• お知らせ 2021.3.1

シュッとした噺【第二十九回】焼肉巧真 佐野巧真さん 佐野貴恵さん

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関西にいる「シュッとした」人たちから「シュッとした」お話を聞きたくて始めた、MAGKANインタビューコーナー!

第二十九回は、

元プロレスラーで京都で焼肉店「焼肉巧真」を営む佐野巧真さんと奥様の佐野貴恵さんにお話をうかがいました! リング上でのイメージとは異なる巧真さんと貴恵さんの夫婦のやりとりや、プロレスの魅力について語っていただいたインタビューです。

「何しようかな」と考えたんですけど、プロレスしかないなと思って。

──1984年に新日本プロレスのプロレスラーとしてデビューし、2020年1月にプロレス界を卒業されましたが、巧真さんがプロレスを始めるきっかけは何だったんでしょうか?

佐野巧真(以下、巧真):漫画の『タイガーマスク』(講談社刊)から入って、テレビ中継を見てアントニオ猪木さんに憧れたのがきっかけですね。本当は『巨人の星』(講談社刊)を見てジャイアンツに入りたかったんだけどね(笑) 中学生まで野球少年だったので。

──子どもの頃の憧れが大人になるまで続いたんですね。

巧真:それしかなかったっていうか…そうやねぇ。高校三年生の時に大学行くか就職するかってなった時に、「何しようかな」と考えたんですけど、プロレスしかないなと思って。

──「それしかなかった」と言えるって…すごいですね。

巧真:高校の時は柔道をやってたんですけど、その時代に山本小鉄(新日本プロレスの元プロレスラー)さんがプロレスの練習方法の本を出したんですよね。それを読んで、それと同じことを家で毎日やっていました。

──どういうトレーニング内容だったんですか?

巧真:腕立て伏せ何回とか、ヒンズースクワット何千回とか、いろんな種目があってそれをそのままやってましたね。柔道部の部長になった時はその練習を皆にさせたので、基礎体力だけは全員上がりました(笑)

ちょっとやれば誰でもプロレスラーになれると思う

──巧真さんから見た、プロレスの魅力って何ですか?

巧真:何ていうかな…。実際に生で見てもらうと、やっぱり大きい人同士がぶつかり合う姿は迫力が違うと思うんです。肉体だけ表現する、そこを見てほしいかなって思いますね。僕も普通にプロレスやってたけど、辞めると「うわ~こいつらすげぇな」ってなるんですよ。辞めて半年もすると体がプロレスラーじゃなくなっちゃうから。プロレスをやってる時は何をされても痛くない、衝撃を吸収できる身体だったんですけど、辞めるとそれがなくなっちゃうんです。表だけ筋肉つけてもダメなんですよね。競技としては、ぶつかってぶつかってぶつかるものなので、だんだん身体が覚えて対応できるようになっていくんです。それが見た目だけだとたぶん分からないんですけど…。なので、辞めると「こいつらすげぇな」って。僕はもうプロレスラーじゃないなって思う。辞めると分かりますね。

──そんな半年で…。

巧真:若ければもうちょっと長く保つかもしれませんけど、本当になくなりますねぇ。藤原喜明(今年で72歳になる現役プロレスラー)さんがあの年齢でも試合ができるのは、ずっとプロレスをやられているからですよねぇ。あれ、ずっと休んでいてたまに試合に出るのだと大変でしょうけど、ずーっとやられているんで身体がそういう身体のままなんですよね。見た目は多少変わっても、中身はそのままで。すごいなと思います。

──普通の身体じゃ、ぶつかりあった時に弾くような音は鳴らないですよね。

巧真:そうですね、耐えられないと思います。鍛えている人同士がぶつかりあうっていうのがプロレスの醍醐味かなと思いますね。まぁやっていくうちに身体が対応するので、ちょっとやれば誰でもなれると思うけど。

──……誰でも!?(笑)

巧真:なれる素質は誰でも人間の身体に備わっていると思いますね。

佐野貴恵(以下、貴恵):えええ、そうかな?(笑)

巧真:練習に耐えれば、皆その身体になってしまうんですよね。皆、身体は持っているので対応できる能力はあると思います。好き嫌いもあるとは思うけど。

──プロレスラーに憧れたら、やってみれば誰でもできるかもしれない?

巧真:皆できると思います。

貴恵:(笑)

──貴恵さんは巧真さんと出会われる前からプロレスがお好きだったそうですが、どこに魅力を感じますか?

貴恵:コロナ禍の前はお客さんの熱気やヤジがおもしろくて。ライブ感覚なんです。もともとライブがすごく好きだったので、生の試合を観てみたらライブと同じみたいに思えたんですよね。試合内容がどうとかよりも、臨場感とお祭り騒ぎな感じがおもしろくて。観に行くうちにだんだん選手のキャラや技が分かるようになって、ストーリー性も含めてまた違うおもしろさが出てきて、それでどんどん。

──初めてはどういう試合だったんですか?

貴恵:たまたま知り合いからチケットをいただいたんですけど、大仁田厚さん(※)の電流爆破でした(笑)

──ええっ!?(笑) 巧真さんとスタイルが全然違う…。

※大仁田厚はFMWというプロレス団体の創始者。「何でもあり」をキーワードに、有刺鉄線や電流等を使用したデスマッチが多く、異種格闘技戦の要素が強かった。佐野巧真がデビュー時に所属していた新日本プロレスはレスリング技術の攻防を見せ、プロレスの凄みを見せるスタイルで、正反対のプロレスと言える。

貴恵:そうなんですよ、プロレスを好きになってから知り合ったので、「FMWを観に行った」と言ったら鼻で笑われて(笑)

巧真:FMWだけじゃなくて、全日本プロレスさんとか、いろんな団体に対して思っていましたけど、自分の団体が一番だと思ってやってるので…。

──プロレスを観るなら自分の団体の試合を観ろ、ということですね。

貴恵:ついつい私はファン目線で言ってしまうんですけど、実際にやってるほうなので温度差があって。けっこう「しらーっ」って感じで見られて、それがちょっと寂しい時もあります(笑)

プロレス以外やっているところを知らないから「そんなんできるんかいな」みたいな

──2018年に京都で「焼肉巧真」をオープンされたそうですが、なぜ焼肉店を始められたんですか?

巧真:年齢につれて体力維持も大変になってきて、プロレスをやりながらも「次に何をやろうかな」と考えたんです。そうしたら、食べるのが好きだし、その中でも特に焼き肉が好きだから焼き肉屋をやりたいなとふと思って。昔から何となく食べ物屋をやりたいなっていうのはあったので。普段から料理をする機会があったわけでもないんですけど…。それでプロレスと並行しながら修行をさせていただいて、お店をスタートすることになりました。

──巧真さんのご出身は北海道だそうですが、どうして京都に?

巧真:都内でも探していたんですけど、なかなか物件が見当たらなくて。そんな時に彼女(貴恵さん)の京都の実家にいるお義母さんが病気をしてしまったんです。前からゆくゆくは実家に帰りたいという気持ちを聞いていたので、「じゃあ京都に行こか」と。

貴恵:母の病気は今はもうだいぶ治っていて、たまに手伝ってくれています。

──いきなり焼き肉屋をやると言われていかがでしたか?

貴恵:しょっちゅう焼肉は食べに行っていましたけど、まさかやるほうになるとは思っていませんでした(笑)

巧真:そやろな。

貴恵:家でご飯を作っているところなんか見たことないし、プロレス以外やっているところを知らないから「そんなんできるんかいな」みたいな気持ちがあって。

──意見がぶつかることもありましたか?

貴恵:ずっとぶつかっていた気がします(笑)

巧真:ぶつかってたっていうか…。

貴恵:こっち(巧真さん)の自覚はないみたいです(笑)

巧真:僕が真意はあってもはっきり言わないタイプなんで、彼女がやきもきしてたんだとは思いますね。

貴恵:不安でいっぱいでしたね。「できるの?」って言ったら「ん~大丈夫ちゃう~?」っていう返事しか返ってこないし。

巧真:「ほんまにできんの?」「うん、できる」って言えばいいんだけど…。

貴恵:言わないんですよ!(笑) 肉体派で身体が大きいから、皆さんは「俺についてこい」タイプを想像されると思うんですけど、全然で。自分は自分で我が道を行くって感じでした。言葉だけでも「大丈夫や、ついてこい」みたいなところが一切ないんですよ。だからけっこうぶつかりましたね(笑) オープンの当日まで本当にちゃんとできるのか、すごい心配でした。

巧真:「大丈夫やで、できるよ」って言っとけば良かったんでしょうけど(笑) 「俺もやったことねぇしな」って。ある程度はできると思うけどなぁ、という感じでしたね。

貴恵:今年でオープンから3年目なんですけど、お店を開いてみたらけっこう何でもやるので、「なーんや、できるんやったんやん」ってなりましたね。ねぇ(笑)

巧真:(笑)

三種類あるキムチも全部手作りで、スープも全部骨からとってる

──そんなお店のお勧めメニューは何ですか?

巧真:なんやろ…何がいいかな。

貴恵:ええ~(笑)

巧真:リピートが多いのは中落ちカルビとかレバブツとかですね。京都の亀岡牛のリブ芯ステーキも皆さん「おいしい!」と言ってくれるから間違いはないと思います。それくらいかな。

貴恵:…こうやって、こちらはお肉のことをすごい勧めるんですけど、私や母はサイドメニューをぜひ食べてくださいって言いたくなるんですよ。でも言わないんです(笑) 三種類あるキムチも全部手作りで、スープも全部骨からとってるのに。キムチを手作りで出しているお店って珍しいらしいんですけど。あとはタレも作っています。

──タレまで!

巧真:東京で修行させていただいていたお店のタレは醤油っぽかったんですけど、そこのマスターと一緒に「京都の人はどんな味が好きかなぁ」って話し合って、少し甘めにして提供しています。

貴恵:修行していたお店が全部手作りでしたし、あと手作りしたほうがサービスでいっぱい盛れるんですよね。うちのお店はこちらの一人前のサイズなので、一人前がけっこう多めで(笑)

巧真:ついね、別に決めてやってるわけじゃないんだけど、何でも多くやっちゃうんだよね。

貴恵:お腹いっぱいになってほしいっていう気持ちがあるんですよね。

巧真:たまに怒られますよ。年配の方とかに「量が多いわ~」って(笑) 地元のお客さんも多く来てくださっているので。

──量が多くて怒られることってなかなかないですよね(笑)

どこでも私についてくるようになったんですよ。四六時中一緒

──京都には慣れましたか?

巧真:慣れたのかな。どうなんだろうね、慣れたって言えば慣れたかな。

貴恵:一緒にここで仕事をするようになってから、どこでも私についてくるようになったんですよ。四六時中一緒なので、それはそれでストレスがけっこうたまって(笑)

巧真:そうやねぇ、こっちきてから特にねぇ。知らない土地だし、友達もあんまりいないから。彼女は一人で行動したい派だから…(笑)

──環境がガラッと変わりましたもんね。

貴恵:そうですね。今までは巡業に行くと月の半分いなかったりしたので、その間に私は羽根を伸ばして実家に帰ったり、遊びに行ったりしてたんですけど、今はそういうメリハリがなくて(笑)

巧真:東京では彼女を置いて飲みに出かけることもしてたんですけど、こっちの街に慣れてないので飲みに行く気がなくなるというか、お店のことが気になっちゃって一人で出かけることが減ったのはありますね。

──お付き合いされている頃はいつも長電話をされていて、海外遠征中もイスラエルから電話をして一晩で15万円もするほどだったとうかがいましたが、ご結婚後も仲がいいんですね。

貴恵:結婚してからぴたっと長電話はなくなったよな(笑)

巧真:長電話はないですね。生存確認くらい。

──電話のエピソードを知った時は「めちゃくちゃ仲良しやな」と思いました。

貴恵:えーっ、そうですか!?(笑)

巧真:どうやろ。

貴恵:どうやろ(笑)

ファンの方もお店に来られて「ほんまにそのまんまなんや~!」ってびっくりされる

──二人で働くようになって、意外な一面を見ることはありましたか?

貴恵:意外っていうのはないんですけど、めちゃくちゃストイックだなと感じていますね。プロレスの時もそれくらい真面目にやってたんだなって。

──ストイック?

貴恵:四六時中仕事のことばっかりで、休みの日も趣味のように何か料理を仕込んでるんですよ。ずーっと頭がソレで、休みの日はちょっと仕事から離れたいなんてことが全然ないし、逆にもう「仕事がめちゃくちゃ好きなんやな」と思ってしまっています(笑)

巧真:やっぱり追い込んじゃうのかな。休みの日に店の話をすると、三倍で怒られます。

貴恵:そうなんですよ。休みの日は休みたいので、「もうそんな話しんといて~!!」って感じです。いつも。

──(笑) でも、もう心配する必要がなくなりましたね。

貴恵:今は心配はなくなりましたねぇ。ただその代わりに愚痴が出てきて(笑)

巧真:彼女は何でもできるんで、よく気が付くし、一度にいろんなことができるから頼りがいがあるなとは思うんですけど、その分 口が半端なくて(笑)

貴恵:どれだけ注意や愚痴を言っても「うるさーい!」とか言わないんですよ。反応がないので、どんどんどんどん言ってしまうんです(笑)

巧真:反応すると三倍になって返ってくるしね。間違った反応ばっかりするから、絶対反応したらあかんなぁ。いいことないもんねぇ。

貴恵:こんな感じで全然しゃべらないというか、すごい無口なんですよ。私がずっと京都に住んでいたので、友達も関西のめっちゃしゃべる人しかいなくて、初対面の時はこんなに無口な男の人に会ったのが初めてで。なんかもう、しゃべらないとカッコよく見えるんですよね(笑) ぼそっとしゃべる言葉が関東弁だったりすると、「すごい、紳士的―!」と思って(笑) それがいいと思って結婚したんですけど、何しゃべっても何も返ってこないし…それでいっつも一方的に言ってしまうんです(笑)

──プロレスをされている時も言葉数が少なくて、スマートなプレイスタイルですもんね。

貴恵:そのまんまですわ(笑) ファンの方もお店に来られて「ほんまにそのまんまなんや~!」ってびっくりされるくらい。付き合っている時は電話で私の話をずっと聞いてくれてる感じで良かったんですけど、結婚してくると「聞いてんの~?」ってなってきました(笑) 「私の話聞いてんの~? 分かってんの~?」って。

巧真:それはお前、今お母さんにも言ってる(笑)

貴恵:(笑)

──巧真さんがこれからのプロレス界に期待していることはありますか?

巧真:期待してるって言っても、僕らがやっていた頃よりも数段レベルが上がっているので、そのまま続けて行ってもらえたらいいと思います。あぁ、でも普通の民放テレビで試合を観たいなっていうのはありますね。今は配信でも観られますけど、地上波で流れればいっぱい知ってもらえるのに。「あ、アントニオ猪木だ」「ジャイアント馬場だ」って誰でも知ってるような人が今のプロレス界から出るようになるといいなって思います。

──最後に、お二人のこれからの野望を教えてください。

巧真:僕はもう体力の続く限りお店をやりたいなって思うくらいですね。あとはこのお店をもっと多くの人に知っていただけるようになりたいです。

貴恵:私も多くの人にここを知ってもらいたいですね。

■お店情報

焼肉巧真

京都府京都市西京区山田庄田町3-63
(阪急嵐山線「上桂」駅 徒歩8分/阪急京都本線「桂」駅 徒歩17分)
TEL:075-382-5529
営業時間 17:00~23:00
定休日 水曜日、第1・第3木曜日

※新型コロナウイルスの感染拡大により、記載と異なる場合がございます。ご来店時は事前に店舗へご確認ください。

Q.「シュッとしてるもの」って何だと思いますか?

貴恵:関西の人じゃないので、事前に質問をいただいてからずっと「シュッとしてる…シュッとしてる…」と呟いていました(笑)

巧真:物で言うととんがったイメージがあるので、東京タワーを見るとシュッとしてると思います。

貴恵:私はシュッとしてると言ったら絶対人をイメージするので、歌舞伎役者さんとか、佇まいや背筋がすらっと伸びてるような凛とした人ですね。あと体幹が強い人みたいな(笑)

巧真:僕が初めて見た時のアントニオ猪木さんはシュッとしていましたね。本当にカッコよかった。

──巧真さんのレスリングスタイルもめちゃくちゃシュッとしていましたよね。

貴恵:それはめちゃくちゃいい褒め言葉!(笑)

巧真:家では「シュッとせえや」って言われますよ(笑)

Q.自分の名前で缶詰を出すとしたら、中に何を詰めますか?

貴恵:何やろう…。

──ファンタジーなものを入れる人もいますよ。

巧真:ファンタジー? 愛情とか?

貴恵:ええ~~~!?(笑) そんなこと言うの?(笑)

巧真:真心とか?

貴恵:ええー??(笑) 「食べ物しか思い浮かばへん」って昨日言ってたよ。

巧真:最近グミが好きなんで、いろんな種類のグミを入れてみたいですね。あんまり硬すぎるのは嫌だから、程よい感じのを。

──ファンの方からしたらグミと巧真さんはイメージが違うのでは…(笑)

貴恵:「好きな食べ物は何ですか?」って聞かれたら「苺」とか言うんですよ(笑)

巧真:苺も好きだけどねぇ。

貴恵:私はおもちゃの缶詰みたいなのを想像しました。プロレスラーのフィギュアが入っていたり、かわいいぬいぐるみや怖いおもちゃが入っていたりとか。本当は草原の香りが入ってたら理想ですけど。開けたらマイナスイオンが出てくる缶詰だったら癒し系やなって(笑)

佐野巧真

北海道出身。元プロレスラーで、焼肉店店主。デビューから5年後に第10代IWGPジュニアヘビー級王座を獲得し、覆面レスラーの獣神サンダー・ライガーのライバルとしてジュニア戦線の中心レスラーとなる。好きな漫画は『タイガーマスク』『巨人の星』。

佐野貴恵

京都府出身。佐野巧真の妻で、2018年から夫と共に「焼肉巧真」をオープンし、スタッフとして働いている。好きな漫画は『ガラスの仮面』(白泉社刊)。

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