

踊り子とアクマ
渦沢秋
あらすじある日、奈落の底からアクマがやって来た。アクマは「素敵なもの」を見るために地上に来たというが、彼の出現により国は大混乱。第三舞踏団の団長・ミクラはアクマに帰ってもらうために素敵なものを集めることに奔走する―…。
作品講評自分の踊りに自信が持てなかったミクラが、アクマとの交流を通して踊る楽しさを取り戻していく姿に心を打たれた。また、ラストも読者の予想を超える展開になっており、最後まで飽きさせない作品となっていた。ただ、上手くまとめられた後半に比べて、導入部分はやや読みにくく、精査しきれていなかった印象。これから始まる物語を読者に分かりやすく提示することを心掛け、次回作にも取り組んで欲しい。今後に期待大。

ギ・人魚伝説
おさかなランウェイ
あらすじその昔、人魚に助けられたことがある少年・ポワン。少年は病気の妹を心配し、人魚の歌声を聞かせるために人魚を捜していた。ある日、そんな少年の前に捜し求めていた人魚ではなく、醜いメロウが現れる。メロウは自分の見た目を気にせずに話してくれる少年のため、少年の人魚捜しを手伝うことにするのだが…。
作品講評キャラクターを上手く動かすことができており、ハートフルコメディとして面白く描けていた。特に、インパクトのあるメロウの登場シーンと、フレディ・マーキュリーのごとく歌うシーンは思わずクスッと笑ってしまった。今後は、可愛らしい絵柄と世界観をより際立たせるためにも、もう少し画面の描き込みを増やし、読者を飽きさせない画面作りを意識できると良いだろう。次回作も期待。


神の目
香冬
あらすじ人間の影に入り人を驚かす化け物である彼は、ある日偶然見た天使に心を奪われた。天使に近づくために試行錯誤する彼は、ある日いじめられっ子の少年に出会うが、その出会いは少年を狂わせる出会いだった…。
作品講評安定した画力もあり、安心して読むことができた。キャラクター同士の掛け合いによって、抜群のテンポ感で話が進んでいたが、キャラクターの掘り下げはもっとできたように思う。次回作はもう一歩踏み込んだストーリー構築を目指しつつ、主人公の感情曲線を読者に見せることを意識して欲しい。とは言え、クライマックスの展開はお見事だった。

焦げ冷めたオールドファッション
秋田ケイチ
あらすじ会社でひどいパワハラを受けたことにより、精神的に限界を迎えてしまったタキは毎日働かず、妻であるリエのヒモ状態。そんなタキに嫌気がさしたリエは共通の友達であるトモカに相談し、トモカによるタキ改造計画が始まるのだが…。
作品講評先の展開が気になる導入になっており、気持ちよく読み始めることができた。一方で、以降の展開はやや粗さが目立ってしまった印象。映画好きである彼のキャラクター設定や、トモカの合コン通いを生かすようなネタを組み込むことで、より話が広がったように思う。とはいえ、コマ割りにも安定感があり非常に読みやすかったので、今後は読者を引き込む作品作りを追求して欲しい。

はーとふる。
タピ岡ミルクティ子
桜戦線
ケン常盤
Praetor・Katze
天音しょう

第16回 MAGKAN(マグカン)漫画賞。今回は編集部特別賞2作品、ノミネート2作品選出という結果になりました。
ご応募下さいました皆様に心より感謝申し上げます。
編集部特別賞『踊り子とアクマ』は、作者のオリジナリティを十二分に感じさせられる作品。その独特の画風は、読み手を惹きつける画面作りに成功している。味のあるペンタッチではあるが、キャラと背景の主線を上手く描き分け、画面の奥行を表現出来るかが今後の課題。克服出来れば、完成度の高い画面へ昇華するに違いない。キャラの細やかな仕草、表情に至るまで、作者の拘りを感じる作品であり、今後はエンタメを意識しつつ「読ませる」作品作りを目指してほしい。次回作での飛躍に大いに期待したい。
ノミネート『神の目』は、大化けする可能性を感じる作品。コメディという殻を被りながらも、「狂気」をしっかり描こうとする姿勢には脱帽。丁寧な画面作り、セリフのテンポも申し分ない。ただ物語構成に関しては、更なる精進が必要。ある意味お約束、という流れを、作者独自の視点から良い意味で裏切ってほしい。プロット段階での推敲で、読者を惹きつける山場、意外性のある転機を見出してほしい。練りに練った次回作に期待したい。
ノミネート『焦げ冷めたオールドファッション』。そのタイトルに心惹かれる。タイトルも作品作りの重要な要素のひとつ。先ずその入り口として◎。ドーナツさながら、サクっと読み進められる作品に仕上がっている。口当たりは良いが、もう少し後味の残る展開になれば、と。ただコマ割りのリズムにはセンスを感じる。出来る限り時間を掛けた丁寧は画面作りを心掛け、更なる力作を期待。
次回は2022年・秋(締切:11/30当日消印有効)。
優秀な作品は即掲載、関西の編集者が担当に付き、ともに連載獲得を目指すことができます。
また受賞に至らずとも可能性を感じる才能の原石には編集部から担当希望のご連絡を差し上げることも。
ここから将来、日本を代表する作家さんが誕生することを心から願って――皆様のご応募、心よりお待ちしております。