関西にいる「シュッとした」人たちから「シュッとした」お話を聞きたくて始めた、MAGKANインタビューコーナー!
第六十七回は、
還暦を過ぎても「ごきげんな服」を楽しみ、SNSで発信している はる。さん にお話をうかがいました! ライフスタイルや洋服の楽しみ方について語っていただいたインタビューです。
「何歳になっても好きな服を着ているのが素敵」
──「61歳になっても赤いチェックのスカートを履きたいしジャージも着たいし流行りの韓国ブランドバッグも持ちたい」とたびたびSNSで話題になっていますね。
61歳になっても赤いチェックのスカート履きたいしジャージも着たいし流行りの韓国ブランドバッグも持ちたい🥳欲張りであれ pic.twitter.com/ro38esuG0O
— はる。 (@chikuchiku_1221) February 26, 2024
──取材されることも増え、先日出版された本でも紹介されていましたが、実際にファンの方が増えてきて感じておられることはありますか?
はる。(以下、H): フォローしてくださる方に20~30代の方がすごく多くて。それでたまに質問返しをすることがあるんですけど、みんなファッションのことですごく悩んでいることに驚きました。「30歳になったら何を着たらいいかわからない」とか「体型がぽっちゃりしてきたから好きな服が着られない」とか、「いい加減落ち着いた服を着てくれ、と彼氏に言われた」とか…。
──お悩み相談を受けることが多いんですね。SNSを始められる前は、自分の好きな服を着ることに若い人が悩んでいるイメージはありましたか?
H: なかったです! 若い人はいいなぁって逆に思っていました。子育てをしていた頃はママ友さんの中で浮かないようにすることを気にして、ちょっと抑え気味にリネンの服とかを着ていたんです。だから「若い頃は好きな服を着ていたんだけどなぁ」とか。
──「浮かないようにしよう」と思ったきっかけはあったんでしょうか?
H: 何か、何だろうなぁ、子どもたちが私服の小学校だったんですね。最初は私の好みでちょっと派手な服を着せていたんですけど、よそのお母さんから「なになにちゃんはいつも服が派手ね」と言われることがあったりして、「あ!」って。「学校で浮いてるのかな?」と思って。
──もしかして、と。
H: 「お友達に何か言われたりする?」って聞いたら、 「うーん、別に?」って子どもは言っていたんですけど。ちょっとしたことでいじめに繋がったらかわいそうかなと思って、あんまり派手な服を着せないようにして、私もナチュラル系の服を着るようになりました。
──そのまま丁寧な暮らし…パンを作ったり、お菓子を作ったりされていたんですよね。それは気を遣って、というよりも楽しくなってきたからですか?
H: そうなんですよ。専業主婦でしたし、何かを作ることが昔からずーっと好きだったので、天然酵母のパンを焼いてみたり、学生時代は大阪モード学園に通っていて洋裁もできたので、子どもの服を作ったりとか。
──素敵ですね! それはそれで楽しそうです。でも、子育てが落ち着かれてからは好きな服を好きに着て、発信するようになって…。
H: 「何歳になっても好きな服を着ているのが素敵」と言っていただいて。「はる。さんを見ていると元気になる」と言ってもらえるのがすごく嬉しいです。
──ちなみに、好きなお洋服を着て街を歩かれている時は視線を感じたりしますか?
H: もうそれは(笑) もちろん今日もですね。奈良の郊外に住んでいるんですけど、最寄り駅につくとまずそこで「ん?」って。「派手なおばちゃんがいるぞ」って感じで見られて。でも、アメリカ村とか、都心に近づくともう誰も見ないんですよ、私のこと。あと、初詣とかえべっさん(関西のお祭り)に行くと「ちょっと写真撮らせて~」と声をかけられます。
──街の空気によるんですね(笑)
H: 「派手やから見るよね、そりゃ!」と思っています(笑) まぁ見るって言っても、周りはちらっと見るだけでそんなに深くは考えてないと思うので。自信満々に着ています(笑)
こんなに派手な服を着ていたらお客様は話しかけにくいじゃないですか(笑)
──普段は書店員さんをされているそうですが、お仕事中も何かファッションで楽しまれていることはありますか?
H: いえ、そこはお客様が不快に思わないような服装でと思っているので、トレーナーとデニムに制服のエプロン、くらいです。本を傷つけないようにアクセサリーも外しますし。ファミリー層向けの本屋なので、こんなに派手な服を着ていたらお客様は話しかけにくいじゃないですか(笑) 「ちょっと子どもに図鑑を探してるんですけど~」とは、なかなか(笑)
──書店員にはどういう経緯でなられたんですか?
H: 一番下の子の子育てから手が離れて、ちょっとパートでもしたいなと思っていた頃、今働いているところとは違うんですけど、家の近所に本屋さんができたんですよ。それで面接を受けてみたら、店長さんがサブカルコミックスが大好きな方で。私も大好きだから、「普段どんなところで本を買うんですか?」「ヴィレッジヴァンガードです」と答えたら、どんな本が好きなのか盛り上がってその場で「おいでよ」って(笑)
──即採用だったんですね(笑) 書店員以外に違うお仕事はされていたんですか?
H: いえ、専門学校を卒業して結婚してからは働いていなくて、ずっと子育てしていました。書店員を始めてからは16年くらいかな? あとは3~4年前に、「TENGA」っていうアダルトグッズの会社が作った、女性向けのアダルトグッズのお店でも働いていました。
──え!?
H: 友達にレズビアンの方がいまして、その方がアダルトグッズの会社で商品の企画開発されているんですけど、「はる。さん、アダルトグッズに興味ある?」って聞かれたんです。「あるある! あるよ」って言ったら、「働かへん? 週1でいいから!」って。明るく性を語れる人がほしかったらしくて。3年くらい働いていたんですけど、すごく楽しかったです。カップルの方とか、お一人で来られた方のお悩み相談を受けたり、いろいろと話していました。
──もともと皆さんと性のことをオープンに話されていたんですか?
H: そうなんですよ。その友達とはレズビアンバーに一緒に呑みに行ったりしていて、そこでいろんな話をバーッとする中で、「レズビアン同士っておもちゃは使うの?」とか、そんな話もしていました。アダルトグッズとかフェムテック(女性が抱える健康の課題を解決したりサポートしたりするもの)関係とかのお話はどこかでできたらいいなとも思っています。
──そんな風にいろんなところで繋がりを作っていらっしゃるので、お友達が多いイメージがあるのですが、年代も幅広いんでしょうか?
H: そうですね。一番若い人だと20歳くらい? 職場だと年上の友達がいますね。舞台やアイドルのライブに行ったり、仕事関係で増えていっています。
普通のアイドルオタクですね
──舞台やアイドルもお好きなんですね。もともとアイドルオタクなんでしょうか?
H: もうライトに、ほんまにお茶の間で観て「カッコいい~(拍手)」って観ていたり、たまーにライブが当たって行ったりとか。去年、「SnowMan」のライブで福岡に行った時は、私の推しが阿部ちゃんなんで、事前にメンバーカラーの緑の服を探しに行ったり。その程度です(笑)
──いつ頃からアイドルがお好きなんですか?
H: 10年くらい前、今の本屋で働きだした時に、ジャニオタの子が何人かいたんですよ。その子たちに「アイドル好きじゃないんですか?」って聞かれて「全然興味ない」って答えていて。私は舞台が好きだったんで、野田秀樹さんの舞台とかばっかり観に行っていたんです。そしたら、「いやぜひ観てくださいよ!」って「嵐」のDVDをいくつか貸してくれて。暇な時に観てみたら「ええっ! いいやんアイドル…!」と思って(笑)
──布教が大成功していますね(笑)
H: 「嵐」のファンクラブに入って、何回かライブにも行きました。ふふふ(笑)
──舞台はもっと前から行かれていたんですか?
H: 若い時はね、中島らもさんの舞台が好きで。劇団「笑殺軍団リリパットアーミー」とか、升毅さんとかがやっていた劇団「売名行為」とかも。もう私サブカル女やったんで(笑) 扇町にあった「扇町ミュージアムスクエア」へ通っていて。まだ若かりし頃の、新人の橋本じゅんも知ってるし。寺山修司も好きだったし。関西の舞台で観ていたので、テレビにその頃の俳優が出てくると「知ってんで、昔から」と思ったりしています(笑)
──何かひとつの劇団を追いかける、というよりもいろんな舞台を観に行っていたんですね。
H: 「ダムタイプ」ってご存知ですか? 京都を拠点にいろんな芸術系の大学の仲間で作ったパフォーマンス集団がいて、日本もそうですけど特にドイツですごい人気があったんですけど。そういうパフォーマンスの作品も観に行っていました。
夜行バスで行って、夜行バスで帰ってきたり
──エンタメでもいろんなものを観てこられたんですね。今はアイドルがメインですか?
H: 3年ぐらい前から大衆演劇にハマっていて…。大衆演劇ってすっごいおもしろくって! それまでは大衆演劇のことを「おばさまに流し目をしておひねりをもらっている人たち」と勝手に色眼鏡で見ていたんですけど、全然違っていて。友達から「すごくオススメの大衆演劇の劇団があるから観に行こ」って誘われて行ってみたらもうめちゃくちゃカッコよかったんですよ。「劇団美山」って劇団なんですけど、今はそこをちょっと追いかけています。
──大衆演劇も全国でやっているんでしょうか? 近くで公演がある時に行ったり?
H: 大衆演劇は全国津々浦々、毎月毎月場所を変えてやっていますよ。行ける範囲で行ってるんですけど、遠くても全然行きます。夜行バスで行って、夜行バスで帰ってきたりとか。福岡くらいなら日帰りできるんで、遠征とは言えないですし。
──えっ! 夜行バス、しんどくないですか?
H: 夜行バスでしんどくならないように、家で座椅子で寝るようにして、自主練していました(笑)
──すごい…!(笑) そうやっていろんなところに行かれていると思うんですが、関西で一番好きな街はどこですか?
H: どこが好きって言われたら、やっぱりアメリカ村界隈ですね。お友達のお店が何軒もあったりしますし。今日の服も全部、アメリカ村にある「MAISON SPECIAL」っていうお店で買った服なんです。雨が降っていたので、ブルーにしようと思って。
──色合いがとっても素敵です! お洋服を買う時の決め手はありますか?
H: 152cmで背が低いので、バランスがとれる服ですね。どんなにデザインが好きでも、バランスが悪くなる服は買わないんです。試着は絶対します。
──あの…私はいまだに試着室で何か恥ずかしさがあって、着替えている時に焦ってすごく汗をかくんですけど、そういうことはないですか…?
H: ああ~わかる! 私もですよ。今でも「暑い! 暑い!」ってなって。「一番広い試着室に通して」って言いますもん(笑) 特に「MAISON SPECIAL」の服はどっちが前かわからない服が多くて、「どっちが前やろ…!?」と思って汗がダーッと出てくる(笑) もう馴染みの店員さんがいるから「これ、どっちが前!?」って聞けますけど(笑)
──はる。さんでも焦るならちょっと安心しました…(笑)
H: 焦ります。でも試着は絶対します。お店に一時間くらいはいますね。
同年代に向けた青文字系のファッション誌をもう一回作りたい
──ずっといろんなことをされているとは思うんですが、さらに挑戦したいことはありますか?
H: 私、80年代カルチャーが好きで。その頃に青春時代を過ごしていたので、あの頃の青文字系のファッション誌をもう一回作りたいです。今は紙媒体の雑誌で、青文字系ってないじゃないですか。ああいうのを作ったら、もしかしたら私と同年代の人たちがおもしろがってくれるんじゃないかなって。「80年代カルチャーが好きだった若者が、60代になってシニア世代になりました。でも、シニア世代ももっとおもしろおかしく遊べるよ!」みたいな。
──今以上にいろんな人を元気づけるきっかけになりそうですね。
H: あともうひとつは、私、占い師になりたいんです。
──占い師!
H: 占いの勉強をしたいんですよー! お悩み相談を受けることが本当に多いんで、それを裏付けるために手相とかを見れたらおもしろいかなあって。説得力をつけるためにも、ちょっとやってみたいです!
Q.「シュッとしてるもの」って何だと思いますか?
H: 私、関西のおばちゃんなんで。関西のおばちゃんって若いイケメンを見たら「お兄ちゃんシュッとしてんな!」って言うじゃないですか。もうそれしか思い浮かばなかったんですけど(笑) それ以外なら、一週間くらい前に3匹飼っている猫のうち、1匹が亡くなったんですよ。19歳と10カ月だったんですけど、その死に際が見事で。もう見送った家族みんなで拍手喝采したくらい。本当に見事だったので、あの子に「シュッとしてたよ」って言ってあげたいです。
──それはどんな亡くなり方を…。
H: 腎不全だったので、病院の先生からは「ここまで数値が悪かったらたぶん死ぬ一週間前くらいから飲まず食わずになって、寝たきりになってしまうと思います」って言われていたんですけど、死ぬ前日までマグロを食べていて(笑) 私とか主人とか、娘にもすごい甘えて、「抱っこして! 抱っこして!」って甘えて甘えて甘えて、明け方に娘が抱っこしていたら、亡くなったんです。だからなんか、シュッとしてました。ふふふ。
──家族に一切の心配をかけずに…。
H: そうですね。本当に命を使い切ったって感じでした。
Q.自分の名前で缶詰を出すとしたら、中に何を詰めますか?
H: もうこれは私のパワーです! 私のパワーを缶詰にして、ちょっと弱っている人がそれを買って開けた瞬間にちょっと元気になってくれるような。
──ものすごく元気をもらえそうです!
はる。
61歳、大阪出身、奈良在住。自身のファッションをSNSに投稿し、年齢に関わらず自分の好きな着こなしを楽しむ人としてファンを集めている。好きな漫画は『ブラック・ジャック』、『マカロニほうれん荘』(ともに秋田書店刊)、『バカ姉弟』、『さくらの唄』(ともに講談社刊)、『女の園の星』(祥伝社刊)等。
撮影:青谷建
撮影場所:「iiie」( Instagram )