

月夜の光は鬼を斬る
青 出海
あらすじ夜鬼(やき)と呼ばれる怪物が現れる危険区域で、行方不明の妹を探す少年・結架(ゆか)。彼は夜鬼に対抗する特別な力“光”を宿していた。ひょんなことから夜鬼退治を専門とする集団・月兎(げっと)の世羽(よう)と出会い、行動をともにするのだが……。
作品講評安定感のある作画、読みやすい構成。特にクライマックスに至るまでのテンポと魅せ方が巧み。ただし題材に関しては読者の興味惹かれる武器として乏しい印象。キャラの魅力や、ケレン味ある設定など突出したものがないと、ただ“丁寧な作品”として終わってしまう。今後は読み手の心を動かすための作品作りに注力してほしい。

〇✕高校 人間生活部
荒谷夏来
あらすじクラスメイトからいじめを受けている高校生・掛谷(かけたに)。ある日、屋上に立つ彼の前に現れたのは死神とその仲間たち。彼らとの交流を通して、掛谷の心には変化が…。心温まる友情ファンタジー!
作品講評つらい目に遭い死を選んだ人間の魂を作り替える死神をはじめ、個性豊かなキャラクターたちがたくさん登場した本作。エンタメを意識し、読者を楽しませようとする姿勢がうかがえた。しかし、場面や視点の切り替わりが多く、まとまりきっていない印象も。作画や構成において、前回の受賞時から確実にレベルアップしているので、今作を超えられるよう、次回作に取り組んで欲しい。

ナイン
渡邊 曹
あらすじ記憶喪失の少女・ナインと、知能を有するウサギのぬいぐるみ・ヌル。彼女たちはヌルによく似たぬいぐるみを持つ謎の少女に追われ、命を狙われるのだったが…。これは9人の少女たちの生き残りをかけた戦いの序章に過ぎなかった――。
作品講評変身した少女たちの衣装デザインが可愛く、インパクトもあって素晴らしい。また、作画や構成に関しても変身後から筆が乗り、生き生きしていたので読んでいて心地よさを感じた。ただし、デッサンや仕上げに関しては不安定な面が残るのでもったいない。良くも悪くも作品に作家さんのテンションが伝わりすぎているように感じる。今後は絵も展開も、テンションもメリハリをつけられるように工夫してほしい。期待大。

宇宙人と出会った日
黒乙女
あらすじ研究所で警備員として働く主人公。ある夜、いつものように巡回していると、不審者(宇宙人)を発見し――!?
作品講評宇宙人のコロコロ変わる表情が可愛く、読み手の想像通りにおさまらないストーリー展開が良かった。ただ、テンポよく読むことができる一方で、主人公のバックボーンや宇宙人との関係性はやや単調に感じ、キャラクターを枠に嵌め込んでしまっている印象。ストーリーに奥行きと説得力を持たせるためにも、キャラクターの魅力を引き出す描き方を研究して欲しい。また、全体的に画力の向上が課題。デッサン力を磨いて、今後に期待したい。

勿忘-ワスレナ-
鷹咲
魄天星
梦路辿
Discrepancy
Krieg
BLACK UNDER THE HERO
木村來渡
なんでエルフが学校に?
和壁星治

第13回 MAGKAN(マグカン)漫画賞。今回はノミネート4作品選出という結果になりました。
ご応募いただいた皆様に心より感謝申し上げます。
『月夜の光は鬼を斬る』は、“太陽の子”と呼ばれる鬼を倒す特殊な力を持つ主人公と、行方不明の妹の絆を描いたファンタジー作品。展開としては「味方だと思ったキャラが実は敵」など、読み手を楽しませる良い裏切りが組み込まれていた。ただ工夫されている一方でどうしても類型的な印象があり心に刺さりきらない。展開の意外性だけでなく、それを効果的にするキャラクターづくりなどにも注力してみてほしい。
『ナイン』は、特殊な力を持った9人の少女たちに生き残りをかけた戦いのストーリー。
今回の読み切り作品はその壮大な物語のプロローグのような構成に仕上げられていた。題材の選定や、変身後の衣装、戦いの魅せ方などセンスが光るが、如何せん不安点な作画や構成がもったいない。キャラの説得力を生むためにも、基礎力の向上は今後の課題としてほしい。今後の成長が楽しみな作家さん。
『○×高校 人間生活部』は、いじめられっ子の高校生と死神、そしてその死神によって生み出された異形の仲間たちとの交流を描いたハートフルな作品。キメラのような造形のキャラクターがたくさん登場してヴィジュアル的にワクワクさせられた。ただし、彼らと主人公の絆が生まれるまでのドラマづくりが弱く、クライマックスで彼らが助けに来るシーンがうまく生きてこないように感じた。今後は、設定したテーマが生きる構成を改めて意識してみてほしい。
『宇宙人と出会った日』は、無気力な施設警備員と彼が夜間勤務中に出会った謎の生き物との交流を描いた作品。前半は可愛いキャラクターと少しシュールでほのぼのした世界観で繰り広げられていたが、後半に差し掛かると意外にもシリアスに展開に。予定調和で収めない作家の工夫やセンスが感じられた。しかしながら、画面づくりに関しては、味というより粗さが目立つので、細部にまで気持ちを込めて仕上げてほしい。
次回は2022年・冬(締切:2/28当日消印有効)。
優秀な作品は即掲載、関西の編集者が担当に付き、ともに連載獲得を目指すことができます。
また受賞に至らずとも可能性を感じる才能の原石には編集部から担当希望のご連絡を差し上げることも。
ここから将来、日本を代表する作家さんが誕生することを心から願って――皆様のご応募、心よりお待ちしております。