
関西にいる「シュッとした」人たちから「シュッとした」お話を聞きたくて始めた、MAGKANインタビューコーナー!
第四十回は、
神戸を中心に活動するバンド さよならポエジー のお2人にお話をうかがいました! 2人の出会いから、現在のバンド活動ついて語っていただいたインタビューです。
「さよならポエジー」って?
兵庫県神戸市を中心に活動するバンド。メンバーはオサキアユ(vo,g)、ナカシマタクヤ(ds)で構成(2021年12月取材時。現在は岩城弘明(ba)が加入し、3名で活動中)。2012年に結成し、2015年に大阪のインディレーベル「THE NINTH APOLLO」へ所属。2016年に1stアルバム『前線に告ぐ』を、2018年に2ndアルバム『遅くなる帰還』を発表。2021年には3rdアルバム『THREE』をリリース。

その日に「僕とバンドやってください」と言いました。
──まず、音楽を始めたきっかけを教えてください。
オサキアユ(以下、A):音楽の授業で、パーカッションをやったり、演奏したりする中で、楽しいなっていう感覚はありました。小学校の高学年ぐらいになってくると、テレビで音楽番組を観るようになって、自分も弾いてみたいと思うようになりました。それで親戚からベースを借りて、そこから音楽にのめり込んでいきました。
ナカシマタクヤ(以下、N):僕はもう完全に両親の影響です。大学のサークルみたいなところで、両親2人とも楽器をやっていたそうです。僕は小さいころ、習い事をたくさんやらされていたんですが、その習い事がどれもあんまりハマらなくて。それで、全部辞めちゃった時に、母から「あんたはドラムやり!」と言われて、ドラムを始めました。
──では、お互いが出会ったのはいつですか?
A:僕は宍粟市という、岡山よりの兵庫県出身なんですが、めちゃくちゃ田舎で…。ベースを始めてからバンドをやってみたい気持ちはずっとあったんですけど、高校には軽音部がありませんでした。その代わり、学校外に趣味程度に音楽をするコミュニティはあったので、そこで同級生とではなく、目上の人たちとやってました。その後、高校を卒業して、一度は社会人になったんですが「やっぱりちゃんとバンドをやってみたい」「自分が主体で、ベースではなくギターをやるバンドをしたい」と思うようになって。それで、メンバーを探しているときに、地元の先輩が紹介してくれたのがナカシー(ナカシマ)です。姫路のスタジオで会ったのが最初ですね。
──自分が主体でバンドをやりたいというのは、目立ちたいという気持ちや、憧れからでしょうか?
A:目立ちたいとか、有名になるとか、そういう野心的なものではなくて、曲を作ってみたかったからですかね。
──ちなみに、お2人は学生時代、目立つタイプでしたか?
A:いや、もう見た通り目立たない感じです(笑)
N:まったくです(笑)
A:スクールカーストはかなり低めの…(笑) ナカシーは分かんないですけど。
N:いやいや、もう全然、特に目立つこともなかったです。
──お互いの第一印象はどうでしたか?
A:いろんな人のドラムを見てきたわけじゃないんですけど、単純に上手だなと思いました。だからその日のスタジオ終わりに「僕とバンドやってください」って言いました。どんな人間なのか分からないけど、とりあえず上手いから離さないでおこうという気持ちだったと思います。
N:初めてスタジオ一緒に入ったときは、それこそ彼はベースを弾いていたんですが、その後にギターを鳴らして歌っているのを見て「うわぁ、一緒にバンドやりたいな」って感覚的に思ったのが、一番最初の印象だったと思います。

──その後、ベースも加入して活動を続ける中で、現在のレーベル(THE NINTH APOLLO)に加入されますが、どんなきっかけがあったのでしょうか?
A:神戸の三宮にある「太陽と虎」というライブハウスのブッキングの方が、「My Hair is Bad」と「NOA」っていうバンドが神戸にツアーで来るときに、僕らに地元バンドとしてそのライブに出てみなよと誘ってくれたんです。それで、そのライブをレーベルの社長が見てくれて、めちゃくちゃ良かったと声をかけてくれたのがきっかけです。
──同じレーベルには、同世代のバンドがたくさんいますよね。同じ年齢の皆さんで「1993」というタイトルでイベントもやられていますが、彼らはどんな存在ですか?
A:んー…戦友とかではなく、友達って感じですかね。僕ら以外の同世代のバンドは、もうちょっと多方面に広がっていて「Hump Back」は武道館、「ハルカミライ」は幕張メッセとか、大きい会場でやっているぐらい活躍しています。でも、普段ライブをする規模が違っていても、大事なツアーに呼んでくれたりするんで、みんな言葉にしなくても頼ってくれてるんだなと思いますし、嬉しいですね。
──では逆に、さよならポエジーがツアーで呼ぶときは、どんなバンドを選んでいるんですか?
A:みんなが見た方がいいバンドと、自分らが好きなバンドですね。見た方がいいっていう表現はちょっとおこがましいですけど、やっぱり自分たちのお客さんに「俺たちこんな音楽が好きなんやけど」って伝える義務もあると思うので。そうじゃなきゃ、一生ワンマンみたいなバンドになっちゃうと思いますし。でも「Hump Back」とか「ハルカミライ」とかは、呼びにくいですよね。「お前らの方が集客呼ぶんちゃう」とか、いろいろ考えてしまうんで(笑)

レコーディング中に書くのがセオリー
──楽曲は、いつもどのように作られているんですか?
A:曲を先に作って、歌詞はレコーディングの日とかですね。
──え、その日に作るんですか?
A:間に合わないんで(笑) まあ間に合ってる歌詞もあるんですけど、もう毎回、毎回、歌詞は当日とか前日とか。レコーディング中に書くのが、このバンドのセオリーになってます。だからメンバーもどんなメロディが乗るとか知らないんで、ちょっと博打ですよね(笑)
──では、制作前にコンセプトを決めるようなこともないのでしょうか?
A:はい、コンセプトとかもないです。だいたい、いつもアルバムを作ることが決まってから、レコーディングを押さえてもらうんですけど、いつもフルにできず、ミニになるという(笑) いまレーベルからアルバムを3枚出していて、最初は昔の曲とかを詰め寄ったりしてフルアルバムの尺になったんですけど、2枚目、3枚目は頑張ってみたものの…みたいな感じですね。
──ある程度溜まった曲をアルバムにまとめる、という作り方ではないんですね。
A:日常的に曲を作ることはあんまりないですね。「そろそろアルバム出したいなー」みたいなことをレーベルに言われて、「あぁそうっすねー、やりますかー」って感じです。それで、レコーディングを何月ぐらいにするかぼんやり決めて、じゃあ曲作っていきましょうって。作るってなったら、半年ぐらいでバーッと作ります。
──2016年に発表した「前線に告ぐ」のサビでは、村上春樹さんの小説『1973年のピンボール』(講談社刊)から歌詞を引用していることからも、全体的に文学的な表現が多い印象を受けます。歌詞を考えるときは文学作品から影響を受けることが多いのでしょうか?
A:本は過去に読んでた方かもしれないですけど、最近は全然読んでないんですよね。でも「あぁ、こういう言葉遣いがあるんだな」と、ぼんやり追いかけるぐらいに参考にはしてます。作詞の語彙を増やすためではなくて「文章ってこうやって書くんやな」、「こういう順序で言葉を並べたら綺麗やな」っていう意識が強いかもしれないです。
──では、他のアーティストさんから影響を受けることはありますか?
A:そうですね、いろんな人に影響を受けてるんで、一口には言えないんですが、こういう歌詞の書き方ができるのかって思うバンドは「ハヌマーン」の山田さんとか…。でも「Syrup16g」の五十嵐さんの歌詞も、肩の力抜けて良いなと思います。あと「ASIAN KUNG-FU GENERATION」の後藤さんは文脈というより、声をひとつの楽器として活かす様な歌詞の選び方をされている気がして、その語感というか、それもまた別軸で刺激を受けています。
──歌詞を通して伝えたいことや、表現したいことはあるのでしょうか?
A:狙いやテーマを決めて考えることは少ないです。「結果、こういうメッセージ性の曲になりました」っていう、結果論が多いというか。だいたい、いつも言ってることは一緒なんです。自分のことや友達のこと、住んでる街のこととか。あんまり遠い世界のことは書かないですね。性格もあんまり明るくないんで、お前ら元気出せよみたいな歌詞が書けるわけもないんですけど(笑) だからもう今まで作った何十曲通して、同じことを言ってるだけです。言葉の言い回しは全部違うと思うんですけど。
──確かに軸がブレていない印象があります。
A:急にラブソングになったな、とかもないでしょ?(笑) みんないろんなことがあるけど、頑張りましょうぐらいですかね。
──ナカシマさんは、アユさんの歌詞をどう思っているんですか?
N:単純にすごいなって思います。さっきも言ってたように、レコーディング当日に、本当に初めてメロディとか歌詞を全部聞くんですけど、今まで「こんなんダメやろ」とか思ったことないです。必ず、思っていたものより更に良いものを持ってきてくれるから、その度に僕は「お疲れ様、いつもありがとう」って。
A:それ言われた気がします。お疲れさまって(笑)
──では、アユさんからドラムやベースに「もっとこうしてくれ!」と要求することはあるんですか?
A:求めてばかりですね。自分の中で鳴ってる音があるから「ここはこういう音で叩いてほしい」とかはめちゃくちゃ言います。特にドラムには厳しいです、優しくできません(笑)
N:…そうですね。ご想像にお任せします(笑)
──お2人の関係性が見えた気がします(笑) 普段、2人でいるときはどんな感じなのでしょうか。
A:基本的にはあんまり喋らないですね。一言も会話なかったよね、ここに来るまでの車内でも(笑)
N:うん(笑)
A:あっ、仲が悪いとかそういうことじゃないんですけどね(笑)
──それはバンドを組まれた当時からですか?
A:いや、だんだん減っていきましたね。話すことないんですよ、何年も一緒にいたら(笑)
──それだけ信頼し合ってるってことですかね。
二人:そういうことにしときましょう(笑)

僕らは何故やるかという理由も欲しい
──コロナの影響でライブの環境も変わり、配信ライブも増えましたね。配信ライブはやられましたか?
A:10回もやってないと思います。
N:たぶん、片手で収まる数ぐらいですね。
──意識的に避けていたのでしょうか?
A:そうですね、避けました。
──それは何故でしょうか?
A:やっぱりライブって、生だから楽しいんだと思います。配信ライブは生じゃない、だからやらないっていう、そういうシンプルな理由ですね。ただ、生で見て欲しいからといって、今こういう状況なのにライブハウスに観に来てとは言えないんですけど…。あと、配信という方法でライブをすることで、ちょっとでもライブハウスにお金が入るとか考え始めたら、そういう側面では好き嫌い言ってる場合じゃないので、やらせてもらったりはしました。ライブハウスに貢献できるのであれば、協力します。
──現在サブスクの配信をやっていませんが、それも配信ライブと同じように避けているのでしょうか?
A:んー…、確かに現状はやってないですよね。やっていない理由は、タイミングを逃してるっていうのが半分あるんですけど、サブスクをやるのであれば、その理由をちゃんと見つけたいっていう思いもあります。今の時代って、結構どのアーティストさんもサブスクを解禁していますよね。とりあえずサブスクみたいな。でも、みんなやる意味とか考えてやってるのかなっていうのは気になります。僕らは何故やるかという理由も欲しいんですよ。「みんな携帯で聴けるし良いやん」とか、そういう手前の話じゃなくて「こういうことがあって、こんなことに繋がるだろうから、サブスクはやった方が良いよね」っていうのを、もうちょっと明確に探したいので、いまは保留時期にしてます。別に流行に抗いたいとかではないですし、サブスクも良いですけどね。なので、模索してる半分、タイミング逃してる半分っていう、半分半分って感じです。

お客さんの存在がちゃんと目に見えた
──今年初めてワンマンライブを開催されましたよね。このタイミングでの開催は何かきっかけがあったのでしょうか?
A:アルバムを作るときと一緒で、レーベルの人に「やってみなよ」って言われたからです。僕らはほっといたらボーっとしてるだけなんで(笑) でも、やっぱり一回アルバムを出したタイミングでワンマンをやらせてもらったら、自主的にもワンマンをやってみようと思うようにはなったんで、レーベルに感謝ですね。
──ワンマンライブを経験された前後で、何か心境の変化はありましたか?
N:いつも、いろんなバンドと一緒にライブすることが多かったので、自分たちだけを見に来てくれるお客さんがたくさんいるってすごいことだなと思いました。2021年はワンマンライブを四回やらせてもらったんですけど、自分たちのために、自分たちでライブを組み立てることは新鮮で、回数を重ねる度に、自分たちがこうやった方が楽しいんじゃないかって、わりと純粋に突き詰められて、すごい楽しくやれるようになってきましたね。
A:一発目はもう演奏中に帰りたいなって思いました。
──どういうことですか⁉
A:やっぱり長い尺でやったことがないので、喉も消耗していって、後の方の曲はあんまり声がでなくなったりとかして…。「あぁ、帰りたいな」って(笑) でも、ナカシーも言ってましたけど「こんなに聴いてくれる人おったんやなあ」って思いましたね。お客さんの存在がちゃんと目に見えたっていうのが、いま自分の中で生きてると思います。今まで、もうちょっとお客さんのこと無視してしまっていたと思うんで。あと、ステージの裏でこんなにたくさんの人が動いてくれているんだなっていうのも漠然と感じて、自分の気持ちが切り替わったと思います。
──東京で行ったワンマンライブもソールドアウトしていましたが、自分たちの音楽が広がってるなという実感はありましたか?
A:んー…広がってるなという感じは…。そもそも僕らは、100万人に聴いてほしいと思ってやってるわけじゃないんです。僕らの音楽を広げたい、売れたいっていうより、作った作品をちゃんと届けられたら良いなって。ちゃんと地に足をつけながら、やってることにプライドを持って、神戸という場所で地道に音楽を続けていきたい。それがいつか山ぐらい大きくなったら、遠くにいても見つけてもらえるじゃないですか。「おぉ、こういうバンドおるんや」って。だから、その場所で自立して巨大化できたら良いなと思います。

待ってくれている人たちがいる場所でツアーを回りたい
──今後挑戦してみたいことってありますか?
N:個人的には、今やっていることの延長戦で、もうちょっとワンマンやってみたいなとか、もっといろんなところでライブしてみたいなっていうのはありますね。新しい曲を作って、自分たちが思っていることを形にして、待ってくれている人たちがいる場所で、それを共有できたら良いなと思います。
A:大阪とか東京でワンマンをやらしてもらって、観に来てくれる人がある程度いることは分かったんですけど、たぶん地元からわざわざ遠征して大阪や東京に来てくれたりしてると思うんで、その人たちの街に直接行くというか、ちゃんとツアー回ったりとかしてみたいですね、新しい音源とかを持って。…まあ、音源先に作れって話ですよね(笑)

Q.「シュッとしてるもの」って何だと思いますか?
A:関西人が言うのは、整ってるなっていうことだと思うんですけどね。雑多じゃない感じっていうか。決して汚いものには言わないですよね。
N:うんうん。
A:少なからず「さよならポエジー」ではないですね。
N:逆説(笑)
Q.自分の名前で缶詰を出すとしたら、中に何を詰めますか?
A:……マトリョーシカみたいに、同じ缶詰が入り続けてるんじゃないですか? 開けたら「いや、また缶詰かい!」みたいな。同じような毎日を送ってますし、どちらかと言えば、人生的にターニングポイントがたくさんあったような人間ではないので。作品も同じようなことを書いたりするし。なので、缶詰を開けたら、缶詰、缶詰…みたいな。「結局おまえなんやねん」って、ちょっと笑ってほしいかも(笑)
N:僕は人に「脳筋やな」とか「頑固やな」って言われたりするので、なんか固いものとかですかね。パンパンに砂利が入ってたりとか…。
A:悪戯やな、それ。買った人への悪戯やん。
N:そうやな、絶対に良くはないよな。
──ナカシマさんは穏やかで柔軟なイメージだったので意外です(笑)
N:偏った考え方を持ってますねって言われたことあります。柔軟にしてるつもりなんですけど…。
A:今でも彼のことはよく分かんないですよ。
N:なんか、一つのことを考えると、ずっと考え続けちゃうというか…。
A:あぁ、良くない方にな。幸せなこと考えてるようには一生思えへん、お前は。
N:確かに、そうなんかも…。
──(笑)

撮影:青谷建

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