• お知らせ 2019.8.13

『京洛の森のアリス』特別対談!! 望月 麻衣(小説)×庭 春樹(漫画)

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『京洛の森のアリス』特別対談!! 望月 麻衣(小説)×庭 春樹(漫画)

京都 丸太町にある料理処でお二人に『京洛の森のアリス』について語っていただきました。コミックス第一巻を読まれた方も楽しめる、ネタバレなしの対談です!


京洛の森のアリス
京洛の森のアリスⅡ 自分探しの羅針盤
京洛の森のアリスⅢ 鏡の中に見えるもの
コミックス 京洛の森のアリス

©Niwa Haruki ©Mai Mochiduki

◆小説 全三巻(文藝春秋刊)
『京洛の森のアリス』
『京洛の森のアリスⅡ 自分探しの羅針盤』
『京洛の森のアリスⅢ 鏡の中に見えるもの』全三巻(文藝春秋刊)

望月 麻衣

◆コミックス 全一巻(マッグガーデン刊)
『京洛の森のアリス』
MAGKANにて好評連載中 試し読み

漫画:庭 春樹 原作:望月 麻衣

幼いころに両親を亡くし、引き取られた叔母の家でも身の置きどころのない少女ありすは、遠く離れた京都で舞妓修業を決意する。彼女のもとにやってきた老紳士に連れられて訪れた京都は不思議な世界だった―。ともに人間の言葉を話す、カエルのハチスとウサギのナツメと、ありすは京洛の森の謎に触れていくファンタジー。

イメージにぴったりな絵を描いてきてくださったんです。

──お二人の出会いは何がきっかけだったんですか?

望月:桑野和明先生のライトノベル『京都の甘味処は神様専用です』(双葉社刊)で庭さんがカバーイラストを描かれていて、それを見てからずっと絵がかわいいと思っていたんです。

庭:ありがとうございます。

望月:それで『京洛の森のアリス』を出す時に、担当編集の方に庭さんのイラストでカバーをお願いしてみたらOKが出て。すごく嬉しかったです!今までイラストレーターの方は自分で選べないと思っていたので。

庭:ご依頼をいただいてから、小説を読んでみたらおもしろくって。読みながらすぐに構図が浮かびました。普段はキャラクターや構図の指定があるんですが、この時はなくて。その日のうちに読み切って、出したラフにすぐOKが出てびっくりしました(笑)

望月:指定があったほうが楽なんじゃないですか?

庭:確かに楽なんですけど、本当にすぐ映像が浮かんだんです。和洋折衷で、鳥居があったり、本が散らばっていたり…。ありすはせっかくなので『不思議の国のアリス』のワンピースを着せて。

望月:和洋折衷ってどんな絵になるんだろう、と呑気に待っていたら、イメージにぴったりな絵を描いてきてくださったんです。それでハチスがありすにツッコミを入れることになりましたけど(笑)(コミックス第一巻 第5話)

望月:コミカライズオリジナルのシーンですが、本当にハチスらしいツッコミですよね。

オリジナルとは違う漫画を描くことになって、新たな挑戦になるな、と思っていました。

──コミカライズが決まった時は、どんな気持ちでしたか?

望月:コミックス第一巻の帯にもありましたが、まさに「夢のよう」でした。コミカライズは小説の側からお願いしないとできないものだと思っていたのに、マッグガーデンさんからご提案いただいて。願ってもないことでした。

庭:先に私とマッグガーデンの担当編集の方とコミカライズできたらって話をしていたんですよ。決まってから望月先生にお話ししようと思っていて。そしたらとても驚かせてしまったんですが(笑) カバーイラストと漫画の作家が同じってかなり珍しいですし、オリジナルとは違う漫画を描くことになって、新たな挑戦になるな、と思っていました。

望月:デビュー作の読切『ところにより』でも主人公が三つ編みの女の子で、ご縁だなって言っていましたよね。

庭:そうなんですよね。小説第一巻のご依頼をいただいた時には既に『ところにより』のお話を描いていて、主人公は三つ編みだし、うさぎも出てくるし、『不思議の国のアリス』を題材にしたお芝居をやることになっているし…で、すごいご縁だな、と。

庭先生デビュー作『ところにより』

神視点でお話を書いているので、キャラが苦しんでいても、その先の展開を知っているからにやにやしながら書けちゃうんですけど…。

――小説とコミカライズで「ここが違うな」と感じるところはありますか?

望月:いい意味でお話を端折っていただいていますよね。

庭:毎回、これでいいのかなと不安になっていますが…。

望月:小説と漫画は楽しみ方が違う、全く別物だと思っているので、すばらしいなと思っています。小説では長かったセリフのシーンをひとコマで綺麗に表現されていたりして、漫画は違うな、と。

庭:小説ではサラッと読めるところも、漫画では長くて読めなくなる場合もあるので、そのバランスが難しくて。あと、原作の読者が読みたくないものは描かない。私も読者の一人なので(笑)、自分が読みたくなくなる描き方をしない。原作ファンの方にも喜んでいただけるものにしよう、と思って描いています。

望月:あと、小説では読者がありすだと思って書いていますけど、コミックスはありすを一人のキャラクターとして扱っていますよね。微妙に異なる視点の違いが楽しいです。

庭:漫画は小説では見えなかった部分が絵としてよく見えてくるので、その分ありすをキャラクターとしてしっかり動かしたくって。

望月:庭さんはありすにものすごく感情移入して描いてくださるんですよ。冒頭の叔父夫婦とのやりとりが本当に辛いっておっしゃっていて。

庭:はじめは特にキャラとの距離感が掴めなくて大変でした。

望月:私は神視点でお話を書いているので、キャラが苦しんでいても、その先の展開を知っているからにやにやしながら書けちゃうんですけど…。

庭:つい想像してしまって。ありすがおばあさんになってしまうシーンも、あれだけ一気にいろんなことが起きるなんて耐えられないな、と。気を失ってしまうなと思って。

コミックス第一巻 第4話より

アニメになったものを見たい

庭:あと描いているとそのキャラと同じ表情になるんですよ。

望月:なりますなります!あと緊張感のあるシーンや盛り上がるところは息を止めているみたいで、書き終えると息切れしてるんですよね(笑)

庭:私も息していない時があります(笑) 汗をかく時もあって。

望月:汗!?

庭:好きなシーンを描いていると興奮して汗をかいちゃうんです(笑)

――お二人が小説、コミックスで好きなシーンはどこですか?

庭:小説のラストですね(即答)

――あの…ネタバレになるのでそこ以外で…(笑)

庭:ええっと(笑) やっぱり蓮が一番好きなので、小説の冒頭、第一章で書かれた蓮とありすの幼い頃の思い出ですね。描いていてもすごく楽しくて。担当編集の方にめちゃくちゃ楽しんで描いてるってバレましたもん。望月先生の男性キャラが好きなんです。どの作品でもみんなまっすぐで。

望月:蓮のビジュアルははじめ黒髪ストレートだったんですけど、他の作品とかぶってしまうので、ハーフ顔にしたんですよ。

庭:サラサラヘアがお好きなんですね?

望月:好きです(笑)

庭:(笑) あと、小説は映像にしたら絶対綺麗なシーンになるだろうな、というところが本当にたくさんあって。アニメになったものを見たいくらい。都をどりのお祭りのシーン(小説第一巻 第三章冒頭)や紅葉さんが八坂神社の舞殿で舞うシーン(小説第一巻 第四章冒頭)は絶対に綺麗だろうから、描けるなら描きたかったです。

望月:アニメ化、したいですねえ。

庭:したいですね!

コミックスでは私が想像していた以上のシーンを描いてくださっていて。

――望月先生のお好きなシーンはどこですか?

望月:小説だと、ありすが亮平に出会ってからですね。そこからお話が一気に動き出すので。あとは小説第一巻 第八章のあれです。

――ネタバレになるので伏せますが、コミックス第二巻に収録される部分ですね。

望月:コミックスでは私が想像していた以上のシーンを描いてくださっていて。執筆する時、自分の中で映像で見えたものを文章にしているんですが、その映像を超えてくるんです。特に京洛の森の街並みがすばらしくて。

コミックス第一巻第1話より

望月:コミックス第一巻 第3話の蓮がにこっと笑うコマもすごく好きでしたし、そのあと、紅葉さんが過去の自分を回想した時のあの1シーンは本当にすごいと思いました。振り返っているのがいいですよね。黒髪ストレートもイメージどおり。

庭:紅葉さんは黒髪ストレートじゃないと!

コミックス第一巻 第3話より

望月:あと、最新第7話の大原のお地蔵さんがかわいいようでほんの少し怖いところとか、時間経過をあのひとコマだけで描いているところとか、ありすとハチスのシーンとか…。扉を開けたらハチスがいたところなんて、まさにイメージどおりで!「えっそんなところに居たの?気付かないところだった!」みたいな場所を想像していたんです。その後のハチスとのシーンは小説でも思い切って書いたところだったので、あんな風に描いてくださって本当に嬉しかったです。

大原のお地蔵さん

さりげなく居るハチス

ハチスが良い!という感想をたくさんいただきました

庭:私は蓮が絡む話になった時のありすが本当にかわいいと思っていて、そういったシーンを描くのが楽しかったです。あとは第2話の弟子入りが決まってうきうきしているシーン。

決意を掻き消すようなお腹の虫…

望月:第4話の龍もすごかったですよね!

庭:私は龍が描けなくて、アシスタントさんが得意だったのでお願いしちゃいました。

望月:良い技術を持った方と、良い関係を築いてお仕事されているんですね。

望月:あっでも実はコミカライズで描いてほしかったところがあって…。

庭:えっ何でしょう!

望月:小説第一巻 第六章でバーベキューをする時に亮平が飲んでいたビールが、狐のマークの『伏見麦酒』という銘柄のものだったんですけど、そのラベルが見たかったんです!

庭:あああ~!次のコミックスのあとがきとかに入れたいです…!



――ここで、いくつか小説の設定について庭先生から質問があるんですが…。

庭:小説第一巻 第三章で、紅葉さんが京洛の森の世界では”大人は”仕事をしなければ住み続けられなくなると言っていましたが、子どもは働かなくてもいいんですか?

望月:そうですね。子供は守られる存在なので。でも、一人立ちをする、大人の庇護下に置かれなくなると、仕事をする必要が出てくるんです。

庭:だからありすも、年齢では子どもだけど、仕事をしなければいけないんですね!

望月:まさに一人立ちをしようと決めていましたから。

庭:そっか。ありすは子どもなのにどうして、と気になっていたんです。でももし、京洛の森の世界で、「今は子どもを育てたくない」と感じた人が、自分の心に素直になることで、産んだ子どもを捨ててしまったらどうなるんでしょうか?

望月:縁の世界なので、もし育児放棄をする人がいても、その子を育てる縁を持つ人が必ず現れます。生みの親になる縁と、育ての親になる縁が異なっていただけのことで。まあ、お金の概念がないので子どもだけでも生きていけるんですけどね。

庭:育児も選択できるって怖いなとも思っていたので、少し安心しました…。じゃあ、外の世界から子どものまま飛ばされてきた場合はどうなりますか?

望月:その場合は、京洛の森の世界にも血縁関係にあたる人が存在するので、そこで育てられることになります。

庭:なるほど…!

自分の頭の中や、本当にやりたいことを考えるきっかけになればいいなと思っています。

――地図のことでも庭先生といくつか議論したんですが、鴨川から東側は京洛の森ではないんですよね?

望月:そうですね。平安京の頃、鴨川から東は黄泉の世界とされていたんです。なので、京洛の森の世界でも、鴨川を渡った先には行けないんです。祇園や八坂神社は現実と違って鴨川より西にあるんですけどね。

庭:じゃあ、比叡山や大原より北側はこの世界にあるんでしょうか?

望月:比叡山は京都の鬼門(陰陽道で鬼が出入りする方角、北東のこと)を守っていますし、裏鬼門を守る石清水八幡宮(鬼門と同様、方角は南西)もあるので、あると思います。大原より北側の美山とかもあるんじゃないかなぁ…。

庭:亮平に聞かないといけませんね(笑)

望月:そうですね(笑) 自分でも京洛の森の正確な地図は書けないので…(笑)

コミックス第一巻 第1話より

庭:第7話を描いていて、亮平の地図屋という仕事は本当に重要で、かなりの徳を積んでいると感じたんですが、どうしてそれでも天都に行けないんでしょうか?

望月:うーん、亮平のその後に関してはいろいろ考えているところもあるんですが、そもそも亮平の奥さんがよっぽどのすごい人なんですよ。天都に迎えられるって、そう簡単に起こることじゃなくて。

庭:よっぽどのすごい人…。

望月:考え方が全然違うんです。彼女と亮平が同じ悪い環境に置かれても、亮平は環境に文句を言ってさらに環境を悪化させてしまうかもしれないけれど、彼女は良いところばかりを見つけて、どんどん良い場所へと変えていくような。周りにもいませんか?良いところを見ようとせず、文句や悪いところばかり探して言い連ねていくような人が。

庭:嫌な環境で良いところを見つけ続けるのって難しそうですね…。

望月:それくらい、亮平の奥さんはレアケースなんですよ。

庭:あ、そういえば、どうしてありすは祇園に行くのに五条大橋から京洛の森に入ってきたんですか?

望月:五条大橋はすべての入り口のイメージがあるんですよね。広くて交通量の多い橋ですし。なので、五条大橋から入ってもらいました。

コミックス第一巻 第1話より

――ずばり、『京洛の森のアリス』の魅力は何だと思いますか?

望月:自分探しがテーマなところ、ですね。自分の頭の中や、本当にやりたいことを考えるきっかけになればいいなと思っています。

庭:私も同じで、自分なら京洛の森の世界でどうするんだろう、と考えられるところですね。自分が生きていけるかはちょっと不安ですけど(笑)

望月:庭さんならありすみたいに迷いながらも、京洛の森で生きていけると思いますよ!

庭:そうですかね~自信が無いなあ。

望月:クリエイターの方には身近な世界かな、と思うんです。自分が本当にやりたいことをやればいい。何かで、「皆が自分のやりたいことを仕事にしても、世界はちゃんと回る」という話を読んだことがあって。そのとおりだと思うんです。この考え方をベースにして、『京洛の森のアリス』を思いついたんですよ。

庭:そうだったんですね!

望月:ご自身が京洛の森の世界に行ったら、何歳の見た目になっていると思いますか?

――京洛の森の世界では、自分の求める見た目年齢になれますよね。(小説第一巻 第六章より)

庭:今の年齢ですね。

望月:私もです!

庭:今が一番楽しいんです。今までやってきたことが全部形になってきたっていう感覚があって。

望月:私も今が一番楽しいです。いま現在がこれからの人生では一番若い瞬間なんだから、何でもやりたいことをすればいいと思うんですよ。惰性でお菓子を食べたり、コーヒーを淹れたりするんじゃなくて、その時本当に口にしたいものを手に取るような、そんなレベルのところからでいいので。

――お互いに、もっと見たいと思っているお話や絵はありますか?

庭:蓮とありすのキュンとするようなお話がもっとほしいです…恋愛脳なので…(笑)

望月:小説は三巻で綺麗に終えられたので、どうせなら新たに京洛の森の世界に入ってきたキャラクターの視点で、ありす達を見るようなお話を読みたいなと思うんですけど…。もし、コミカライズを小説三巻まで出すことができたら、それ以降は私が原案になって、庭さんに自由に描いてほしいです!

庭:え、ええーっ!?(笑)



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望月 麻衣ブログTwitter

北海道出身。京都在住。2013年、エブリスタ主催の電子書籍大賞を受賞しデビュー。2016年、『京都寺町三条のホームズ』で第4回京都本対象を受賞。『京洛の森のアリス』のほか、『わが家は祇園の拝み屋さん』『太秦荘ダイアリー』などがある。

庭 春樹Twitter

『京洛の森のアリス』『京洛の森のアリスⅡ 自分探しの羅針盤』『京洛の森のアリスⅢ 鏡の中に見えるもの』の表紙イラストを担当した、関西在住のイラストレーターであり、漫画家。現在MAGKANにて特別読切『ところにより』、連載『京洛の森のアリス』(原作 望月 麻衣「京洛の森のアリス」文藝春秋刊)を掲載中。

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