関西にいる「シュッとした」人たちから「シュッとした」お話を聞きたくて始めた、MAGKANインタビューコーナー!
第二十三回は、
抹茶スイーツが好きすぎて福岡から京都・宇治に移住し、Instagramに抹茶スイーツを紹介し続けている、 抹茶きな子さん にお話をうかがいました!尋常ではない抹茶愛を語っていただいたインタビューです。
「抹茶きな子」さんって?
7,000を超える抹茶スイーツを食べ、紹介するインスタグラマー。自宅のインテリアも緑色だらけという徹底ぶりから、テレビ『マツコの知らない世界』(TBSテレビ)、『#渡辺直美のヤバスタグラム』(日本テレビ)でも紹介された。
原材料に「抹茶」と書いてあっても、抹茶が入っているとは限らない
──どうしてこんなに抹茶スイーツを追い求めているんですか?
抹茶きな子(以下、M): 実家が福岡県なんですが、子供の頃、おばあちゃんちではおやつの時間にお抹茶が出ていたんですよ。チョコレートケーキとか、普通のお菓子と一緒に、点てたお抹茶が。中学生くらいの頃から、お抹茶っておいしいなと思っていました。でも、市販の抹茶味のお菓子はあんまり好きじゃなかったんです。おばあちゃんちで飲んでるお抹茶とは味が全然違うから。そう思っていたんですけど、地元で出会った抹茶クリームの大福が、おばあちゃんちのお抹茶のようにめちゃくちゃおいしいことを知って、他にも本格的な抹茶の味がするスイーツがないか、探すようになりました。
──同じ”抹茶”スイーツでも、そんなに味が違うんですか?
M: 本来の抹茶の味がするものと、抹茶味は違いますね。スーパーやコンビニで買える市販のお菓子だと、抹茶ではなく加工用抹茶と香料が使われているので、香りや味が本来の抹茶とは異なってしまうんです。抹茶はどうしてもお値段がするものなので、安価に作るのは難しくて…。
──加工用抹茶?
M: 商品の原材料に「抹茶」と書いてあっても、抹茶が入っているとは限らないんです。それが加工用抹茶で、一番安いものだと緑茶に近いものになります。原材料に抹茶と書いてもよしとされているボーダーラインが低いので、「緑であればいい」くらいの状態になるんですよ。お寿司屋さんの緑茶の粉でも、抹茶と言えば抹茶になっちゃうんだろうな。
──知りませんでした!
M: そういった、ホワイトチョコレートに香料がついた抹茶味のお菓子を食べて、おいしいって気に入っている子や、嫌いになってしまっている子が周りに多くいたんですよね。味が違うことを知っている分、それがもったいないと思えてしまって。お抹茶の味を最大限に生かした、おいしい抹茶スイーツをもっといろんな人に知ってもらいたいと思うようになりました。「抹茶のお菓子が好きなら、一緒に抹茶のことを知ろうよ!」ってくらいに(笑) だから、この香料の話を『マツコの知らない世界』でお話ししたあと、10代や20代の方から「知らなかった」と反響があったのは嬉しかったです。同世代の友人には理解してもらえないことも多くて、自分の主観の押し付けになってないかなって不安な部分もあったので。
「自分にとって抹茶って何だろう」と向き合った
──抹茶をお菓子として流通させるのって、難しいんですね。
M: 今は宇治でお茶関係の仕事をしているんですが、働き始めてから、なぜ抹茶がこんなに高いのか分かるようになりました。抹茶って、蛍光灯の明かりが当たるだけでも変色して風味が変わるくらい繊細なので、扱い方が本当に難しくて。スイーツにするのも大変なんです。そんな抹茶スイーツの作り方を知っていくと、いろんな発見がありますね。でも最近は、加工用抹茶でも香料を抑えて本来の味を再現しようとするメーカーさんも出てきていて、その変化を食べて知るのも楽しいです!
──抹茶に対する想いが深い…。
M: 大学が芸術大学で、学校の制作課題でも「本来の抹茶の味がするスイーツを知ってもらいたい」をテーマにしていたんです。「自分にとって抹茶って何だろう」って抹茶と向き合う時間が多すぎました…。
──それは難しい問いですね。
M: 答えは出なかったです(笑) 「流れる血」までいっちゃうと変なのかな、とは思っていたんですけど。本当は趣味に留めたかったのに、大学の制作テーマをそれ一本に絞っちゃったばっかりに悩んでしまって…。まぁ、思い詰めたら「いいや、抹茶食べよう」って放棄していましたけど(笑)
どうしても京都に住みたくなっちゃって。
──宇治に住みだしたのは大学生の時からですか?
M: 地元で私立の女子大に通っていたんですけど、そこを辞めて、京都の芸術大学に入り直しました。
──入り直した!?
M: その頃は特にやりたいことも目指していることもなくて、母の勧めで女子高、女子大に行かせてもらっていたんです。でもある時、京都の大学に進学した高校の友人の家に遊びに行くことがあって。それで京都を歩いてみたら「自分の好きな抹茶スイーツがこんなにたくさんある! しかも、自分の求める味に近いものだ!」と気づいたんですよ。それに、抹茶スイーツを食べ続けて、宇治の抹茶とか八女の抹茶とか使われている抹茶がそれぞれ違って、しかも産地によってちゃんと味が違うんだな、と感じ始めていたので、その産地に行ってみるためにも、どうしても京都に住みたくなっちゃって。「いつかは宇治の茶畑に住む!」という勢いで親を説得して、女子大を辞め、芸大に一から入り直しました。
──どのように説得されたんですか?
M: 何を言ったのか全然覚えてないんです…。本当にその時の勢いってありますよね。今だったら絶対説得できないって思うんですけど(笑) 若かったのか…。最後、母は諦めていた感じでした(笑) そこまで言うなら好きにしろって感じで。
──抹茶のことは話されたんですか?
M: 一切言わず(笑)、「やりたいことができたよ、この大学で勉強したいんだよ」と言っていました。福岡では、「資格をとらないとダメ」と言われていたので、保育士になろうとして女子大に通っていたんです。でも、実は絵や漫画を描くのが好きで。小学校の時に「将来漫画家になる!」って言うくらい。好きな漫画にも芸大の話が出てきていたし、素敵な世界に見えて、興味はありました。それで、京都の芸大には子どもと芸術を一緒に勉強できる学科があったので、そこをごり押しして…。
──親御さんも、今はかなり驚かれているのでは?
M: 母も父も、抹茶が好きということしか知らなくて、私が京都の大学で何をしているのか知らなかったと思います。食べたものをSNSにあげてるよっていうのは話していたんですけど。それを、母の知人とかに「あなたの娘さん、すごいね」と言われて驚いたらしくって(笑) テレビに出演したり、取材を受けたりするようになってから、「人とは違う子なのね」って言われました(笑) やりたいことを受け入れてくれたことには、感謝しかないです。
最初は抹茶の粉のアップとか、抹茶クリームのアップとか
──SNSで抹茶スイーツを紹介するようになったのは、京都に住んでからですか?
M: いえ、高校生の時からです。Twitterに載せていたんですけど、私が抹茶のことしか呟かないから、高校の友達に申し訳ないなと思って、抹茶用のアカウントを作ったのが始まりでした。それでずっとTwitterに投稿していたんですが、写真が好きだったのでだんだんInstagramに…。自己満で始めたものだったので、最初は抹茶の粉のアップとか、抹茶クリームのアップとか、好きなところしか載せなかったんですよ。スイーツの素材の質感が好きで。クリームの流れる感じとか、粉の散っているところとか。これは自分の写真を印刷して、好きな部分だけ切り取って厚紙に貼り付けたものなんですけど…こういうもので部屋を埋め尽くしたい…。
M: それが、SNSで「おいしそうですね」「それはお店どこですか?」とコメントをくださる方々が出てきてから、ちゃんとスイーツを出しているお店のことを知ろうと思うようになりました。このお店では、この素材にこだわっていているんだな、とかを知っていくのも楽しくなったので、いいきっかけでしたね。写真の撮り方も少し変わりましたし。あとは、ノートも書いています。
──こんなにたくさん!
M: これで5年分ですね。芸大に入ってから始めたので、制作のことやアイディアも書いているので、ごちゃまぜなんですけど…。撮った写真を貼ったり、お店のフライヤーを貼ったりして、自分で見て楽しめるように、食べたスイーツのことを書いています。でも、自分の思ったことはSNSじゃなくてノートに書くので、見られたら恥ずかしいところも多いです。『マツコの知らない世界』であんなにピックアップされるとは思いませんでした…(笑)
「Four Green Leaves ITO EN」さんのジェラートがすごかった
──いろんな抹茶スイーツを食べてこられたと思いますが、ここ最近での一番は何でしたか?
M: うーん、パフェならここ、あんみつならここ、っていうイチオシはあるんですけど、一番はその時その時によって全然違って…。あっ、でも、関西に絞るなら、大丸心斎橋店にある「Four Green Leaves ITO EN」さんのジェラートがすごかったんですよ! くらっとくるぐらい、抹茶が濃くて、衝撃的でしたね。ここまで来たか…くらいの。
──手土産にもオススメのものはありますか?
M: 最近おいしいなって思ったのは、「マールブランシュ」さんの「生茶の菓」です。ガトーショコラみたいな感じで、すごくおいしかったです。自分でひと箱買って食べちゃうくらい。お抹茶の香りもちゃんとして、口の中に濃厚な苦渋い味も若干残るので「あ、好き!」と思って(笑) 生チョコに近い食感で、口に入れたらチョコみたいに溶けるんですけど、けっこうずっしりしているから一つでも満足感がしっかりあります。
M: 他にも常温のお菓子だと、「丸久小山園」さんと「中村藤吉本店」さんのフィナンシェ。抹茶が濃くておいしかったです。やっぱりお茶屋さんがこだわって出しているものっておいしいな、と再確認しました。しかも、それぞれ使っているお抹茶の種類が違っていて、その違いがしっかりわかるんですよ。それもおもしろくって、お気に入りです。
──お抹茶スイーツだけでなく、抹茶色のアイテムもたくさん集められているとか…。
M: そうなんです。お気に入りは自分の家のカーテン。ここまでドンピシャの色に出会えたのが感動で。ネットで見つけたんですけど、探すのが大変でしたね…。家具や家電は実際の色と写真の色が全然違うので、大体疑って見ているんですけど、これは写真どおり、すごく綺麗な色でした。他の抹茶色のアイテムともちゃんと合いましたし! 緑は緑でも、全然違う緑色を合わせると、「うわっ」となっちゃう時があるんですよね。
──他にもいろんな抹茶色アイテムが。持ってきていただいてありがとうございます。
M: 数がこれだけで申し訳ないです…。いろいろあるんですけど…、このリュックも好きなんです。チャックのところまで緑色なのが嬉しくって。スターバックスのタンブラーもお気に入りです。どこで買ったのか全然覚えてないんですけど、集まっていくと不思議ですよね。
今のうちにできることは全部やってみたい
──どうやって気になる抹茶スイーツを探しているんですか?
M: 雑誌もSNSも、いろんなものから探しています。最近はSNSでお店の外観やメニューを写真でパッと見られるので、調べるのがすごく楽になりましたね。HPがなくて、Instagramだけのお店も多いので、定休日を知るためにもInstagramもチェックするようにしないとダメなんだって感じています。「HPは営業中なのに、Instagramは今日が定休日!? えーっ!?」となったこともありました(笑) あとは雑誌もよく読んでいて、わーっと本屋さんに行って、わーっと雑誌コーナーを見て、「あ、これ好き」と思ったものを買って家で調べて…っていうのも多いです。ただ、雑誌を見ていても「あ、行った、行った、ここも行っちゃった…!」ということが多くて(笑) それでも時々すごい穴場が見つかるので、手放せません。
──お店をどんどん制覇しているんですね…!
M: お休みの日は基本、抹茶スイーツを求めて出歩いていますね。家でじっとしていられないので、休日に行くお店を一軒か二軒か必ず決めています。掃除も洗濯もしないといけない日は、早起きして全部済ませて「さ、出るぞ!」という感じです(笑) あと、並んだり、混んだりするのも嫌なので、なるべく朝から動いて午前中に抹茶スイーツを食べて、お昼やお茶の時間になる頃には、決めていたお店で食べ終えているようにしています。…でも行き当たりばったりですね。気になるお店を見つけたらすぐ入るし、気になる抹茶色アイテムを見つけたらすぐ行くし、本当に衝動で動いています(笑)
──これから新たにやっていきたいことはありますか?
M: 自分で何か稼げる手段が見つかったら、いろんなところに引っ越ししそうです(笑) お抹茶の産地が好きで、その茶処でお抹茶を飲んだり食べたりしたいから、茶処へ気軽に行けるところに住みたいとは思っています。それがたとえ海外だったとしても。
──海外だったとしても!?
M: 何か好きなことができるなら、どこでもいいんです。京都でやりたいことが尽きたら、抹茶巡りの放浪の旅をしてもいいし、いっそ北海道で抹茶のお店を開いてもいいし、知らない土地で知らないお抹茶に出会うのも楽しいし…。京都に行こうって決めて、大学を辞めたのをきっかけに、「本当に行きたいと思ったら、そう思った時に行こう」と思うようになったんですよね。厳しい親でしたし、大学を辞めるなんて世間的にも少し外れた道じゃないかと最初は思っていたんですけど。でも、京都に来て別の大学に入り直した、この選択を後悔しなかったので、だったら、これからも今のうちにできることは全部やってみたい、と。北海道でお寿司を食べたいと思ったら、翌週には北海道に行くとか(笑) 何でもアクティブにやろうと思っています。だから、本当にタイミングですね。縁があればその時に行くし、突然興味をひくものに出会ったらもちろん飛びつくし。今は抹茶スイーツがすごく好きで食べ歩いていますけど、色に関わることとか、洋服や本、写真とかの仕事をしませんか、と言われてもご縁があったらやってみたいですし。”今したいこと”をやっていきたいです。
Q.「シュッとしてるもの」って何だと思いますか?
M: 「シュッとしてる」は私…聞いたことがなくて…! 何だろうと思いました(笑)
──すみません、方言なんです。
M: そうなんですね! 聞いた時に就活生のリクルートスーツのようなイメージが浮かんだくらいでした(笑)
Q.自分の名前で缶詰を出すとしたら、中に何を詰めますか?
M: 「抹茶きな子」ってつくんで…本当お抹茶そのまんまの…(笑) 産地をこだわるとしたら、宇治産と八女産の抹茶を半々にして入れるとか、パッと見てわかるくらい、高価な抹茶と一番安価な抹茶を一緒に入れてみたいです(笑) 注釈は何もつけずに、開けたらびっくりしてもらえるような。
抹茶きな子
福岡県出身。高校生の頃からSNSに抹茶スイーツの写真の掲載を始め、京都・宇治に移住。緑一色のInstagramが話題になり、現在はお茶関係の仕事に就いている。好きな漫画は『3月のライオン』(白泉社刊)。