関西にいる「シュッとした」人たちから「シュッとした」お話を聞きたくて始めた、MAGKANインタビューコーナー!
第三十七回は、
大阪出身、 シンガーソングライターのMiyuuさん にお話をうかがいました!今の姿からは想像できない高校時代のお話や、10月から始めた30日間の車中泊企画について語っていただいたインタビューです。
「Miyuu」さんって?
京都のお寺や神社でMaroon 5「Maps」、Bruno Mars「Just the Way You Are」などをギターで弾き語りしている動画をYouTubeで配信したことで注目を集め、「avex×UUUM YouTuber女子オーディション」を経てデビューを果たした。10月から30日間、車中泊で日本各地を回り、書籍と音楽を作るプロジェクトを実施していた。
高校時代は体重が65kgくらいあって、髪の毛も刈り上げてめちゃくちゃ短くしてて
──大阪府出身なんですね。昔からずっとギターを弾いてらっしゃったんですか?
Miyuu(以下、M): そうですね。中学生くらいの頃から弾いていて。実家が吹田市なんですけど、そこから通っていた高校が箕面にあるので、「学校サボろっかな」って時は自転車で箕面の滝に行ったり、千中(千里中央)に行ったりして、高校生の時はそこでギターを夕方までよく弾いてました。当時は体重が65kgくらいあって、髪の毛も刈り上げてめちゃくちゃ短くしてて、学校にほとんど行ってなかったんです。
──え? えっ!? 今と見た目が全然違いますね!?
M: そうですね。たぶん。あの頃、すごい好きなバンドがあって…「MY CHEMICAL ROMANCE」っていうアメリカのロックバンドだったんですけど。「そのボーカルの人になりたい」っていう憧れがあったんです。それで、「全部真似してみよ」と思って。真似したらその憧れの人になれると思ったんです。
──「真似したら憧れの人になれる」…?
M: その人のドキュメンタリーも音楽も全部観たり聴いたりしてたら、「この人は疎外感みたいなものをエネルギーにして音楽をしているんだ」みたいに受け取ったんですよね。だから、一人になって反発することが大事なんだと思って、学校にも行かずにあんまり人と話さないようにして。全然お風呂に入らず、汚い見た目のままでいるところも、もうめっちゃカッコいいなと思っちゃって、お風呂に入らないようになって。あとは、アメリカっぽいご飯…ピザとかホットドッグとかを食べてたら、こんな人になれるんかな、とか(笑) それで、刈り上げた短髪にして、太っていったんですよ。
──予想外のお話です。
M: 高校生の時にそんな見た目だったから、周りも「え、何あの人」ってなるじゃないですか。しかも学校に行っても、誰とも言葉を交わさずに一日を終えたりしちゃってたので、自然と学校との距離ができました。周りからちょっと距離を置いたほうが憧れの人に近づけるって思ってたんです(笑) そんな高校生活の中で「MY CHEMICAL ROMANCE」の曲をずっと聴いて、自分でアレンジして歌ったりするのが唯一楽しい時間でした。だから、この真似した時間がなかったら、学校が普通に楽しくて音楽をしてなかったと思います。
もう本当に「私はその人になれる」って何でかわからないけど思っちゃってて…(笑)
──いつ、その真似をやめようと思ったんですか?
M: アメリカに行こうと思って、高2の時に短期留学に行ったのがきっかけです。それでもう、普通に考えたらわかるんですけど、日本人なので、アメリカ人としてアメリカに馴染んで過ごすことってできないじゃないですか? でも日本にいる間はそんなことに全然気づいてなくて、アメリカに行ってからだんだん「あ、あの人になられへんねんな」って気づいたんです(笑)
──そこまで本気で「ボーカルの人に自分はなれる」と…。
M: あ~、あの、もう本当に「私はその人になれる」って何でかわからないけど思っちゃってて…(笑) そもそも女だし。ボーカルの人は男なのに。それでようやく、「真似してもその人になられへんから、もういいわ、もう普通にみんながやってるように生きていこ」と思って。
──実は性別を超えようとしていたんですね!?
M: そこから、日本に帰るタイミングで、みんなの意見を取り入れて王道で生きていくことにして、エクステとスカートを買ったんです。お店で、私が「うわ、こんなん絶対嫌や!」と思う服をとりあえず買って(笑) そんな服装で帰ったんですよ、日本に。そしたらすごい喜んでくれて(笑)
──喜んでくれた(笑)
M: 「すごい素敵になって帰ってきてくれた!」「アメリカに行かせてよかった!」みたいなことをみんなに言われて。「あっ、これが求められていることか」と思ったんです。
──それは…嬉しかったんですか?
M: いや、だいぶひねくれてたので、「あ~、みんなこういうのが好きなんや~」「好きなんやったら、やったるわ」と思ってました(笑) 疲れてたのかもしれないです。「こうしいや、ああしいや」と言われても嫌だ嫌だって返すのって、エネルギー使うじゃないですか。でも、言われたことに従ってたらみんなが「かわいい~」とかすごく言ってくれるから、反発していた時よりも楽で。それなら、別にやりたいこともないし楽でいいやって。
──「憧れの人になりたい」一心だったんですもんね。
M: 大学もずっと行きたくないと思ってたんですけど、たぶん大学に行けばみんな喜ぶだろうし、サークルに入って楽しい日々を過ごして、就職すれば、まぁ、みんなと同じだし。そう考えてから急激に元通りになったっていうか…身体も痩せて。 みんなに馴染もうと思ったけど、高校では手遅れで馴染めませんでした(笑)
納得しないと行動できない
──そうやって気持ちをシフトチェンジできたのがすごいですね…。
M: シフトチェンジしたっていうよりは、「もう何でもいいや~」みたいな感じでした。体重もそうだし、本当になれると思っちゃってたところが、今思えばすごいヤバいことだなって思うんですけど(笑) そんな風に思ってたのに、アメリカでそういう人たちのところに入っていこうと思っても、入っていけない自分がいたんですよね。言葉だけじゃなくてそもそもが違うから。なんか…「自分って何なんやろ」って思いました。日本の高校にも馴染めないし、どうしたらいいんだろって。ちょっと寂しくなっちゃったのかもしれません。
──アメリカに行ってなかったら、今も続いていたかもしれないってことですね。
M: 続いてたかもしれないです。ただ、周りにはもうめちゃくちゃ申し訳なかった(笑) 一応アルバイトしてお金の用意はしてましたけど、留学に行くのって親がいいよって言ってくれないとダメな年齢だったと思いますし、大学だって、行かせてもらえること自体がありがたいのに…。なのに、「ハイハイ、お前らそれで喜ぶんやろ」みたいなスタンスはヤバいなって振り返ってみると思いますね…。
──今でもその時の精神が残ってるなって感じる瞬間はありますか?
M: ありますね~。なんか、納得しないと行動できないんですよ。何事にも理由があると思っていて。その理由を理解してから自分がどう動くか、を大事にしてるんですけど。理解してないのに行動することに対して「アホやな」って思っちゃう、頑固な自分が昔からずーっといるなあ、と感じてます。でも、最近は理解する前にまずはトライしてみるやり方をできるようになれたらいいなって思っていて。それができたらもうちょっと自分の幅が広がるのに、まだそれを否定しちゃう自分がいます。
──そういう風に考えられるようになったのは、学生時代を経て、音楽を仕事にして、いろんな経験をされてきたからでしょうか。
M: ですかね(笑) 音楽していていろんな人に出会う中で、苦手な人がいても「よく考えたらめっちゃ自分に似てるな、傍から見たら自分も同じようにそう思われているかも」と気づいたり、予算とか、力がなくて難しいことでも、私がやりたいと言ったら「一緒にやろうよ」と言ってくれる人は、私にどういう魅力を感じてくれてるんだろうと考えるようになったりして…。そこから、私は相手にどういう魅力を感じているのかも考えて、逆に自分の魅力はこういうところなのかな、とか、自分のことを人に気づかせてもらってて。音楽活動を始めて、今は「自分のここをもうちょっとアップデートしてみよう」っていうトライがすごく楽しくなっています。
──高校時代の自分に、今だから言いたいことってありますか?
M: 「学校だけにしか世界がないと思ってるかもしれないけど、そんなことないんやで」っていうのをあの時の自分に言いたいなって思います。あの頃の私はめちゃくちゃ音楽に支えられていて、音楽を聴いて、弾いてるのが一番、唯一楽しい時間だったんですけど、どうしても学校っていう縛りを感じて、そこにしか世界がないと感じちゃってて。でも、逃げる場所は本当はいろいろあるから、音楽のほうにもさらに世界があって、もっと踏み込んでトライしてみたらいいよって、伝えたいですね。
そんなこと言いながら今まで免許を持っていなくて(笑)
──10月はプロジェクトの一環で、30日間車中泊をされていたんですよね。
M: はい! 小学校からの友人二人をつれて、キャンピングカーで日本各地を回りながら自然の中でレコーディングをしたり、旅先で出会った人にインタビューをして、その内容をまとめたものと音楽をセットにした本を出したいと思っています。
──どうして車中泊を選ばれたんですか?
M: お父さんがすごく車が好きで、移動手段が車しかないくらい、小さい頃から私もずっと車に乗ってたんです。電車とかは全然使ってなくて。時刻表に縛られなくていい、車の自由度がいいなと思って、車で生活したいと思うようになっていったんです。旅行するのも好きだから、四年前くらいからずっと車に住みたいって言ってたんですよ。
──じゃあ旅行をするのも車だったんですか?
M: 大学生の時は夜行バスを予約して、目的もなく一人で九州に行ったりしていました。夜行バスってすごいですよね、寝てたら目的地にたどり着くんですよ! でも、そんなこと言いながら今まで免許を持っていなくて(笑)
──車に住みたいくらいなのに!?(笑)
M: めっちゃ興味があったんですけど、その…夢ってすごい遠くに感じちゃうことってあるじゃないですか。私は車に住みたいって言いすぎてて、幻みたいに思ってずっと日々過ごしてしまっていたんです。それで、コロナ禍で家にいる時間が増えた時に、「自分がしたいことをやっていかないと、いつ死ぬかわからへんのやから早よやらな」と思って。その第一歩として、免許をこの6月にとりました。
──めちゃくちゃ最近ですね!
M: 本当はMTをとりたかったんですけど…。免許をとる前に、このプロジェクトをやるっていうのは決めてたから、万が一ズレたらヤバいと思ってとりあえずATでとっています(笑)
──車中泊ってどういうところが楽しいですか?
M: 自分の部屋がそのまま移動してるっていう感じがいいなって思います。本当にノープランでも、その時自分が「今日はここに留まりたい」と思ったら留まっておけるし、「すぐに違うところに行きたい」と思ったら行ったらいいし、自分の人生を自分でコントロールできちゃうような感覚は車中泊じゃないと味わえないかなって。飛行機や電車だと、荷物の量や時間を制限されますけど、車はそんなことは関係ないので、どんな人でも楽しめるかなぁ、と思いますね。
──車中泊の30日間が終わって、これから書籍を出す準備に入ると思うのですが、おすすめのポイントは何ですか?
M: 普段、生活していると目の前のやらないといけないことでしんどくなってしまう時があったり、大きい夢があっても今はもうこの仕事があるから諦めよう、とか思ったりしている人がいると思うんですけど…。私がこの一か月間で出会った人たちのインタビューを読むことで、いろんなおもしろい人たちが世の中にいて、どんな仕事でも、どんな場所で生きていても、何でも正解だし、どんな生き方も楽しくできる方法はあるな、っていうヒントを見つけてもらえたらいいなと思っていて。ネガティブなヒントでもいいんです。本を読んで、ちょっと学校休んでみよっかな、仕事行くのしんどいから、旅行行ってみよっかな、とか。そういう、日常の変化をもたらせるものにできたらいいなと思って本を作っているので、手に取ってもらえたら嬉しいです。
Q.「シュッとしてるもの」って何だと思いますか?
M: 免許とる前に買っちゃった、スバルの「サンバー」っていう軽自動車です。20年前に出たクラシックモデルのほうを買ったんですけど、見た目はポコポコって丸っこい形をしていて。でもこのサンバーって、リアエンジンって言って後ろにエンジンがついているので、めちゃくちゃ馬力があるんですよ。見た目は「朗らか~」なんですけど、実はめちゃくちゃシュッとしてるんだよっていう!
──目がキラキラしてますね! 本当に好きなのが伝わってきます(笑)
M: (笑) いや、本当に馬力はめちゃくちゃあるんで、「軽やからって侮らないで」って思ってます(笑)
Q.自分の名前で缶詰を出すとしたら、中に何を詰めますか?
M: 私が必要なものは、ギターと車と犬。犬は「ゆるた」と「ぽんた」って名前で二匹飼ってるんですけど、 もうそれがあれば何もいらないです(笑)
Miyuu
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大阪府出身。シンガーソングライター。2016年に初のシングル「Southern Waves」をリリースし、現在は大阪・東京でのライブを中心に活動中。2018年には自然豊かな尾瀬の魅力を音楽を通して伝える「オゼ・ミュージック・アンバサダー」に就任。2020年にアルバム「BLUE・S・LOWLY」をリリースした。
撮影:青谷建