

神の子羊
ガブリエルしょう
あらすじ周囲も認める美貌を持つアンジェリーナは、貴族へ嫁ぎ、社交界で幸せを手に入れることを夢見て山奥の修道院の家で過ごしていた。ある日、自分を「天使さま」と呼ぶ少女・マリーと出会ってから、彼女の日常が徐々に陰り始め…。
作品講評登場人物の心情や世界観の演出、画面の作り込みが高く評価され、銀賞を受賞。前作から表現力が培われたことで、ネームの瑞々しさはそのままに、読者を物語に引き込む勢いが増している。ただ過程を大事にするあまり、お話を長く感じる部分があるため、今後はメリハリを意識した構成を作れるようになれば、より多くの読者に親しまれる作家へと成長できるだろう。次回の読切掲載に期待したい。
5月1日更新にて作品掲載決定!!


一角獣
三浦半塔
あらすじ共鳴したものと同じ姿になる「一角獣」。その群れからはぐれた一角獣のチサは、人間たちに共鳴し、角だけを残して共に暮らしていた。いつか、一角獣の群れを見つけて元の姿に戻れたら、と日々を過ごすチサだったが…。
作品講評巧みなカメラアングル、繊細なセリフ回しで心象風景を美しく表現していることが高く評価され、銅賞を受賞。画力・構成力に拙さが残るが、独自のセンスが光るネームにこれからのさらなる飛躍を期待できる。ただ、読み手の手を止めさせない勢いのある終盤に比べると、前半から中盤にかけて中だるみしてしまうきらいがあるため、読者の心を掴むエピソードの散りばめ方・構成力が今後の課題。
5月1日更新にて作品掲載決定!!


失敗作
もんもんもんぶらん
あらすじクラスメイトからいじめられ、自分の居場所はどこにもないと感じている碓氷。ある日、幽霊が出ると噂される空き家で、彼は一枚の絵を発見するが…。
作品講評魅力的な絵柄で描かれたダークファンタジー。予想外の展開に圧倒され、読者を惹きつける力を感じた。ただ、主人公の感情の変化を丁寧に描いている点は良かったものの、後半からラストの着地点まではやや駆け足だった印象。今回は編集長特別賞という結果だったが、読者を意識した構成を考えられるようになると、もう一つ上の賞も十分狙えるはず。今後の可能性に期待大。

勇者アルクの冒険
上月暖
あらすじ勇者の力が宿る紋章が思わぬところに出てしまったせいで、勇者としての責務を放棄しているアルク。ある日、村長たちにそそのかされ、ついに魔王討伐への旅に出るのだが…。果たしてアルクたちは無事に魔王を倒せるのか!?
作品講評勢いのあるライトBLコメディ。個性溢れるキャラクター作りが評価され、編集長特別賞を受賞。勇者と魔王という設定は王道のストーリーだが、キャラクターたちの掛け合いが面白く、まとまりよく仕上げられていた。ただ、作者のセンスを感じる一方で、ややメリハリに欠ける印象も。勢いだけでなくテンポのコントロールを調整できるようになると、読者をより満足させられる作品になるはず。次回作に期待。


箱の中
のぺ
あらすじ部屋に引きこもり、無気力な日々を過ごしている少年·ナツキ。そんな彼をなんとか外へ連れ出そうとするメイドロボット·リコ。ある日、リコの強引な作戦に怒ったナツキは家出を試みるが、彼が辿り着いたのは予想外の事実だった…。
作品講評全体的に丁寧に描かれており、好印象。終盤に驚きの展開が用意されており、ストーリーの面では非常に引き込まれた。だが同時に、壮大な題材·世界観の割にはややコンパクトにまとまってしまった印象も否めない。冒頭で読者をミスリードさせるような仕掛けをもう一つ用意したり、キャラクターの動かし方や画面の作り方に振り切った要素を差し込めるようになると作品の強度が増しただろう。画力の向上にも励みつつ、今後に期待大。

大好きでした
秋田ケイチ
あらすじ病気で亡くなったコヨリ。自分の死に絶望する彼女の前に現れたのは、死者を冥途まで導く役目をしているという死神。突然現れた死神を不信に思いながらも、彼女には最後にどうしても想いを伝えたい人がいて…。
作品講評死神のキャラクターデザインが魅力的で、ラストは爽やかにまとめあげられた本作。コマ割りのひとつひとつも丁寧に計算されていることが分かり、テンポよく読み進めることができた。ただ、主人公の感情の動きや彼氏との関係性は単調に感じてしまい、テンプレート通りのキャラクターに見えてしまった点がもったいない。ストーリーに奥行きを出すためにも、キャラクターの魅力を引き出す描き方を研究して欲しい。

おばけとごはん!
渚さえ
あらすじ高校生·赤根の元にやってきたのは、幽霊の晴助(ハレスケ)。美味しいご飯を食べられずに亡くなった晴介は、成仏するために「僕が満足するご飯を作って!」と赤根にお願いするが…。正反対の2人がご飯を介して心を通わせていく、ハートフルファンタジー。
作品講評真摯に題材に向き合う姿勢と純粋で素直なキャラクターに好感が持てた。ただ、晴介のバックボーンや個性を描き切れなかった点が非常に惜しい。ストーリーを丁寧に紡ぎ、上手くまとめる力はあるので、もう一歩踏み込んだキャラクターの作り方ができるようになれば、さらに読者を引き込む作品になるだろう。

先輩は明日卒業する
弥生一六
魄天星
梦路辿

第14回 MAGKAN(マグカン)漫画賞。
今回は銀賞1作品、銅賞1作品、編集長特別賞2作品、ノミネート3作品選出という実りある素晴らしい結果となりました。
ご応募いただいた皆様に心より感謝申し上げます。
なかでも『神の子羊』は秀逸。圧倒的な世界観やキャラクターの巧みな心情描写などが評価され、編集部員満場一致の銀賞受賞となった。前作からの成長が窺えることはもちろん、読み手を惹き込むようなセンスにもより一層の磨きがかかっていた。ただ、画面づくりについてはまだ淡白な印象も残るので黒と白、そして中間色の配分についても今後は意識を向けてほしい。
『一角獣』は銅賞受賞。想像上の生き物をモチーフとした独創的な世界観で描かれており、魅了された。作家のポテンシャルの高さが感じられる一方で、少しニッチな印象も残る。次回作は独自のセンスを生かしつつ、エンタメとして読者に届きやすいコンセプトづくりを試みてほしい。
『失敗作』は編集長特別賞受賞。いじめられっ子の少年と、魂を宿した絵画少女との絆の話。荒削りながらも、登場人物の感情描写には読み手に伝える工夫が感じられ好印象だった。ただ、ラストは消化不良の印象も否めないので、構成面の強化の為にもプロット段階で自身の作品を客観視する機会を設けてほしい。
同じく、編集長特別賞受賞の『勇者アルクの冒険』。高い画力で、テンポよく展開されたライトBL。いい意味でバカっぽいキャラクターがとても小気味良く、最後まで勢いで読んでしまった。今回のコンセプトは「勇者と魔王」だが、類型的な印象もあるので、読者を惹き込むテンションを保ちつつ、次回作は差別化を図れるようなモチーフで展開してみてほしい。
またノミネートされた3作品もとても伸び代があり期待大だった。
『箱の中』は、安定した作画、構成で読みやすかった。反面、印象に残りづらいので、読み手の五感に響く作品づくりの追求を。
『大好きでした』は、ダークな世界観とキャラクターデザインが◎。ただし、死神の役割を生かしきれていないので「契約」「対価」などの条件を組み込んでドラマを掘り下げてほしかった。
『おばけとごはん!』は、非常に丁寧で心温まる作品。ただ、幽霊に時代性を持たせつつも、特にストーリーに絡めていたわけではないのでもったいない。設定を生かす意識を持つことで作品の質がぐんと変わるはず。
次回は2022年・春(締切:5/31当日消印有効)。
優秀な作品は即掲載、関西の編集者が担当に付き、ともに連載獲得を目指すことができます。
また受賞に至らずとも可能性を感じる才能の原石には編集部から担当希望のご連絡を差し上げることも。
ここから将来、日本を代表する作家さんが誕生することを心から願って――皆様のご応募、心よりお待ちしております。