• お知らせ 2019.12.1

シュッとした噺【第十七回】雑誌『SAVVY』編集 竹村匡己さん 金子綾さん

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関西にいる「シュッとした」人たちから「シュッとした」お話を聞きたくて始めた、MAGKANインタビューコーナー!

第十七回は、

大阪にある出版社 京阪神エルマガジン社で雑誌『SAVVY』の編集長 竹村匡己さんと編集部員 金子綾さんにお話をうかがいました!いま、京阪神で流行っているスイーツは何か?注目しておくべきエリアはどこなのか?京阪神でのスイーツの楽しみ方を語っていただいたインタビューです。

雑誌『SAVVY』とは?
京阪神の「かわいいもの」を紹介する地域情報誌。食べ物や雑貨等、取り上げられるものは千差万別。全国の書店で購入可能。HPInstagram


「プリンといえば絶対固いプリンでしょ」という流れがありますね

──『SAVVY』といえば、神戸、京都などのエリアに絞った特集やおいしいスイーツのお店の特集を毎年組まれていますよね。関西人の誰よりもおいしいお店をご存じだと思うんですが…

竹村(以下、T):圧倒的に数は見てきていると思います。

金子(以下、K):そうですね。

──ずばり、これから関西で流行るスイーツって何だと思いますか?

T:チーズケーキとプリンですね。

K:言い切っていいんですかね。

T:言い切っていいんじゃないですか。

──チーズケーキもプリンも、形状や固さでいろいろ種類がありますよね。

K:チーズケーキは柔らかいもの、プリンは固いものですね。いま話題の、バスクチーズケーキが柔らかいから…。

T:まだ特定のこのお店が流行る、というところまではわかりませんけどね。僕たちはどちらかというと流行っているところを追いかけているので。『SAVVY』がブームを作っているわけではないんです。

K:ホテルのパティシエの方を取材していて、「いまプリンが流行っているんで新商品を作りました」っておっしゃった時は「あっプリン流行っているんですね」となるくらいですよね(笑) 確かに、京阪神で昔風の喫茶店を始めたいと言う若い女性は増えてきていて。

T:4・5年くらい前からの話ですね。

K:そういったお店では「プリンといえば絶対固いプリンでしょ」という流れがありますね。脚つきのカップに盛り付けて、カラメルはちょっと苦めで…って。

T:ずっと取材していると、「プリンのお店が多いな」みたいなことをじわっと感じるようになるんですよ。あと、新しくオープンしたお店を紹介しているページがあるんですけど、そこを作る時にも気づくんですよね。新店のリストがあるので。

K:そのリストには上がっているけど、ページには載せられていないお店があって。

T:ページで紹介しているお店の何十倍もあるんです。そのリストを見ていると、「このエリアにお店が増えてきたな」とかもわかるようになる。

東京で流行ったものが関西でも流行るとは限らない

K:あと、個人的には酵素シロップが流行るかなと思っています。果物を漬け込んでシロップにして、ちょっとしゅわっとさせたような。健康的かつカラフルで爽やかな飲み物。

T:タピオカミルクティーの真逆ですね。

K:あとは、東京っぽいかもしれませんが、クラフトコーラを作る人が増えそうかな、と。

T:「クラフト〇〇」は全体的に来ている気がしますね。クラフトジンとか、クラフトビールとか。ローカルの、小ロットで作れる何か。

――クラフトコーラが「東京っぽい」とは…?

K:東京で作っている人たちがいたなっていうだけなんですけどね。

T:東京で流行ったものが関西でも流行るとは限らない気がしているんですよ。タピオカくらいじゃないでしょうか、関西まで来ているものって。2年くらい前に東京で高級なポテトフライが流行った時は全然来なかったですね。

―関東と関西で違いがあるものなんですね

T:そうですね。まあ最近は関西でもお店に並ぶようになったなと感じていますけど…。

――あっそれ私だけが感じていたことじゃなかったんですね。

K:そう思いますね。

――並ぶくらいなら別の店、という感覚だと思っていたんですけど。

T:ちょっと変わってきているんだと思います。でも、東京のノリで関東の人が関西でお店を始めると失敗することが多い気がします。

――東京のノリ?

T:何でしょうね。何かはっきりとはわからないんですけど。

K:数えるほどしか東京に行ったことがないんですけど、もしかしたら「関西っぽさ」をわからずにお店を始められているのかもしれません。

T:東京はすごく狭い場所に人がたくさんいるので、ある程度のお店でもお客さんは入って成り立つ気がするんです。でも、関西はそのへんシビアなので。ちょっとでもおいしくなかったらすぐ潰れますよ。値段が10円、20円でも高いと思われたら一気に人が離れていくんです。それで、ベースの人口が少ないから、少し人が離れただけで大打撃を受ける。

K:お客様は見ていると。

T:舌が肥えているという言い方をするのか…シビアですよね。あとは単純に、母数の違いが大きい。

K:圧倒的に人が少ないですね。

T:関東のイベントに行くと、千葉、埼玉、群馬とかから来ている人も多いんですけど、大阪でイベントをやるとあまり京都、神戸の人は来ないんですよ。逆も同じで。お店にしても、分散しているんです。チーズケーキのお店に行くにしても、「京都の「Papa Jon’s」に行くなら大阪の「りくろーおじさん」で食べてますわ」みたいな。東京なら人が集まるんですけどね。

――埼玉県内にあるってわかっていても、東京のお店に行っちゃうような。

K:そこが東京の強いところかもしれませんね。

T:西日本の中でなら、大阪もまだ強いんですよ。母数が大きいんで。

――京都や神戸と比べてもですか?

T:大阪が一番多いです。京都は住んでいる人が少ないんですよ。

K:観光客を入れたら多いと思うんですけどね。

T:京都市の御池通より北は急に人通りが減りますしね。

東横堀川あたりではいま個性的なお店ができたり

――そんな関西の中でも、おもしろいお店のある地域ってどこですか?

K:東横堀川周辺ですね。北浜から日本橋までを縦に流れる川があるんですけど。

T:あのあたりは個人店が多いんです。個人店って、やっぱり家賃が安いところにしか入れないんですよね。梅田だと今は一坪6万円とかするので、10坪だと60万円じゃないですか。ちょっとした広さでも家賃で60万円もかかってしまうんですよ。月商ウン百万円を超えないとやっていけないくらい。

――月商ウン百万…一体何人のお客さんを呼べば…。

K:かなりの苦労ですよね。

T:東横堀川近辺だと家賃がそこまで高くないので、個人でも始めやすいかと。

K:それなら自分のやりたいことがやれるって、東横堀川あたりではいま個性的なお店ができたりしていて。

T:夫婦でやれば人件費もかかりませんし。

K:立ち飲みにしたら省スペースでできるので、意外と立ち飲みのお店が増えている傾向もありますね。

T:立ち飲みなのに、すごいところで修業してきた方の料理が出るお店とかね。本当は割烹をしたいけどそんな家賃では借りられないからって、致し方なくそうなっているところもありますけど。こういう理由で、ちょっと郊外にあるほうがおもしろいお店が多いんですよね。

――今度歩いてみなくては!

T:あとは個人的な趣味でいうと、大正(大阪市大正区)もおもしろいです。

――飲み屋さんが多いんでしょうか?

T:多くはないんです。勝手にやってる感じで、世間の流行りすたりを受けずに、みんな楽しそうにやっています。もともと東横堀側もそんな感じだったんですけど、最近は人気が出てきて。大正は相変わらず独自ですね。

K:京橋(大阪市都島区)も似ていますよね。天満(大阪市北区)は有名になって大きなチェーン店も入ってきているんですけど、京橋はまだローカルなお店が多いですね。商店街がいくつもある上に、地元の人たちがその土地に住んで、そこで働いているんですよ。

T:昭和ですね。

K:仕事したらみんな歩いて家に帰るような地域だからか、ほっこりしたお店や、ごはん屋さんなのか飲み屋さんなのかよくわからないお店がいっぱいあって。環状線で言うと京橋が好きですね。

T:鶴橋(大阪市東成区)も良いですね。鶴橋から玉造にかけて。小さなお店がいっぱいあるんですよ。焼肉ではなくて。地元の人しかいないから楽しいです。

「マモン・エ・フィーユ」さんのコーヒーゼリーがすごくおいしい

――特にスイーツならここ!!という個人的にオススメのお店はありますか?

K:「マモン・エ・フィーユ」(兵庫県御影にあるパティスリー)さんのコーヒーゼリーがすごくおいしいので、ぜひ召し上がってください。

――コーヒーゼリーですか。

K:コーヒーゼリーが好きでして。コーヒーゼリーの特集をしたいなと思っていたくらい(笑) もともと京都の左京区で、いろんなお店の一角を借りてお菓子を卸しているお店だったんです。御影に移転する前に京都で買って、「これは最高においしい!」と。しっかりした触感のゼリーに、ラム酒がちょっときいているシナモンクリームがついていて、めちゃくちゃおいしいんです。お店自体は焼き菓子がクローズアップされているんですけど、コーヒーゼリーもオススメです。

――純喫茶のプリンが流行っているなら、コーヒーゼリーが流行ってもおかしくないですよね。

K:そうなんですよね!

T:巡りますからね。ファッションと一緒で。

K:ただ、コーヒーゼリーを食べる時に何を飲んだらいいのか問題があるんですよ。コーヒーかな。カフェイン摂りすぎかな。

T:でも紅茶は違う気がしますね。

――ミルク…?

K:なるほどね…いや、すみません(笑)

T:あと「森のおはぎ」(大阪のおはぎ専門店)さんと「Kew」(2019年3月にオープンした京都のカフェ)さんも良いですね。

――「森のおはぎ」さんは豊中の駅から離れたところにあるお店ですね。

K:おいしいですよね。

T:ちょっと郊外にあるのがいいんですよね。豊中の少しはずれで、地味にやっていらっしゃるというか。

K:そしてお店がめっちゃかわいい。

――「Kew」さんはどんなお店ですか?

T:チーズケーキのお店なんです。ここもまた京都の右京区の上のほう、嵐電 龍安寺駅の近くにあるんですよ。それこそ変な住宅街の中にあって。

K:イギリスの有名なレストラン「セント・ジョン」でお菓子部門にずっと携わっていた方のカフェなんです。カウンター7席のお店で、めちゃくちゃ行列ができます。

――またはずれたところに…。

K:チーズケーキがすごいんですよ。とろっとろで。「こんなチーズケーキもあるんや」ってなります。

お店をやろうとしている方には酷なことを言いますけど、センスですべてが決まるなと思います。

――お店そのものではなく、作り手であるお店の方でおもしろい方はいらっしゃいましたか

T:スイーツの方はみなさん、ちゃんとしてらっしゃいますね。

K:料理店の方に話をうかがっていても、「パティシエは生半可な気持ちではできない」ってよく言われますね。「何でもやりたいんです」って言って、イタリアンをやりつつパンも焼いちゃうような方でも、パティスリーは精密さが全然違う、と。

――片手間にできるようなことではないんですね。

K:元パティシエでスパイスカレーのお店をされている方がいらっしゃるんですけど、その方はカレーと両立してお菓子作りなんてできない、っておっしゃっていました。スパイスが楽しくてカレーに踏み出したけれど、同時にお菓子はできないと。いろんな方にお話聞いていても、みなさんきちんとされていますよね。

T:「カグノミ堂」(大阪のひとくちケーキ専門店)の方も似た話をされていました。モンブランやオペラのようなケーキを、全部小さいサイズで作る方なんですよ。ピンポン玉くらいの大きさのミニケーキなんですけど、レギュラーサイズのレシピから単純に3分の1にしたのでは作れないそうなんです。

――お菓子は精密だから…。

T:バランスがかなり悪くなると。味や食べきった時の満足感も含めて狂ってしまう。「はじめはレシピそのままでいけると思っていたのが、全部ゼロからレシピを作ることになってめっちゃ大変です」っておっしゃっていました。あの通常サイズっていうのは、練られた上での大きさなんだと気づいたそうです。

K:料理とスイーツで全然違うんだなって思いましたね。

T:リカバリーできないですもんね、スイーツは。料理のように最後ケチャップ入れて力技でまとめるなんてできませんから(笑)

――研究肌の方が多いんですね。

K:緻密な方が多い気がします。そう考えると、珈琲焙煎所でチーズケーキをこだわって作る人が多いのは納得できるかもしれません。珈琲焙煎士のような、珈琲を淹れる人は職人気質の方が多くて。そのせいか、ケーキのほうにスッと手を出せる人が多いんですよ。「自分の珈琲に合うケーキはこれや!」みたいなものを追求して作ってしまう方が。

T:お店をやろうとしている方には酷なことを言いますけど、センスですべてが決まるなと思います。料理もスイーツも、できる人は最初からできるんですよね。多くのお店で話を聞いてきましたけど、やっぱりできる人ははじめから飛び抜けています。

K:そういう人ほど、「別に適当ですよ」っておっしゃるんですよ。

T:適当じゃないと思うんですけどね。でも、本人は「何かおもしろいっすよね」みたいな感じでやっていて。努力では到達できない部分もあるのかなと思います。

――先ほど「”スイーツの方は”ちゃんとしている」とのことでしたが、料理の方々は…?

T・K:破天荒…ですね(笑)

T:カレーのお店の人は全員破天荒ですね。

――以前、「たけうちうどん」(第五回シュッとした噺)さんでお話をうかがったら、「うどん嫌いなんです」って言われて驚いたんですけど…。

T:あー。

T/K:あるあるですね。

――あるある!?(笑)

T:こっちの雑誌『Meets Regional』(京阪神エルマガジン社刊)の表紙にある、大阪のカレー屋「ナップオフ」の方は辛い物が食べられないのにカレー作っているんですよ。謎です。

表紙:「ナップオフ」

――えっ味見は…。

T:そんなにしてないって言っていました。

――!?

K:すごい…(笑)

T:いや、ルー自体は辛くしていないのでそれは食べられるらしくって。別添えにしている、オリジナルのハラペーニョのペーストは食べたことがないそうです(笑)

――そんな…破天荒な方が多いんですね…?

T:緻密な方もいらっしゃいますけどね。でも何にせよ、お店をやる人って大体ギャンブラーだと思います。

K:それはそうですね。

T:パティスリーも含めて、飲食をやろうとする人はチャレンジャーな人が多いです。


「おもしろい!」って盛り上がった特集がまるで売れない 「ホンマにおもしろいんやろか」と思いながら作ったものがめっちゃ売れる

――それだけいろんなお店を見てこられたと思うんですが、どうやってそういった良いお店を見つけているんですか?

K:開店祝いのお花が置いてあるお店はとにかく覗いてみる。

T:それをやたらと写真に撮りためる。

K:あと、良いお店を見つけたら、そこに置いてある他のお店のショップカードをチェックします。良いお店には良いお店のショップカードが置いてあるんですよ。

T:ローカル誌ならではのやり方だと思います。

K:若手の子はInstagramで新しいお店を見つけて、見に行っていますね。まだInstagarmを私たちが使いこなせていないので、それも組み合わせて(笑)

T:きっかけは何であれ、必ず行きます。

K:行って、見て、それからですね。

T:世の中に人気が出そうだとか、意味があれば取り上げます。自分の好みは殺していますね。にじみ出てしまうものはありますけど、好みで誌面を作っているわけではないです。好みで作ると失敗するんですよ。

K:それは確かに。「個性が出ていていいよね」というのとは表裏一体ですね。

T:そうですね。商業誌なので。

――実際に好みで作って失敗した経験があるんでしょうか?

T:あります あります。編集部で「おもしろい!」って盛り上がった特集がまるで売れないとか、「ホンマにおもしろいんやろか」と思いながら作ったものがめっちゃ売れるとか。

街があるので。街が、作ってくれるんです。

――紹介したいけど、まだ雑誌に載せられていないお店はありますか?

T:そういうお店はないような気がします。切り口次第で何らかの形では紹介できるので。ただ、出したくないお店はありますけどね。あまりにも世間に受けないだろう、という意味で。

K:そういう「一見さんお断り」のお店はあまりにも読者から離れすぎていますから。

T:それを企画として、「入れないお店を見せます」っていう、行かないことを前提とした企画としてなら紹介できますけどね。ただ、それを雑誌としてまとめて意味があるかどうかのバランスです。

K:いかにも気軽に行けるように紹介するのはあまりにも罪ですよね…。

T:プリンのお店にしても、2時間並ぶお店ならそれを書いてあげないと。

――雑誌としての責任を持ってやっていらっしゃるんですね。では、これから『SAVVY』で挑戦していきたいことはありますか?

T:個人的に挑戦したいことはあんまりないです。関西のかわいいことを上手く取り上げて紹介し続けるだけです。街があるので。街が、作ってくれるんです。それを我々が上手く見つけられるかどうか、ですね。

K:読者がすぐアクセスできる場所に「こんなものがあるよ」って紹介して、実際に行ってもらえるようにちょっと後押しする感じです。

T:たばこ屋のおばちゃんみたいなものですよね。いや、たばこ屋のおばちゃん自体がもう存在しませんけど…。お客さんに道を聞かれたら「あそこにええ店あるでー」みたいな。僕が連れて行くわけにはいかないので、場所だけを教える。

K:紹介したからには責任を持って、「おばちゃんは食べたことあるけど、おいしかったと思うで」って言えるように。

T:日々楽しめるようなものが雑誌にいろいろ入っていたらいいなって思っていますね。

――少し前まで『Meets Regional』の編集長だった竹村さんが『SAVVY』の編集長になったことで、ちょっとした変化は出てくるのでしょうか。

T:僕、印刷のインクが好きで。『Meets Regional』の時に使っていた「T&K TOKA」という会社のインクを『SAVVY』でも使えたらと思っています。

「T&K TOKA」のインクが使われている表紙

――この黄色とか、オレンジのことですね。ビッカビカの蛍光色…!他の色と全然違います。

T:このインクの色を出したいがために、印刷所の方としょっちゅうモメていたんですよ。「天満特集」の時は、綺麗なオレンジを出すために6版重ねてもらっているんですけど、「この天満の字の白抜きがズレてもいいから!」と無理を言って。「ズレたら事故です!」って言われながら印刷してもらいました(笑)

――版を増やせば色が濃くなる分、重なった部分のズレが出やすいですもんね…。でも、おかげで「天満」の字がめちゃくちゃ際立っていますね。普通のオレンジじゃ白文字がこんなに抜けて見えないと思います。

T:あとは「大日精化工業」という会社のインク「LR輝シリーズ」。金属のように、ピンクゴールドが綺麗に出るんですよ。本当におもしろくて。印刷所の方にはインクの缶をくれって言っているんですけどね。

――そうすればこうやって竹村さんがインクの営業をできるから、と…(笑)

T:それと、漫画が好きなこともあって、「鵺」みたいなものを散りばめるのも好きで。

――「鵺」…って、顔が猿だったり、手足は虎だったり、いろんな動物の合成獣のような日本の妖怪、ですよね?

T:そうです。そういった、よくわからない、調べないと知らないようなものをちょっと入れられたらな、と。漫画で知らない言葉を学ぶことが多かったので、雑誌でも同じことをしたくて。この「カレー特集」だと背表紙にこんな模様を仕込んでいるんですけど…。

よく見てみると…。

――………あっ、これ「トンツー」ですか!?モールス信号の!?

T:ページのどこかにその答えが。

――もしかしてこの目次の…?

T:気づく人だけ気づけばいい、と。全体的には普通に読んでも楽しく読めるように作ることが大前提ですけどね。『SAVVY』も、今までと変えるつもりはないんですけど、そんな感じで『SAVVY』でも雑誌でしかできない、遊びを入れていこうと思っています。そういうことをできるのが、雑誌の良さですよね。



Q.「シュッとしてる」ものって何だと思いますか?

K:良くも悪くも余計な部分がなくて、「きれいやな」という印象を伝えたいときに使います。「ちょっと澄ましてるね」、みたいな感じにも使うかもしれません。

T:「シュッとしてる」ってよく使いますけど、あんまりポジティブな意味で使わないんですよね。どっちかっていうとネガティブな意味な使い方をします。京都出身なので、京都っぽい思想かもしれないんですけど、「東京からよう来はって」みたいな。

──ああ…「カッコつけてる」みたいな…。

T:「はるばるようおこしやす」「シュッとしてはる人来たで」みたいな。嫌味半分、妬み半分なんですよね。「そんなシュッとできへんわ」と。カッコいい、洗練された、という意味だとは思うんですけど、僕が使うときは誉め言葉ではないですね。

──今までにない回答でした。

T:一時期、東京のデザイナーさんたちの間で「シュッとしてる」が流行っている時があって。その人たちには警告を出しました。「僕はシュッとしてへんと思うけど」と。

Q.自分の名前で缶詰を出すとしたら、中に何を詰めますか?

T:鵺ですね。何でか思いついたのはこれでした。よくわからないもの、っていう概念。パンドラの箱的なものだと思ってもらえたら。

K:キャベツの千切り! プリンとチーズケーキを雑誌で特集したばかりなので、反動で、夜中に青っぽい野菜ばかり食べていますね。




竹村匡己

京都出身。『Meets Regional』編集長を経て、2019年秋から『SAVVY』編集長に。好きな漫画家は手塚治虫、ゆうきまさみ、ひうらさとる。手塚治虫作品は全作品持っている。手塚作品のちょっとセクシーで、エロティックではない丸い線が好き。パースが狂っている漫画は酔ってしまうので読めない。

金子綾

京都出身。『Meets Regional』編集部を経て、現在は『SAVVY』編集部に配属。好きな漫画は、子どもの頃からなら手塚治虫作品。鉄腕アトム描けるほど。大人になってからは高橋葉介。昔の作品を古書店に探しに行っていたそう。

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