

マルは猫神さま
高宮くろか
あらすじ幼馴染みの愛猫が行方不明になった睦月は「失せ物が見つかる」と噂の神社を訪れる。藁にもすがる思いで願掛けをする彼の前に現れたのは、人間の子供の姿をした猫神さまで……。
作品講評安定感のある丁寧な作画が光る。キャラの表情も豊かでストーリーもコミカルに展開されている。反面、ドラマづくりに関しては想像の域を超えるものはなく、あっさり終わってしまったので残念。猫神さまに振り回されて一騒動起こるが、災い転じて幼馴染みとの恋に進展が…!?等の展開の起伏を用意してほしかった。今後はコンセプトを活かす内容づくりに期待。

蝶の庭
壱谷セン
あらすじ治癒魔法を使いこなせず、ある元教師の家を訪ねたゲイル。しかし、3日間で枯れた庭を元通りにする課題を出されてしまい───?
作品講評丁寧なペンタッチは前回と変わらず好感を持てた。少年の表情が豊かでキャラクターがイキイキしている。ただ、お話・演出が淡白な印象。魔法や背景の迫力にこだわりを持って、どんな演出が「カッコいい」かの意識を忘れずに。また、彼が成長するまでの過程がややあっさりしているので、物語のメリハリにも気を配ってみてほしい。

蒼い世界
鯱ゐ
あらすじ飼い猫のアオを捜して歩き回っていたクルトが見つけたのは、アオにそっくりな猫の人形を扱う不思議なお店だった…。動物と暮らす人に寄り添う、心温まるファンタジー。
作品講評冒頭から引き込まれるような描写、絵の説得力が素晴らしい。不思議なお店に出会ってから説明が一気に出てきてしまうので、どんな伝え方をすれば読者が読みやすいかをより意識して。後半のクルトの感情が溢れるシーンは、さらに盛り上がりを演出できれば尚良かった。今後に大いに期待したい。

BITE
コタツ
あらすじ突然現れたバケモノを倒したのは、10年間行方知れずだった大嫌いな兄だった。バケモノ退治に関わらせず、子ども扱いを続ける兄に腹を立てた剛至は、怪しげな刀をつい手にとってしまい…?
作品講評登場人物たちのキャラが分かりやすく魅力的で、冒頭から興味をひいた。ところどころ表情が固いので、瞳の形や顔の角度に変化をつけて。また、日常シーンやアクションもコマとコマの繋がりが不安定。人物の立ち位置に違和感がないか、カメラアングルが単調になっていないかを意識できれば、さらに良くなるだろう。

悪魔の殺し方
香冬
あらすじ悪魔に気に入られた殺人鬼。より美しく、より凄惨な死を求めるチェスターに、悪魔はある提案をする───。
作品講評若い男性の美しい表情から人外の猟奇的な顔まで幅広く描ける点が好印象。題材の割には小さくまとまってしまっているので、主人公の魅力を最大限生かすためのお話がほしかった。また、上下のアングルや引きのアングルが少ないため、メリハリをつけることでキャラクターや演出を際立たせることも意識してもらいたい。

いつかのふたり
雨中人
ヤンデレちゃんは間違っている
シバヤマユウキ
余命タイマー
波丘一兵衛
サルとイヌの捜査線
月野朋
魄天星
梦路辿

第10回 MAGKAN(マグカン)漫画賞。今回はノミネート5作品選出という結果になりました。
未だコロナ禍で予断を許さない状況が続いております。このような情勢下にも関わらず、作品をご応募いただいた皆様に心よりお礼申し上げます。
『マルは猫神さま』は、猫探しをする主人公と自由気ままな猫神さまによるドタバタコメディ。
キャラクターのデザインが可愛く、リアクションも豊かで最後まで楽しんで読めた。ただし「目新しさ」や「意外性」がなく類型的な印象が残る。物語の整合性をとることは重要だが、読者を惹き付ける要素についても是非追求してみてほしい。
『蝶の庭』は、治癒魔法が苦手な少年が引退した元教師に弟子入りをする話。
与えられた課題を通して、気づき、成長していく展開はドラマチックで読み応えを感じた。反面、魔法の描写や演出への注力は乏しく、ファンタジー作品としては物足りない印象。作画から真摯さが感じられるので、次は魅せる部分へ気持ちを向けてみてほしい。
『蒼い世界』は、悲しみを抱えた少年と人形店に飾られていた猫の人形に纏わるストーリー。
荒削りながらも緻密に描写された世界観に惹き込まれた。人々の暮らしが五感を通してひしひしと伝わる。一方で、情報過多である点が審査に影響してしまった。今後はプロット段階で精査を試み、読ませる工夫を追求してみてほしい。あえて出さない情報があるからこそ、主題が活きるはず。
『BITE』は、人の負の感情を餌にするバケモノ・隠人(オニ)を巡る兄弟の物語。
隠人(オニ)狩りの使命を父から受け継いだ兄と、そのお役目すら知らされぬまま過ごした主人公。兄弟の格差により生まれた葛藤や人の生死などが扱われる重い内容ではあるが、日常シーンをコミカルに描くことで、陰鬱な作品で留めない工夫が見事に施されている。ただ、画面構成やキャラクターの動きには固さが残るのでその点は今後の課題としてほしい。
『悪魔の殺し方』は、殺人の才能に優れた男と彼が呼び出した悪魔によるサスペンス作品。
題材の選定と展開・基礎力など前作からの飛躍的な成長が伺えノミネート&担当付きに。作家さんの新たな一面とその可能性が感じられる嬉しい機会となった。内容についても猟奇的な描写やクライマックスで迎える主人公の壮絶な最期など読み手を引き込む演出が光っていた。ただし、中盤以降は設定消化なきらいもあったので、悪魔の思惑や、BAD or HAPPY ENDの分岐点など伏線的な要素も組み込んでほしかった。
次回は2021年・春(締切:5/31当日消印有効)。
優秀な作品は即掲載、関西の編集者が担当に付き、ともに連載獲得を目指すことができます。また受賞に至らずとも可能性を感じる才能の原石には編集部から担当希望のご連絡を差し上げることも。ここから将来、日本を代表する作家さんが誕生することを心から願って――皆様のご応募、心よりお待ちしております。