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マグカンさんの作品:【第七十二回】ピン芸人 くわがた心さん

関西にいる「シュッとした」人たちから「シュッとした」お話を聞きたくて始めた、MAGKANインタビューコーナー!

第七十二回は、

「シン・かわいい女性芸人」として活躍する ピン芸人 くわがた心さん にお話をうかがいました! K-POPアイドルを目指していた女子高生から一転、一流芸人となるべく笑いを研究する日々のことを語っていただいたインタビューです。

「愛竹(あいちく)」を謳っていますね。愛に竹で。

──松竹芸能からは13年ぶりの「第54回NHK上方漫才コンテスト」ファイナリストとなり、初の単独ライブのチケットは完売。でも実はK-POPアイドルを目指して松竹芸能のオーディションを受けていたんですよね。

くわがた(以下、K): K-POPアイドルになれると思って受けたんですけどね。騙されてるところはありますね。

──騙されてしまったんですか?(笑)

K: 「松竹ジャパングランプリ全国オーディション」っていうオーディションだったんですけど、ジャンルを問わないオーディションだったんですよ。漫才で受ける人もいれば、ミュージカル女優としてアピールする人もいて。だから通ったらK-POPアイドルになれると思うじゃないですか。でも蓋開けたらK-POPのジャンル、ないんですよ!

──まさかのジャンル外。

K: ロボットダンスを披露したんですけど、審査員の人たちがめっちゃ笑ってて。私は会場を沸かせるつもりで踊ってたのに。「いや何笑ってんねん、『フォーウ!!』て感じやろ!」ってイライラしてましたね。「おもしろかったよ~」と言ってもらえたんですけど、いまだに腑に落ちてません(笑)

──それが今やNHK上方漫才コンテストのファイナリストにも選ばれるくらいの芸人さんになられたんですもんね。

K: 松竹芸能にはすごく恩を感じてるんです。100回以上、いろんなオーディションを受けてきた中で唯一拾ってくれたところなので。「愛竹(あいちく)」を謳っていますね。愛に竹で。稀に見る愛竹精神です。

──100回以上落ちても夢をあきらめないガッツ、というのはどこから来るんでしょうか?

K: 「受かるまで受けようホトトギス」みたいな気持ちでした。「数打ちゃ当たるやろ」というか。高校一年生の時に初めて周りを見られるようになって、「他の人ダンス上手~。受からへんのは自分の力が足りてないからか!」って気づいて、勝つ方法を考え始めた感じです。

──落ちてもあまり気にしていなかったんですね。

K: アホなんで、考えてなかったですね、 悔しい気持ちはあるんですけど、物事をそこまで深く考える頭がなかったので「あ、次、次!」みたいな。

人を笑わせることなんてできないと思ってました

──自分が芸人になることは想像したことはあったんでしょうか?

K: いや、人を笑わせることなんてできないと思ってました。高校でも「オシャレ」「カッコいい」ってチヤホヤされてましたし! 学校の先生のモノマネはしてましたけど、むしろ笑わせてもらってた側で!

──K-POPアイドルを目指していることはご友人の皆さんも知っていたんですか?

K: みんな応援してくれてました。友達にも先生にもすごい恵まれてましたね。K-POPアイドルから芸人っていうシフトチェンジに戸惑っている人は多いですけど…。

──どんな高校生活を送っていたんですか?

K: 日々悔いのないように楽しんでましたね! 「今日も楽しむぞ!」「おはよ!」「おはよ!」ってみんなに挨拶して、毎日本当に楽しんでました。体育祭とか文化祭もはしゃぎまくってて。文化祭のあとにある後夜祭では一人で踊ってましたね。

──一人で…踊る…?

K: ダンス部の子たちが踊るとか、帰宅部の子が歌を披露するとか、そういう出し物の場があったんですよ。「私も何かやりたい!」と思ってK-POPの「BIGBANG」の曲で踊って。その時もキャアキャア言われて気持ちよかったですね~。「心~!」とか言われて。

──それは確かに同級生の方は戸惑うかもしれませんね…。

K: 今や「私服ダサい」って指摘受けてますからね。お仕事に行く時はマネージャーさんに許可を得た服を着ているんです。

──そんなにですか!?

K: 油断してると「え、それどういうつもり?」ってツッコまれるんですよ。 服を。私も受け入れられなくて。ずっとK-POPを意識した黒くてタイトめな服を着て「オシャレ」って言われてたのに。黒は良くないって言われて封印したらこれですよ。どこで踏み間違えたんでしょうね。

──K-POPの研究自体はものすごくされていたんですよね。

K: K-POPアイドルの新曲が出たら、すぐ振りをコピーして踊ってる動画を撮ってInstagramに上げるっていうのはやっていましたね。

──じゃあ人によっては経歴とか、ダンスの癖とかもしっかり覚えてらっしゃるんですか?

K: YGエンターテインメントに所属している人ならけっこう分かるかもしれません。この人は練習生何年やってて、オーディションは今までどこを受けて…とか。ダンスの癖だったら、「BINBANG」のG-dragonさんは「踊る時に首傾けがち」だったり、T.O.Pさんは前に出てくるとき絶対普通に出てきてくれなくて、「ボックス踏みながら前出てきがち」、D-LITEさんは「間奏の時に上向いてニコニコしがち」とか。

もっと期待にこたえたい! もっとおもろい女になりたい!!

──すごい、全部踊って再現してくださいました! でも今はダンスとかK-POPは封印されてるんですよね?

K: 中途半端になっちゃうなと思って、ダンスは全部消しました。でもやっぱり捨てきれずに、ネタに落とし込もうとして「ダンスのネタばっかいらんて!」てマネージャーさんに怒られました(笑) 単独ライブにダンスネタ5本入れようとしてて(笑)

──それは多いかもしれません(笑) その初めての単独ライブ、9月にあったと思うんですが、終えてみていかがでしたか?

K: チケットは完売して、130人くらいの方が来てくださったんですけど、わざわざ来て応援してくださってる方がいるんだっていうのがダイレクトに伝わってきて、「もっと期待にこたえたい! もっとおもろい女になりたい!!」って思いましたねえ。新たに課題も見つかりましたし。

──どんな課題ですか?

K: 感極まると飛ぶんだ、って思いましたね(笑)

──それは、ネタが…!?

K: 最初の段取りが全部飛んでしまって(笑) 一番はじめに壇上に出た瞬間、「ありがとうございます!」っていう気持ちがこみあげてきて感無量になってしまったんです。本当は自己紹介もして、単独ライブを開催する経緯も説明して、シークレットゲストの紹介をして、って順番が決まっていたのに、壇上に出て「ありがとうございます~! 実は! 今日ゲストが来てます!」って一発でゲスト紹介までいって…(笑)

──(笑)

K: 自分ではやらかしたことに全く気付かず進めていたんですけど、途中で出てくれた同期のやましたって子が「あれ何やってん!」ってツッコんでくれました(笑) お客さんもみんな思ってたみたいで、すごい共感の笑いがあって。「これからは紙に書いとこ」って思いました(笑)

──ライブで販売したグッズでは、手作りの缶バッジが完売したんですよね。

K: すごく嬉しかったです! 毎日事務所に来て「がっちゃんこ、がっちゃんこ」って自分で作っていたので(笑) 母にグッズの話をしたら、まだK-POPアイドルを諦めきれていないのか、「ペンライトはないの~?」って言われました。そんなんお笑いライブであるわけない!(笑)

──…あると嬉しい気もします(笑)

いつか「オールスター感謝祭」のミニマラソンに出たくて、ずっと走っています

──森脇健児さんのYouTubeの企画でフルマラソン走っておられましたよね。それより以前から走っておられたんでしょうか?


K:
中学校の時に陸上部で中・長距離を走っていたんですけど、いつか「オールスター感謝祭」のミニマラソンに出たくて、ずっと走っています。

──そこを目指して!

K: あれってアイドルも出てるじゃないですか。売れたらあそこに出れるんだと思って、大会には出ずにずっとそこを目指しています。高校生の時にあった持久走の大会だと、運動部の子が強いと思うんですけど、「バスケ部、バスケ部、ソフトボール部、くわがた心」、って順番で帰宅部の私がランクインするくらい。

──それくらいしっかり走り込んでいるんですね。

K: 走る以外にも、毎日「タバタトレーニング」っていう地獄のような4分間のトレーニングをやっています。「安田大サーカス」の団長さんからいただいたエアロバイクで。

──先輩芸人の方からのいただきものがあるんですね。

K: スタッフさんに「私、エアロバイク買いたいんです」ってぼそっと言ったら、物置に置いてあったエアロバイクがあるよって。団長さんが番組か何かで買ってもらったものだそうで、お電話で「すみません、後輩にあたるんですけど、くわがた心です!」ってご挨拶したら「良かったら持って帰って」と言ってくださったので、それから毎朝。どれだけ体調悪くても、どれだけ寝不足でも毎日やってます。

──ええっ、倒れてしまいませんか。

K: 倒れないんですよ、意外と。100kmマラソンを走り切る団長さんの「団長イズム」を受け継いでいるので、団長の背中を追いかけています!

──ガッツがすごい。森脇健児さんの「初フルマラソンで森脇さんのベストタイムを切ろう」っていう企画もそのガッツがあったからこそ成し遂げられたんでしょうか。

K: はじめは「無理やろな」って思っていました(笑)

──とてもきつそうでしたもんね…!

K: 42.195kmってよく聞きますけど、想像つかないじゃないですか。でも、続けていくうちに、人生で初めて20km走れたり、次は30km走れたり、って距離が伸びていって、最後はゴールできたので「可能性って無限大だな!」と思いました(笑) フルマラソンって、30km超えたあたりから本当に進まないんですよ。もう1km走ったかな、と思ったら100mしか進んでなかったりして。この企画のおかげで本当に根性がつきましたね。

──デビューしてからわりとすぐの企画でしたよね。

K: めっちゃ感謝ですね。過酷なロケも行かせてもらったりするんですけど、「もう帰りたーい!」と思っても、「いや、終わりはくる」って。良い経験させていただきました。

すごく優しい、愛の溢れる先輩がいるのが、松竹芸能ですよね

──ここまでお話ししていて、本当に明るくて元気な方だなと感じるんですが、『ひょうご発信!』(サンテレビ)や『ゆうドキッ!』(奈良テレビ)のコーナーで街中のリポーターをされている時は落ち着いた印象を受けていました。

K: それは…編集してくれているかもですね。

──カットされている…?

K: テンションが上がると、グワーッとしゃべってしまって、めちゃくちゃ嚙んでるんです。タイトルコールでも「あ、もう一回いいですか…?」て何事もなかったかのようなバージョンを撮ってもらったり。あとは地声が低いからか、初対面の方には「めっちゃ落ち着いてるね」とか、「大人っぽい」っていう印象を与えるらしいんですよ。実際はすごい走り回ったりするので、ギャップがすごくて申し訳ないなと思っています(笑)

──ラジオに出演されている時は大人っぽいというよりも元気、という印象でしたね。

K: すごく気をつけているんですけどね。落ち着いてしゃべるように、噛まないように、って。ラジオは自分の目で見たものを言葉でも伝わるように話さないといけないから、そういうしゃべりもできないとなって意識もしてます。自分の出た番組を後で聴いては、「これわかりづらかったな」ってやっと気づくので、まだまだできてないんですけど。

──客観視することで気づくことってありますよね。松竹芸能のYouTubeチャンネルで、「R-1グランプリへの道」というテーマで先輩の紺野ぶるまさんからネタの指摘を受ける動画がありますが、あれもズバズバ言われていて…。


K:
あれは本当にありがた企画でした。動画でもすごく伝わっていたと思うんですけど、あの動画の裏でもめちゃくちゃフィードバックをくださっていて。第二弾の時なんか、お腹に赤ちゃんのいる大変な時で、それなのに企画に参加していた後輩芸人たち一人ひとりに長文でネタのダメ出しをくださって。今でも申し訳ないくらいなんですけど、ネタの動画も見ていただいて、意見をくださるんです。すごく優しい、愛の溢れる方で。こういう先輩がいるのが、松竹芸能ですよね。

──愛竹。

K: 愛竹です!

──先輩といえば、笑福亭鶴瓶さんともラジオで共演されていますよね。笑顔で並んでいるお写真を見ると、ご家族のように見えました。

K: 今も番組に呼んでいただいてお話しさせていただいているんですけど、家族っていうか、鶴瓶さんが中学二年生の男子みたいになるんです。

──中二の男子?

K: 初めてお会いした時から今でも、なかなか目を合わせてくれないんです。「悲しいな」って思っていたら、鶴瓶さんのマネージャーさんから「鶴瓶さんは本気で惚れてる女性の目が見れない」って教えてもらって(笑)

──照れちゃってると言いますか…。

K: そうなんですよ。一緒にいた藤林温子アナウンサーが「私ばっかし見て。心ちゃん見てくださいよ!」って言ったら、「チラ…」っとだけ見てくれるっていう(笑)

──鶴瓶さんの表情のモノマネもしっかりしてくださいましたね(笑)

K: この前も呼んでいただいた時、収録後に鶴瓶さんが「ほな心、帰るよ~」って肩で風を切りながら帰っていかれて。「ありがとうございました! お疲れさまでした!」ってお見送りして控室に戻ったら、鶴瓶さんが上着をめちゃくちゃ忘れて帰ってたんです。あんなにスタスタと歩いて帰っていかれたのに。師匠、すごい可愛らしいなと思いました(笑)

──最後に、今後の目標を教えてください。

K: 「THE W」、「R-1グランプリ」、「オールスター感謝祭」のミニマラソン優勝。この三冠です!

Q.「シュッとしてるもの」って何だと思いますか?
K: 一筋通ってる人。曲がらない人。

私。あわよくば。

くわがた心。野望。
Q.自分の名前で缶詰を出すとしたら、中に何を詰めますか?
K: え~~ありったけの笑い声!(笑) 私のこの笑い声を入れて缶詰にしたい!


くわがた心

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大阪府出身。2021年に芸人デビュー。松竹芸能からは13年ぶりとなる「第54回NHK上方漫才コンテスト」決勝進出を決め、各所でこれからを期待されている。好きな漫画は『PEANUTS』。

撮影:青谷建

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