきたのは、ピンヒールを履いた美しいおみ足の…えびフライ⁉ 地球侵略を目指す、揚げ物星人「A・B・fly」とツッコミが冴える専門学生によるドタバタコメディ!
作品講評どういうところから美脚のえびフライをキャラクター化しようと思ったのか、作者の発想が気になりつつ、キャラクター同士の掛け合いが非常に気持ちよかった。しかし、作画やコマ割りの部分で粗さが目立つのでもったいない。今後コメディ路線の作品を描いていくのであれば、ツッコミのパターンや構成の引き出しも増やしながら、全体的に完成度を高めていってほしい。

白日の片割れ
天城 仁貴
あらすじ晃(こう)が出会ったのは、小学二年生の家出少年・つばさ。晃は母親から無視されて辛いと話すつばさと自身の弟の姿を重ね合わせ、つばさの味方になってあげたいと思うのだがー…。スパイスが効いた、心温まるひと夏の物語。
作品講評事情は違えど、居場所がないと感じている青年と少年の友情が心に沁みる作品。そしてラストでは思わぬ展開が待ち受けており、テンプレート通りにはいかない力作であった。「双子」というワードから連想したオリジナリティ溢れる演出も魅力的。しかし前半、二人の関係性が丁寧に描かれているものの、やや冗長的な印象も。また、作画は線の固さや構図によって崩れる箇所が散見されるので、改善してもらいたい。今後に期待。

少年、百合の間に挟まって死す
奈良漬け11号
あらすじ高校生の陽日(はるひ)には推しの百合がいるが、下校中に彼女たちが目の前で死んでしまう。その日から陽日はループを繰り返すようになり、その度に彼女たちを救おうと試みるのだが、なかなか運命は変えられない。果たして陽日は彼女たちを救うことができるのか―…。
作品講評冒頭の「僕の目標は百合の間に挟まって死ぬことだ」という掴みが秀逸で、一気に引き込まれた。推しの百合を助けるためにループを繰り返す主人公の話だが、ラスト3ページに更なる驚きを用意しており、最後まで読者を楽しませようという企みが伝わってくる展開であった。ただ、読みやすい反面、やや単調に感じるコマ割りの改善と作画は課題。画面の密度を上げ、若き才能を伸ばしていって欲しい。

山童
梦路辿
怪異怨念
なにわせんば
夢を見ていたくて
タピ岡ミルクティ子

第17回 MAGKAN(マグカン)漫画賞。今回は銅賞2作品、ノミネート3作品選出という結果となりました。
ご応募いただいた皆様に心より感謝申し上げます。
銅賞『白黒恋模様』は、パンダになってしまった男の子の恋心を描いたコメディ作品。
キャラだけでなく背景も丁寧に描きこまれ臨場感が伝わるアナログ原稿。作者の技術力の高さが伺え、高評価となった。反面、ストーリーとしてはフックとなる要素が希薄な印象。キャラも展開も小さくまとまってしまっているので、次回作は読者を喜ばせる為の企みや裏切りを意識した作品づくりに注力してみてほしい。
銅賞『保健室にて』は、保険医と男子学生の保健室でのひと時を描いた情緒的なストーリー。
粗削りながらも線画が醸し出す儚く淡い空気感が巧みに表現されており、とても惹きつけられる。想像が膨らむ世界観描写である一方、物語としては情報不足のまま謎を残して終わるのでもったいない。今後は己が持つ強みを活かしつつ、骨子が整ったストーリーづくりに挑戦してみてほしい。若手としても注目の作家。
ノミネート『地球侵略えびフライちゃん』は、地球侵略を目論むエビフライのような宇宙人と漫画専門学校の学生によるコメディ。基礎力の乏しさはあるものの、発想力の豊さには特筆すべきものがあった。構成上、丁寧にまとめる意識が必要ではあるが、読者の想像を超えるアイデアは、作家にとって大きな武器。ただ、奇抜さに頼りすぎると読者が離れてしまうので、その点を注意しながら足りない基礎力の向上に努めてほしい。
ノミネート『白日の片割れ』は、心に傷を抱えた青年と幼き家出少年の物語。工夫が感じられる構成で後半のドラマにはとても惹きつけられた。反面、淡白な印象があるので読了後には記憶に残りづらいきらいが。コマ割りについてメリハリが感じづらいので、この作品を印象づけるシーンを大きく描くなど演出の強化にも努めてほしい。また、コントラストを用いて中間色も意識すると画面に説得力が出るはず。器用な作家さんなので伸び代に期待。
ノミネート『少年、百合の間に挟まって死す』は、ループする世界でクラスメイトの百合たちの死亡を阻止しようとする男の子の話。
冒頭やタイトルでコメディ作品かと思わせつつ、ハードで陰鬱な世界観が繰り広げられる。読み手にとって良い裏切りがある作品。内容も非常に読みやすくストレスを感じさせない。縦スクロールの形式でも映えそうな題材だと思う。反面、作画に固さが感じられる点や背景描写が不自然な点もあるのでその部分は払拭したいところ。
次回は2023年・冬(締切:2/28当日消印有効)。
優秀な作品は即掲載、関西の編集者が担当に付き、ともに連載獲得を目指すことができます。
また受賞に至らずとも可能性を感じる才能の原石には編集部から担当希望のご連絡を差し上げることも。
ここから将来、日本を代表する作家さんが誕生することを心から願って――皆様のご応募、心よりお待ちしております。