
関西にいる「シュッとした」人たちから「シュッとした」お話を聞きたくて始めた、MAGKANインタビューコーナー!
第五十七回は、
人気占星術家・鏡リュウジさん! 京都で過ごした学生時代のお話や占いとの向き合い方について伺いました!
「鏡リュウジ」さんって?
1968年、京都生まれ。心理占星術研究家・翻訳家。10歳の頃にタロットと出会ったことをきっかけに、魔術・占星術などに関心を持つ。16歳頃には雑誌でコラムの連載を開始。占星術、占いに対しての心理学的アプローチを日本に紹介し、従来の「占い」のイメージを一新。現在も第一線で活躍中。

1974年は日本におけるオカルト元年
──鏡さんといえば、占星術の世界でずっと第一線で活躍され続けていますが、高校生の頃に既に連載をされていたんですよね?
鏡さん(以下、K):はい。当時読んでいた占い雑誌に入門講座のコーナーがあって、毎号問題が出るんですよ。中学生のときにその答えをハガキで送っていたら、「よかったら東京に来て一緒に仕事をしませんか?」と占星術専門の編集、執筆プロダクションから連絡が来たのが始まりでした。今は亡きG.ダビデ研究所主幹の方で、ダビデ研究所は今でもアンアンの占い特集では巻頭特集を書かれています。
──その問題というのはどのようなものだったんですか?
K:やや専門的になりますが、「このホロスコープで金星が第7ハウスに入るときはどう読みますか?」などという、占星術における天体の配置図から何が分かるかを問うような問題でした。舞い上がってはいたんですが「まだ中学生ですし、高校くらい行かせてください」って言ったら「え? まだ中学生なの??」と驚かれて。それは面白い、来年から高校生占星術家として書いてよ、と言われて連載が始まりました。すごく小さなコラムでしたけどね。まだメールなんてなかったので毎月、郵送で京都から原稿を送っていました。それ以降もとてもお世話になっています。
──中学生の頃から頭角を現わしていたとのことですが、占い以外に興味があることはなかったのでしょうか?
K:小学校のときはジュウシマツとかインコとか、小鳥をいっぱい飼っていたんですけど…。本屋でタロットカードと出会ったことをきっかけに、占星術に興味が移りましたね。
──タロットカードに興味を持ったきっかけは何だったのでしょうか?
K:時代の影響が大きかったように思いますね。僕は1968年生まれなんですが、70年代半ばはオカルトブームの絶頂期でした。74年は日本におけるオカルト元年だそうで。73年には『ノストラダムスの大予言』が刊行され、それに続き『エクソシスト』や『サスペリア』といったオカルト・ホラー映画の公開や、スプーン曲げのユリ・ゲラーの来日、小中学校ではコックリさんが流行った時代ですね。高度成長期が一段落し、公害とかいろんな問題が表面化してきて、今までとは違う時代の進み方があるのではないかと、カウンターカルチャー的なもの、アングラ的なものに関心が高まった。ハイブロウなところでは寺山修司だとか、種村季弘、澁澤龍彦などの活躍です。近代的な合理主義に収まらないようなものを人々が楽しみ、広げていった空気感があったと思います。
──オカルト雑誌を代表する月刊「ムー」の創刊もそのあたりでしたよね。
K:「ムー」は79年創刊だからちょっとだけ後になりますかね。それ以前には「地球ロマン」「オカルト時代」なんて雑誌もあったし、「幻想文学」という文芸誌もありました。ただ、これらはやはりかなりマニアックなカルチャー誌でした。一方、驚くべきことに「月刊ムー」はもともとはメジャーな教育出版社、学研が創刊したんですよね。学習雑誌との繋がりもあるわけです。でもメジャーどころというと人気少年漫画誌もカラー特集でネッシーや心霊現象を扱っていたようで。僕はリアルタイムではないですが、奇妙なものを探して、子どもたちの関心をくすぐる土台ができていたんだと思います。テレビでも世界各地の“奇習”や今でいうUMAなどを求めて探索するサバイバル企画・川口浩探検隊シリーズのような系譜があるんじゃないかな。
──なるほど。その辺りの系譜を更に掘っていくと面白そうですね。
K:おそらく、もっともっと掘っていくと京都にも繋がってくると思うんですよ。龍谷大学の博物館とかに行くと、アジア各地の仏教に関するいろんなものが展示されているじゃないですか。ああいうものって早い時代から学者たちが仏教の源流を訪ねて、インディージョーンズのように未知なる世界へ飛び込み、いろんなものを持って帰ってきたということですからね。
──なるほど、そこにも繋がってくるんですね。鏡さんはご出身は京都ということですが、思い出に残っている場所はありますか?
K:京都はいっぱいありますね。子供の頃によく親に連れられて行っていた鞍馬山とか、学生時代によく歩いていた四条通とか…。当時の鞍馬山は今よりももっと神秘的な感じがあったんですよ。鞍馬山は鞍馬弘教の総本山ですが、伝統的な仏教や修験道に加えて、神智学という19世紀末に起こった西欧の秘教的な思想や伝統が影響しているんです。西洋のオカルティズムに憧れていた子ども時代だったので、自分が鞍馬に惹かれたというのは理由があったことが大人になってから分かりました。自分でいうのもなんですが、「ええ嗅覚してたんやなあ」と思います(笑)
──鞍馬山が西欧の秘教の影響を受けているとは…驚きました。
K:四条通は中学時代に自宅があった松尾から東山にある学校まで通っていたので、いつも京都の東西を横断する感じで端から端まで歩いていました。印象深いのは今でも寺町にある「三密堂書店」という仏教書・易学書専門の本屋ですね。僕が高校生の頃はエロ本とかも置いてあったので、そこで同級生と会うと「お前もか」と言われ、「違う違う! 僕は占いの本やから!」と。でもそれがきっかけで新しい友だちと仲良くなるみたいなことがよくありました(笑)
──三蜜堂書店といえば100年を超える歴史を持つ老舗書店ですね。
K:今はすごく綺麗になっていて昔の猥雑さはなくなっていますが、実は今のオーナーさんが同級生だったんですよ! 僕の学校は14クラスぐらいあったので当時は知らなかったんですが、つい最近久しぶりに寄ってご主人に挨拶したら「実は高校の同級生やねん」って言われて。「えええっ! 早よ言うて~」と。京都は狭いですね(笑)

占いというものが近代においてユニークな立ち位置にいることを表している
──日本において、占い師って何人ぐらいいるんでしょうか。
K:どうでしょうね…。統計とかも取っていないですし、明日から占い師ですと名乗れば、もう占い師ですからね。実数はわかりません。最近は副業でやっている方もいますし、特にコロナ以降は在宅でもできるので増えていると思いますね。
──それはやはり今の時代、占いが求められているということなんでしょうか。
K:よくそうやって言われるんですけど、占いはずーっと昔からあるんですよ。僕は16歳の頃からずっと占いを軸にやってきましたけど、「こんな時代やから鏡さんが求められているんですね」って毎年のように言われてきました(笑) 例えば70年代とかだと、高度経済成長に陰りが見え始めたときには「これまでとは異なる価値観を求めているんですね」と言われ、80年代から景気が良くなってバブルの時代には「モノが満たされたから次は心の時代で占いが」と言われ、また景気が悪くなったり、天災が続いて、いつの時代も常に「こういう時代だから」と言われ続けてきました。それは占いというものが近代においてユニークな立ち位置にいることを表していると思うんですよ。「こんな時代だから」海外旅行が流行っていますとか、「こんな時代だから」音楽が流行りますとか、言わないじゃないですか。だから本来、占い的なものは周縁的なものであるはずだ、っていう無意識の思い込みが強固にあって、それが「占い」が存在するには何か「理由」があるはずだと人に思わせているんでしょう。
──では、何か迷いが生じたときに占いに頼る方も多いと思いますが、占いとの向き合い方について教えてください。
K:占いって、皆さんが思っているよりもいろんな使い方ができるんです。大きく分けるとメディアでやっているような「エンタメとして楽しんでね」というものと、もう一つは「真剣に占ってもらいたい、相談したい」という場合にカウンセリングのような感覚で見てもらうものですかね。その場合、ある程度の経験と力がある人のところで何回か繰り返し見てもらって、かかりつけ医のような感じで活用してもらうと良いと思います。
──悩み事があって不安なときだけでなく、日頃から見てもらうことが大事だと。
K:はい。よく例えで言うんですけど、弱っているときに出会う男って大抵ダメな人でしょ?(笑) 変に取り込まれたり、依存してしまわないようにするためにも、この占い師は信頼できるのか、相性や人生観は合うのか、元気なときに見極めると良いと思います。占う側としても、相談者の以前の状況を知っていれば、そこからの変化を見てより深く分析することができるので、繰り返し見てもらうことは大切です。
──占いの結果を伝える上で気を付けていることはありますか? 例えば、こういう結果が出たけど、いまは伝えるべきでないなと葛藤したりなど…。
K:良心的な占い師はみんなすごく気を付けていますね。これも普通のカウンセリングと同じで、占いのセオリーから浮かび上がることを全て伝えることはしません。それは侵襲的というか、インベーディングなことですから。ただカウンセリングと違うのは、占い師は強力な言葉を使えてしまうんですよね。だからこそ、何をどうやって伝えるのかはトレーニングが必要なのですが、そこまでトレーニングを積んでいる人は少ないでしょうね。

占星術専門の本が日本にはなかったので、洋書を読むしかなかった
──著書の執筆から本の翻訳、様々なメディアへの寄稿や講師としてもご活躍の鏡先生ですが、効率的に仕事をするために気をつけていることや意識していることはありますか?
K:いや…あんまり効率的に出来てないと思いますよ(笑) 雑誌はライターさんたちと一緒にやっているというのが前提としてありますし、一般のサラリーマンの方…って言ったらおかしいかもしれませんが、そういう方と比べると、僕は割と自分の時間はコントロールできる仕事ですから。
──では、リフレッシュ方法はありますか?
K:若いときは好きな本を訳しているときが楽しく、それがリフレッシュに繋がっていたと思います。今となっては、よくあんなに難しい本を訳していたなと思いますね(笑) 怖いもの知らずだったというか、生意気だったというか…。
──翻訳のスキルはどうやって身に着けたのでしょうか?
K:占星術専門の本が日本にはなかったので、洋書を読むしかなかったんです。その洋書も京都では丸善さんにしかなくて、取り寄せをお願いすると3~4カ月かかるうえに、値段も3倍ぐらいになるんですよ。なので、海外の出版社から個人輸入する方法が書かれた本を読んで、個人輸入し始めました。ただ、輸入はできたものの英語が読めなかったので、当時来てもらっていた家庭教師の先生に教わっていました。いま思うと、その先生は京大の先生で、外交官にもなられた方だったので、めちゃくちゃ英語ができる人だったんですよね。だから受験勉強なんてそっちのけで、オカルトの本を一緒に読んでいたんですが…先生もよく付き合ってくれたなと思いますね (笑)
──モチベーションを上げるために何か意識的にしていることはありますか?
K:実はあんまり最近モチベーションが上がっていないっていうのはあるんですけど…(笑) 言われて気がついたんですが、この2~3年モチベーションが下がっているのはイギリスに行けていないからですね。僕は英国のの本屋さんに行ったり、英国の仲間た先生たちに会うとすごく刺激を受けるんですよ。
──ロンドンは占星術が盛んなのでしょうか?
K:マーケットの大きさではアメリカが一番ニーズがありますし、ヨーロッパではイタリアが最も歴史も古く、別世界だと思います。天文に関する展覧会に行ったとき、展示されていた天文学者ケプラーの原書を見てぶつぶつ音読している外国の方がいたんです。16世紀のラテン語ですよ…。「え? 読めるんですか?」と英語で聞いたら、「うん、まあイタリア人だからね。習ったことはないけどなんとなく読めちゃうしわかる」と言っていて。イタリア語はラテン語に近いので古いテクストを読めちゃう人が多いんですよね。日本では源氏物語には現代語訳があるし、なんなら江戸文学でも訳があるでしょ? だからイタリア人は古い占星術のテクストにアクセスしやすいんじゃないかなあ。ただ、イギリスは独特の立ち位置です。というのは17世紀後半以降、占星術はいったん衰退するんですが19世紀末から現代において英国において占星術は英国で「復興」したんです。おそらく現存する最古の占星術団体も英国の占星術ロッジ。僕はイギリスの占星術界の雰囲気がすごく好きなんですよ。80年代の末ぐらいからイギリスと日本を往復しているんですが、当時のイギリスの占星術界の雰囲気って、今のちょっとアメリカナイズされたような世界ではなく、なんというか…商業的じゃなかったんです。仕事をリタイアして精神的に余裕のある知的な人たちが趣味で集まっている感じで、その商売っ気のない空気感が心地良かったですね。

今の人は時系列で物事を見ていくという発想がないと思う
──占い師の方の中にはお弟子さんを取る方もいると思うんですが、そういった準備などはされているのでしょうか?
K:直接的な弟子は取らないつもりですが…年齢的に考えていかないといけないのかなと思ったりもしますよね(笑) 信頼している担当編集に勧められてスクールも開校しましたし。
──スクールではどんなことを教えているんですか?
K:あくまでも基礎的なことしか教えていません。スクールを始めたのは編集の声がきっかけですが、プラットフォームを作っておいた方がいいと思ったのも始めた理由の一つです。僕らの時代だと情報が限られていたので、自然とどの順番でどのように学んでいけばいいのかという指針が立てやすかったんですよ。ところが、今の人は時系列で物事を見ていくという発想がないと思うんです。例えばかつてはレコードが好きな人だったら、このミュージシャンはここから出てきているとか、実感を持ってその系譜を縦に見ることができたんだと思うんですが、今の時代は一度にたくさんの情報が手に入るが故に、良くも悪くもそういう見方が非常にやりにくい。要はSMAPもモーツァルトも同列にダウンロードできるでしょう(笑) それはそれで良いことだと思うんですけど、占星術のシーンでも情報が無数にあるので、どういう順番で組み立てて見ていけばいいのか、そのイメージを繋げるプラットフォーム作りができたらと思います。
──ずっと第一線で活躍され続けている鏡さんですが、今後挑戦していきたいことはありますか?
K:本当にもう…全然考えていないです(笑) 僕はうお座ということもあって、流された方がいいというか、具体的に考えて「こうしよう!」と思って行動しても上手くいったことってあんまりないんですよ(笑) 強いて言えば…僕はかなりのペースで本を出しているんですが、マスマーケットを対象にしたのものと、完全にアカデミックに振ったものを交互に出していて、これからもアカデミックみたいなものは1~2年に一冊は出していきたいです。あとは二年程前に『ユリイカ』(青土社刊)という雑誌で、初めて責任編集という立ち立場でタロットの特集を組ませていただいたんですが、それが発売前重版もかかるほどの異例の売れ行きとなりました。学者ではない僕だからこそ、執筆いただいた著名な方々を繋げ、一つの形にできたのかなと思ったので、いろんな人たちと横断的に交流していくことは今後もやっていきたいですね。
──専門的な特集本で重版がかかるのはすごいですね…。これからのご活躍も楽しみにしています!

Q.「シュッとしてるもの」って何だと思いますか?
K:京都の人の生き方はシュッとしてると思いますね。僕はできているかどうか分かりませんが、京都の人の基本的にお金だけで動かないでしょ? もちろんお金は大事だけど、お金だけで動かそうと思うと動かなかったりするんです。人を尊敬するときも、急に売れたというだけでその人のことを尊敬したりしないし、そのメンタリティーはシュッとしていると思います。
Q.自分の名前で缶詰を出すとしたら、中に何を詰めますか?
K: 今日ずっと考えていたんですよ。「シュッとしたこと言わなあかんのかな~」って(笑) すごく難しい質問なんですが、ひとつは実際にあるんですけど、ブリキ缶に入っているタロット! そういう商品を自分でも出せたらいいなって思うのと、もうひとつはちょっとキザですが、その人が人生で一番大事に思っている瞬間を閉じ込めてあげたいですね。いつでも開けて、「うんうん、ここにあるな」って思えるだけで心が大丈夫になれるような。

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